表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼は眠らない  作者: 支援BIS
第31話 ツボルト迷宮の秘密
335/702

19_20

19


 アリオスが飛び出し、レカンが追う。

 全力疾走ではない。それでは剣のわざがふるえない。

 レカンはあらかじめ剣を抜いて肩に担いでいる。

 このやり方が、最も力が乗る。

 敵の魔法がレカンとアリオスに着弾して視界が白くそまる。

(二発同時攻撃とはいい腕だ)

 相手の首をねらったアリオスの攻撃を、魔獣はかわした。

 アリオスに生まれた一瞬の隙を敵はみのがさず、すかさず突きぎみの斬撃が繰り出され、アリオスの右胸を斬り裂く。

 レカンの攻撃は、相手の左肩に食い込んだが、打ち込む瞬間にタイミングを狂わされ、致命傷には至らない。

 魔獣が剣を振り下ろし、戦慄的な破壊力を持つ一撃が、無防備なレカンの頭上を襲う。レカンはかろうじて右にこれをかわし、左腕を折り曲げて受け止め、威力を殺した。

 敵の攻撃は、左腕と左肩を深々と斬り裂く。

 レカンが刺突を放つ。剣が敵の喉に食い込む。左右に激しく剣を振る。敵の首が宙を舞う。

 くずおれたレカンは、〈収納〉から大赤ポーションを出して飲み込む。そして自分に〈回復〉をかける。

「〈回復〉」

 このときにはアリオスは、深手は負いながらも敵を倒し、やはり大赤ポーションを飲んで、レカンに近寄ってきていた。

「〈回復〉」

 アリオスにも〈回復〉をかけた。

 二つの宝箱の中身を回収して、二人は階段に踏み入り、地上に帰還した。

「アリオス」

「はい」

「明日から四十日間休養にする」

「わかりました」


20


 翌日、アリオスと〈花爛街〉の革防具専門店を訪ねた。軽鎧は五日ほどで修復できるということだった。外套のほうは自然に戻る。〈自動修復〉は本当にありがたい機能だ。

「休養期間中、ちょっと出かけます。四の月の十日まで、夕食はなしということにしておいてください」

 レカンとナークにそう言って、アリオスはどこかに出かけた。

 レカンは七日間、毎日朝から食堂街で飲んだくれた。

 そのあと三日間を寝て過ごした。

 十一日目に迷宮に入り、九十階層の空き部屋で、〈障壁〉の実験をした。

 対魔法用の〈障壁〉は、シーラが教えたがっていただけあり、非常に便利で融通の利く魔法だった。

 まず、魔法をかけたまま高速で移動しても、魔法は維持される。なかから外に向かって魔法を撃っても、〈障壁〉は消滅しない。〈障壁〉をどの程度からだから離した位置に張るかは術者が制御するのだが、〈障壁〉を張ったまま岩壁にぴたりと張りつくこともできる。それでも魔法は維持されるのだ。

 ところが対物理用の〈障壁〉は、ひどく扱いにくい魔法だった。

 まず、魔法をかけたまま走ると、魔法は消える。なかから剣を振ってそれが〈障壁〉に接触すると、格別の手応えはないのだが〈障壁〉は消えてしまう。

 レカンは、対物理〈障壁〉を維持したまま、ゆっくりと歩く練習をした。

 うまくいった、と思ったのははじめのうちだけで、少しでも急いだり、気を散らしたりすると、たちまち魔法は解けた。

 この日と次の日は、魔法を維持したまま歩く練習に費やされた。

 二十四日になり、ある発見をした。

 対物理〈障壁〉を張ったまま迷宮の壁に突き当たると、それ以上進めないのだ。これは大きな問題だった。もしこの性質がいかなる場合にも保持されていると、レカンを壁まで吹き飛ばすような攻撃をこの結界で受けても、結局結界ごと吹き飛ばされてしまうことになる。

 レカンは十階層に下りて魔獣のいる部屋に入って検証しようとしたが、敵のあまりの遅さに耐えきれず、部屋を出て四十階層に転移し、魔獣のいる部屋に入った。ところが今度は、〈障壁〉を張るのがまにあわず、敵の集中攻撃を受けた。もちろんすぐに五体とも斬り倒したが、このままではだめだと気づき、九十九階層の空き部屋で〈障壁〉を張る練習を重ねた。

 〈障壁〉を張ったまま部屋に入れれば好都合なのだが、それは不可能だとわかったので、回廊にいるときに魔力を練って準備して、部屋に入るなり〈障壁〉を張る練習を重ねた。これが存外むずかしく、満足のいく程度の速度で魔法が行使できるようになるまで四日かかった。

 翌日は再び四十階層に跳び、魔獣のいる部屋に入った。攻撃を受ける前に〈障壁〉を張ることができた。まずは成功である。

 次に、ゆっくりと部屋のなかを歩き始めた。

 三体の〈黒肌〉が攻撃してくる。

 そのうち二体の〈赤肌〉も魔法を撃ってきた。

 魔法は〈インテュアドロの首飾り〉が防いでくれる。

 物理攻撃は〈障壁〉が防いでくれる。

 しばらく試しているうちに、ある程度この結界の性質がわかってきた。

 まず、こちらが静止しているときに物理攻撃を受けても、結界は微動だにしない。ところが、ゆっくり移動しているときに物理攻撃を受けると、確かに手応えがある。ただし、ごくわずかに揺れた時点で結界は静止状態に戻り、そこからは動かない。どうもそういう仕組みになっているようだ。

 四十階層の魔獣程度の打撃力では充分な検証ができないが、おおむね見当はついた。

 次は、物理結界を張りつつ攻撃する方法を編み出さねばならない。

 簡単ではない。しかし確かに前進している。

 この日の酒はうまかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ