表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼は眠らない  作者: 支援BIS
第38話 ベンチャラー家の凋落
420/702

7

7


 翌朝レカンは〈不死王の指輪〉を使ってみた。だが発動しなかった。

 朝になれば再び使えるということではないようだ。

 レカンとアリオスが今日も宿を離れないと知ると、〈グリンダム〉の三人は迷宮に行った。といっても潜るのではなく、知り合いの冒険者を探して話をするのだという。何のためにそんなことをするのかわからないが、レカンはただ、ああ、とだけ返事をした。

 この日も防具の修理は終わっていなかった。毎日聞きに来るなとしかられた。修理が終わるのは二十四日になるという。つまりあと三日かかる。

 昼ごろ〈不死王の指輪〉を使ってみたが、やはり発動しなかった。

 〈グリンダム〉の三人が帰ってきて、五人一緒に夕食を食べ始めた。ナークが、夕食代はいらないと言った。五人が自分を守ろうとしているのを知ったのだ。

「そんな心配はいらんと思うぞ。レカンは深層組どころか、誰も到達しなかった階層を探索する冒険者なんだからな。貴族の一人や二人殺したからといって、命を取ろうとはせんだろう」

 このナークの言い分には、実のところうなずけるものがあった。もとの世界でも、貴族は迷宮深層の冒険者ともめるのを嫌った。だがこの世界ではどうなのかはわからない。それに今回の場合、貴族の職場に押しかけていって殺した格好だ。放置しておけば体面に関わるだろう。

「この町で実際に冒険者が貴族を殺したことがあるのか」

「時々ある。貴族を殺すのは、いつも〈あっち側〉の冒険者だ」

「ほう。どういう場合に、そういうことになる」

「そりゃ、売りたくないと言ってるものを貴族が買いたいと言ってもめることがほとんどだろうな。あまりくわしくは知らんが。〈雷鳴と白刃〉のリーダーのヴァンガードは、俺が知っとるだけで三人殺してるぞ」

「なにっ」

「もっとも、今まで貴族を殺した冒険者は、若くなくなって力が衰えたら、毒や呪いや暗殺で死んでるけどな。やつもいい死に方はできんだろうなあ」

 レカンとナークの会話に、ヨアナが割り込んだ。

「金を生むうちは殺されない。生まなくなったら殺される。貴族を殺すには、その覚悟がいるね。でもレカンはこの町から出ていけばいい」

「ほかの冒険者だってそうだろう。みすみす殺されることはない。よその迷宮に行けばいい」

 この疑問に答えたのはブルスカだ。

「そりゃ、そうだ。実際にそうしたやつもいる。だけど〈あっち側〉で魔獣と戦い続けると、どこか感覚が麻痺してくるんだろうね。どうでもよくなっちまうんだ。それに」

 ぐいと酒をあおって、ブルスカは次の言葉をはいた。

「たぶん、よその迷宮にも刺客は差し向けられる」

「貴族たちは凄腕の暗殺者を飼ってるだろうのう」

「ほう。凄腕の暗殺者か」

「レカン。なんか顔がうれしそうだね。ちょっと怖いよ」

 アリオスは黙って酒を飲んでいる。

 そういえば、騎士バイアドは、〈深層の冒険者に手を出してはならんと、いつも言っているだろう〉と言っていた。そんなことをすれば貴族側の被害も大きいし、有能な冒険者を失えば収益が落ちる。ましてレカンは百二十一階層以降に行ける現在ただ一人の冒険者だ。

 とすると、今回の件は、もうこれで終わりなのだろうか。

(いや)

(そんなはずはないな)

 領主側は、レカンが百二十一階層に達していることを知っている。

 〈彗星斬り〉を手に入れたことを知っている。

 レカンをこのまま放置しておくわけがない。

 それに、なかったことにするには騎士トログの身分はたぶん高すぎる。父親の何とかベンチャラーも黙っていないだろう。

 だがどんな手でくるのか。それが読めない。

 何とかベンチャラーは騎士団長だから、騎士団を率いてくるかもしれない。団長以外は腕が立つというから、集団戦を挑まれればレカンといえど正面からは勝てないだろう。

 けれどもそういう方法ではないような気がする。

 騎士団を率いて正面から戦えば、レカンを殺せるかもしれないが、自分も真っ先に殺されることを、何とかベンチャラーはわかっているはずだ。それに正面から戦うような気質の持ち主ではないように思える。

 きっとからめ手でくる。

 だから油断はならない。

「それとね、レカン」

 ブルスカが少し声を落として話しかけた。

「うん?」

「今回のこととは関係ないかもしれないけど、ちょっと妙な噂がある」

「妙な噂?」

「〈あっち側〉の探索者の数が減ったみたいなんだ」

「ほう?」

「〈グィンティル・エラ・スルピネル〉は、相変わらず最下層近辺に潜ってるようだ。だけどほかのパーティーを、あまりみかけない。宿にも帰っていないようだ」

 〈グリンダム〉が〈あちら側〉の冒険者たちと交流があるわけではないし、錦嶺館のことは外からは知ることができない。それでも〈あちら側〉の冒険者は目立つ。探索をしていれば、どこかで誰かがみかけるものなのだという。

(ふうん?)

(妙な話だな)

(だがオレには関係ないな)

 その夜も〈不死王の指輪〉の仕組みを検証した。

 すると最初は発動しなかったが、ある時点で発動した。

(たぶん)

(昨夜発動してからちょうど一日以上たったから)

(使えるようになったんだろうな)

 つまりこの指輪は、一度使うと丸一日過ぎなければ使えない、ということだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
貴族たちは凄腕の暗殺者を飼っている、 という件で、 黙って酒を飲んでいるアリオスこそが、 貴族御用達の、凄腕の暗殺者。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ