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狼は眠らない  作者: 支援BIS
第54話 獣人帝国
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「そして後詰めとしてわがマシャジャイン騎士団二百人が出撃しようとしたまさにそのとき、四の月の九日に、白首竜に乗った竜騎士がとんでもない知らせをもたらした。第一陣が惨敗したという知らせをね。楽観的な空気は吹き飛び、わが騎士団出撃は取りやめになった。王都の守りが不安だと言い立てる貴族が何人もいたのだ」

 以後、毎日白首竜がアスポラから飛んできて、王都からも白首竜がアスポラに飛んだ。

 敗退した第一陣がアスポラに引き上げる状況が伝えられた。また、グィド帝国軍の動静も伝えられた。

「アスポラは、ダイナ街道のなかで唯一まともな防御力のある町なので、今回の侵略軍撃退戦役では、もともとここを拠点とすることになっていた。食料や補給物資を運び込み、施療師や薬師を送り込んであるのだ。とはいえ、ポーションの数にも施療師の魔力にも限りがあり、戦線に復帰できるほどに回復した負傷者は、多くない」

 グィド帝国軍は、戦闘のあと、同じ場所に三日とどまり、四日目に侵攻を再開した。

(じっくり傷を治し疲れを癒やし)

(英気を養ったんだろうな)

(みしらぬ敵地だというのに憎らしいほど堂々とした進撃ぶりだ)

(ボウド将軍とやらは恐ろしく喧嘩慣れしてるな)

 それに比べ、ザカ王国側のやり方には、軍略など知らないレカンでも、ちょっと首をかしげざるを得ない。

 トランシェ騎士団は森のなかを進んで敵の別動隊を足止めするつもりだったようだが、騎士団などというものは、森のなかでは実力を発揮しにくいだろうし、遊撃が得意だとも思えない。

 エジスの冒険者はトランシェ騎士団の指揮下に置き、ワードの冒険者はスマーク騎士団の指揮下に置いたようだ。だが、騎士団にうまく冒険者を活用できるとは思えない。それよりエジスとワードとツボルトの冒険者に、敵の別動隊の足止めを任せておけば、相手にも相当の損害を与えることができたろう。

 どうもちぐはぐに思われる。

「全体の作戦は、誰が立ててるんだ?」

「王陛下と王太子殿下、宰相、宰相府の高官二人、兵力を出している侯爵八人もしくはその代理、以上の十三人が会議の円卓に座る。それから、王国騎士団長と王国魔法騎士団長、各騎士団の団長もしくは居残りの連絡役、および宰相府の役人十人ばかりが後ろに立って、意見や情報を求められれば発言する。最初はそうだったのだが、作戦会議への参加を求める貴族が次々に現れ、今では円卓に座る者だけで四十人以上だ」

 こんな会議に出ても、時間と体力を浪費するだけで何の益もないと判断したマンフリーは、領地に帰って追加の騎士百五十人を差し向けるので、今王都にいるマシャジャイン騎士団は、戦地に送ってもらいたいと言い残して、代理を置いてマシャジャインに帰った。代理というのは、マンフリーの長男であるオルフリーと、老練な外交担当の家臣であるゴロウン子爵キニス・ウィーバーである。

 トランシェ侯爵も、追加の騎士を派遣すると言い残して王都を去った。

 今やマンフリーは、王都やトランシェと〈ナータの鏡〉で連絡を取り合いながら、戦況をみきわめている。

「さて、冒険者レカン。君に依頼がある」

 レカンが地図から目を離し、顔を上げると、マンフリーは少し低い声で言った。

「侵略軍の総指揮官であるボウド将軍を殺してほしい。報酬は白金貨十枚だ。それとも、ボウド将軍がもとの世界の知り合いだったら、戦うのはいやかね」

 マンフリーは強い視線をレカンに送った。

 レカンは、にやりと笑った。

「いいや。やつとは以前にも殺し合ったことがある。ここ数年は仲間として迷宮を攻略したがな。心強い味方だと思う一方で、戦って決着をつけたいとも思っていた」

「……失礼だが、君がもといた世界というのは、かなり殺伐としたところなのかね?」

「いつもどこかで領主同士が戦い、領主と反対勢力が戦う世界だ。昨日味方だった冒険者が今日は敵に雇われてたなんてことは、珍しくもないさ」

「なるほど。可能であれば、ボウド将軍以外の将も殺してくれ。報酬は一人につき白金貨一枚だ」

「引き受けよう」

 マンフリーは、ふうっと大きく息をついて、ソファに深くもたれた。

「ではさっそく出発してもらいたい。だがその前に、もう少し現状を説明しておかねばならんな。最初の会戦で敗退したスマーク騎士団やトランシェ騎士団のほか、第二陣のギド騎士団やツボルトの冒険者もアスポラに入った。アスポラに集結した戦力は」

 ここでマンフリーは、家宰のフジスルをみた。フジスルは一枚の紙を取り出してマンフリーに渡した。マンフリーはそれをレカンに渡した。

「持っていってくれて構わん」

 そこには、アスポラに集結した戦力の内容がしたためられていた。


スマーク騎士団三百八十

 騎士百五十

 弓兵四十

 魔法使い二十

 従騎士百七十

ワードの冒険者四十

トランシェ騎士団二百五十

 騎士百二十

 歩兵六十

 弓兵五十

 魔法使い二十

エジスの冒険者三十

ギド騎士団五百八十

 騎士二百

 弓兵百

 魔法使い八十

 従騎士二百

ツボルトの冒険者百

ダイナ騎士団三十

 騎士三十

アスポラの冒険者二百

その他諸侯五百五十

 騎士百二十

 歩兵二百二十

 弓兵百三十

 槍兵八十

総合計二千百六十


「ただしその兵力は、現在では四百人前後減っているようだ」

「ほう?」

「グィド帝国軍に削られたのだ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 会議出席者四十人以上ってちゃんとまとめられなくて逆に泥沼になりそうだなぁ これを機に軍事に力入れそうですねザカ王国
[一言] 無理があるね。戦争でしかもタイマンでも暗殺でもないのに、自軍の戦力を聴かないうちに、首取る約束するアホがいるかね。
[一言] 会話による説明はもういいので、先に進めてもらって良いですか?(苦笑)
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