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狼は眠らない  作者: 支援BIS
第48話 復活
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 レカンはご機嫌だった。

 〈白魔の足環〉の性能が素晴らしいものだったからだ。

 鑑定で読み取れた恩寵の内容は、〈前方二十歩先に転移する。転移は障害物に妨げられない。転移先に物体がある場合は、それを避けて転移する。走行していれば転移距離が伸びる。この恩寵は一日に三度だけ発動する〉というものだ。

 基本転移距離は二十歩。立ち止まった状態で足環の恩寵を発動させると、二十歩前方に転移する。

 この世界の〈一歩〉は、おとなの男が思いきり大きく足を踏み出したときの距離で、〈十歩〉の距離を実際に歩くと二十歩になる。以前ノーマに聞いたところでは、もともとは、右足を踏み出し、次に左足を踏み出し、その両方を合わせて〈一歩〉と呼んだのだそうだ。

 しかも、〈闇鬼の呪符〉でもそうだったが、始原の恩寵品で定義される〈一歩〉は、現在の〈一歩〉より四割ほど長い。

 つまり〈白魔の足環〉の最低移動距離は、レカンの身長の十四倍以上ある。

 レカンは、〈転移剣〉を持っている。ツボルト迷宮で得た品で、この剣にも〈転移〉という恩寵がついている。こちらのほうは、移動距離は一歩から五歩程度で小回りが利くし、日に何度でも使える。少し考えると、対人戦では〈転移剣〉のほうが、〈白魔の足環〉より便利なように思えるが、実際にはちがう。

 〈転移剣〉は剣なので、持つだけで片手がふさがってしまう。これ自体大きな欠点なのだが、空振りしないと恩寵を発動させられない。つまりまるまる攻撃一回分の動作を無駄にしなければならない。そのうえ、障害物があると恩寵が発動しない。だから戦っている相手の後ろ側に跳ぶことはできない。

 ところが〈白魔の足環〉は、足に装着し呪文で発動するので、攻撃力を低下させずに使える。そして障害物の向こう側に跳べる。しかも助走を付けて跳べば、非常に長い距離を跳ぶことができる。いろいろ試してみたところ、百歩程度は充分に跳べることがわかった。それ以上の距離を跳ぼうと思えば、さらに速い速度で走らなければならないが、それをやると転移したあとうまく着地できないし、跳んだあと正面にある物に衝突してしまう。

 この恩寵をつかいこなせば、強力な敵と相対したとき、二十歩手前から、一気に至近距離に転移できる。つまり真っ正面から不意打ちができる。

 また、多数の敵と戦うとき、一気に敵の指揮官の前に出現して倒すことができる。三度連続して使えるのが、なんとも使い勝手がいい。

 建物のなかに転移で侵入することもできるし、脱出することもできる。

 相手から逃げるときにも役に立つ。

 レカンは夢中になって、〈白魔の足環〉の性能を検証した。

 その結果、この品の恩寵は、体の正面にのみ発動することがわかった。後ろには跳べないのだ。また、地面に沿った方向にしか発動しないことがわかった。岩壁を駆け上がりつつ恩寵を発動させても、上空には飛べない。試しにあおむけに寝た状態で恩寵を発動させると、足が向いている方向に転移した。

 転移すべき位置に障害物があると、その向こう側か手前に転移する。障害物の中心より向こう側に転移地点があった場合には障害物の向こう側に、障害物の中心より手前に転移地点があった場合には障害物の手前に出現するようだ。

 障害物が大きすぎると、恩寵が発動しない。ただし発動回数は減ってしまう。

 いろんな場所で実験してみたが、かなり幹の太い大木でも跳び越えられた。いずれ城壁や石積みの塀でも検証するつもりだ。

 当面の目標は、静止状態での転移に習熟することだ。中途半端に走りながら転移すると、距離が読みにくいうえに、転移したあと体勢が崩れやすい。静止状態で転移すれば、転移したあとも静止状態だ。地面からごくわずか上に出現する。着地したあと、どのような動きも可能だ。

 レカンは、〈立体知覚〉と〈図化〉を持っている。この二つの技能は、〈白魔の足環〉とは相性がいい。普通の冒険者が〈白魔の足環〉を使おうとしても、建物のなかに飛び込むにはかなり勇気がいる。壁の向こうに何があるかわからないからだ。また、混戦状態のなかで転移しても、転移した場所がどうなっているか、わかりにくいだろう。

 〈図化〉は、迷宮のなかで自分が今いる階層や、建物のなかで自分が今いる階を俯瞰することができるので、〈転移〉でどこに跳べるかを、正確に把握することができる。〈立体知覚〉は建物の外から、そのなかを探ることができるし、大勢の人が入り乱れているなかで、どこに隙間があるか、的確に教えてくれる。

 レカンは、〈白魔の足環〉をはじめ、今までに得た恩寵品の性能を検証しつつ、マシャジャインからヴォーカを目指してゆっくり移動した。〈彗星斬り〉の魔法刃の練習にも時間をそそいだ。

 街道は通らない。今やヴォーカに向かう街道は以前よりずっと人通りが多い。人目につきたくはなかったのだ。

 ある夜、森のなかで眠りにつこうとした。

(あ、しまった)

(〈彗星斬り〉が〈インテュアドロの首飾り〉を素通りした理由を)

(おばばに聞くのを忘れてた)

 またパルシモに行ってジザに質問すれば、たぶん理由を教えてもらえる。

 ただ、今度パルシモに行くときには、もう一度パルシモ迷宮に挑戦したいのだが、今のレカンでは、白炎狼に勝つことはむずかしい。

 ジザは前回のようには戦えないだろうし、そもそもこの次パルシモ迷宮に潜るときにジザに同行を頼む気はない。前回は、レカンとジザとアリオスとユリウスとエダと、そしてウイーがそろっていて、はじめて迷宮を踏破できたのだ。しかも、あのときの戦いは、勝ったといえるようなものではなかった。不思議なことだが、レカンには、白炎狼が勝ちを譲ってくれたようにしか思えなかった。というより、こちらの健闘を認めて戦いをやめてくれたように感じた。

(まあ、あいつは迷宮の隠れた主みたいなものらしいから)

(今ごろは再出現してるんだろうがな)

(あいつと再戦するには、まだまだ力をつけなくちゃならん)

(当分先の話だ)

 そのとき、突然、強大な何者かが近くに出現した。

 圧倒的な魔力と生命力を持つ何かだ。

 レカンは跳ね起きた。

 夜の森の闇のなかに、一匹の巨大な狼がいた。

 黄金色に爛々と輝く目。

 美しく神秘的な白銀の体毛。

 想像を絶するほどの魔力は体からあふれ出し、青白い炎となって身を包んでいる。

 白炎狼である。


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― 新着の感想 ―
ファッ!?!?!? 迷宮の主が迷宮の外に!?!?
[一言] 〈一歩〉の解説はここにあったんですね。 以前にもあったとしたらすみません、忘れています。
[一言] (まあ、あいつは迷宮の隠れた主みたいなものらしいから) (今ごろは再出現してるんだろうがな) (あいつと再戦するには、まだまだ力をつけなくちゃならん) (当分先の話だ) 一人だった事に加え…
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