↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼は眠らない  作者: 支援BIS
第42話 求婚決闘
PR
474/702

6

6


 次の日は六十九階層まで進んだ。

 六十階層台では、出現する白幽鬼は七体だ。エダが三体を倒し、レカンとユリウスが二体ずつを倒している。

 本当のところ、レカンが二体目を倒すより、エダが四体を倒したほうが早いのだが、倒すのは三体でいいと言ってある。

 ただし、エダには〈赤肌〉を優先的に倒すように言ってあり、もしも〈赤肌〉が四体出たら四体倒すよう指示してある。実際に〈赤肌〉が四体出ることがなかっただけのことである。

 ユリウスは、流れるような美しい動作で二体の〈黒肌〉を倒している。もうここらあたりの階層になると、魔獣の体はレカンより頭二つか三つは大きく、ユリウスの体格では直接に首を狙えないのだが、足を斬ったり、相手が攻撃動作に入るのを待つなどして、首を落としやすい体勢に持ち込んでいる。

 ユリウスの剣を鑑定させてもらったところ、〈疾風剣《フィエルシラー》〉という名で、〈攻撃力〉が中、〈切れ味〉が大で、〈破損修復〉と〈切れ味付加〉がついていた。ツボルト迷宮の百十五階層で出た恩寵品である。

 〈ねばり〉以外の基礎性能が〈ラスクの剣〉より上だ。特に切れ味はぐっと上だ。しかも使い手の技能によりさらに切れ味が上がる恩寵がついている。

(どうしてこいつがこんな物を持っているんだ?)

(あ、そうか)

(ツボルト侯爵家の剣術指南をした礼にもらった品かもしれんな)

 さらにその次の日は七十九階層を踏破してしまった。

 これはレカンにも予想外である。ここから先は下層だ。まさかこんなところまで来られるとは思ってもいなかった。

 危なげない戦いをしているといっても、ユリウスの相手が二体の魔獣に限定されていて、こちらの速度が相手より速いから勝てているだけのことだ。ここから先の魔獣の攻撃が、もしも命中したら命に関わる。

(どうしたものかな)

 レカンはじっとユリウスの胸元をみた。

「ユリウス。首に吊るしてる宝玉は、魔法防御の宝玉か」

「え? あ、はい。そうです、師匠」

「アリオスの持っている宝玉と同じ種類のものか?」

「父上がお貸しくださったのです」

「そうか」

 さらにレカンはユリウスの体内を観察した。

「胸に埋まっているのは〈命根のしずく〉だな?」

「えっ。おわかりになるのですか? さすが師匠。はい。〈命根のしずく〉です」

「〈命根のしずく〉って、何?」

「死にかけたとき、命をつないでくれる効果がある品だ。アリオスもそれを胸に埋め込んでいたから、オレに殺されかけたとき死なずにすんだ」

「あっ、あのとき。そうか。そういうことだったんだね」

 ユリウスが目を丸くして話を聞いている。父親がレカンに殺されかけたことは知らなかったのだろう。

 魔法防御の白い宝玉。

 〈命根のしずく〉。

 エダの〈浄化〉。

 そして〈神薬〉。

(なんだ。大丈夫じゃないか)

「よし。明日は八十階層台に入る。今までとはまた一段階敵が手ごわくなる。敵は九体になるが、配置は決まっている。〈赤肌〉五体が後衛で、〈黒肌〉四体が前衛だ。エダは後衛の〈赤肌〉を倒してくれ。五体はきついか?」

「大丈夫だと思うけど、十階層ごとに敵がぐんと強くなってるから、やってみないとわからないよ」

「そうだな。取りあえずゆっくり休んで、あとは明日だ」

 そして翌日、三人は八十階層の普通個体の部屋に挑んだ。

 途中、十人組のパーティーに出会った。こちらをみて、ぎょっとしていた。通り過ぎたあとも、何か盛んに話し合っていた。

「よし。この部屋に入るぞ」

「うん!」

「はいっ」

 三人は部屋に入った。

「〈浄化〉〈浄化〉〈浄化〉〈浄化〉〈浄化〉」

 息もつかせぬ〈浄化〉五連発だ。

 レカンたちが部屋に入るなり後衛の〈赤肌〉はうなり声を上げ始めたが、魔法を発動する前にエダに消滅させられた。

 レカンは左側に飛び出し、二体の〈黒肌〉を引きつける。ユリウスは右側の二体の〈黒肌〉を相手取る。

 もはやレカンにとって、この階層の〈黒肌〉は難敵ではない。一撃で確実に首を刈り取る。

 ユリウスもまた、流麗な剣の舞いをみせ、一呼吸で二体の敵の首を落とす。

 エダがいると、本当にらくだ。

 五体もの白幽鬼が消えてしまうから、狭い部屋が広く使える。もともとこの迷宮のむずかしさは、狭い部屋に多くの魔獣が密集していることにある。そのむずかしさが消えてしまうのだ。

 そのあと大型個体の部屋に入った。楽勝だった。

 結局この日は八十九階層まで下りた。

 またもレカンは悩むことになった。

 九十階層から敵の攻撃の質が変わる。この階層からは、こちらが部屋に入るなり攻撃してくるのだ。アリオスの推測によれば、この階層の魔獣は人間が近づいて来るのを察知している可能性がある。

 ここに来るまで、敵には一度も魔法を撃たせていない。だが、ここからはそうはいかない。

 今までは先手をとれていたから苦戦しなかったが、もしもエダが早期に被弾して〈浄化〉を撃てなくなったら。パーティー全滅ということもあり得なくはない。

(いや)

(今のオレなら)

(この階層なら部屋の敵全部を相手にしても)

(殺されることはない)

(この階層なら戦いの途中で部屋から逃げることもできるしな)

 そして何よりこのパーティーは、とてもよい状態に仕上がっている。いったん迷宮を出て再挑戦すれば、今の調子は失われてしまうだろう。

 挑戦することに決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
うーん、アリオスと2人の時はそれなりに苦労していた迷宮攻略が別ゲーになってしまったw
[一言] <疾風剣>の剣としての性能で特に優れた箇所や恩寵の傾向を見ると、ユリウスがどういう才能に秀でてるのか気づいててこれを渡した節がありますね 渡したのはアリオスあたりでしょうけどさすがの慧眼です…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。