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狼は眠らない  作者: 支援BIS
第24話 シーラ暗殺
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「よくわからんな。今回スカラベルという一人の薬師がシーラを訪ねるためだけに、大仰な護衛を仕立るばかりか、道まで整備するという。それもよくわからんが、周りの領主たちが騒ぐというのは、もっとわからん。関係ないだろう」

「レカン。確かに今回の街道整備それ自体は、そこまで大きな出来事ではない。白金貨八枚の予算と聞いて気が遠くなるような思いがしたが、実際に計画を立ててみると、白金貨八枚でできることは知れている」

「ほう。そんなものか」

「もっとも時間もないがな。たったひと月で街道の本格的な整備などできるものではない」

「それはそうだろうな」

「レカン。今度のことは、スカラベル導師の純粋な思いをお受けになって王陛下がお決めになったことだ。だが、それを宰相府は最大限に利用しようとしている」

「利用?」

「そうだ。王国北東部の各領主たちに、王都の目はここまで届いているぞ、いつまでも勝手ができると思うなよと、宣言しているのだ」

「ほう。少しわかってきた」

「お残りになった事務官お二方は、実に優秀だ。最初におっしゃったのが、近隣の町から職人を集めよ、ということだった」

「当たり前だろう」

「当たり前じゃない。普通は計画を立て、必要な職種と人数を割り出し、材料の手配をして、それから人を集めるものだ。ところが具体的な計画は決まっていないのに人手を集めよとおっしゃる」

「それで、どうした」

「逆らうわけにいかんだろう。おっしゃる通りにした。お二方が添え書きをくださった。宰相府内務長官代理の名でな。どこの領主も村長も、すぐに職人と作業員を送ってくれたよ」

「ふむ」

「そのあと、何が起きたと思う?」

「わからん」

「コグルス領主がコグルスの近辺道路の整備のため職人を提供するよう、近隣の町や村に要求した」

「ははあ。そういうことか」

「コグルス領主は、バンタロイとヴォーカをつなぐ道が整備され、そこに街道の名が冠されることを知って、邪魔に入ったのだ。そのあとワシが泣きつくのを待って、なにがしかの条件を飲ませるつもりだったのだろうな。だがやつが何を考えているか、何をするか、事務官がたはとっくにご承知だったわけだ」

「ははは。それは面白い」

「腕のいい職人の数は限られている。先にコグルスに押さえられたら、工事は止まってしまっていた。もともとぎりぎりの時間しかないのにだ」

「なるほど」

「こうなってくると、ぎりぎりの時間しかなかったのさえ、宰相府の計算のうちかとも思えてくる」

「なるほど、機先を制したのだな」

「そうだ。周りが情報を得る前に、やるべきことをやってしまう。そういう作戦だったのかもしれん」

「工事の取り進めに何の問題もなくなったのだな」

「いや、そうはいかん。むしろ今回のことにかぎっていえば、コグルスのことは小さい問題だ。大きな問題はバンタロイにある」

「ふむ?」

「バンタロイは大きな町だ。文化も花と咲き、あらゆる物品の品質は、コグルスより一段も二段も上だ。つまり、ヴォーカより二段も三段も、いや、もっと上だ」

「そうだな。大きく立派な町だ」

「バンタロイとヴォーカをつなぐ街道を整備する主導権をヴォーカに取られて、バンタロイが面白く思うわけがない」

「うむ」

「ところが、今回のことは、バンタロイから大量の職人を出してもらわねば、どうにもならん。特に、大きな橋を補修できる職人はバンタロイにしかおらん。迎賓館の調度などでも協力を仰がねばならん」

「ああ」

「事務官がたも、このことはご心配でな。宰相府内務長官代理名で協力方指示書を出してもよいが、かえって反発する場合もあると」

「表向きは協力するふりをして、二流の職人をよこしたり、派遣を遅らせたりするかもしれんな」

「はは。その通り。だが今回にかぎって、ワシには成算があった。ワシは事務官がたに、お任せくだされと申し上げ、アギトを派遣した。どうなったと思う?」

「そんなこと、オレには……待てよ。先ほどアギトが言ってたな。エダの働きに助けられたと」

「ははははは。それだよ。まさにそれだ。エダが討ち取った盗賊の頭目は、まちがいなくバンタロイの金級冒険者だった。首をバンタロイの冒険者協会長と領主代理にみせて確認してもらったうえで、領主に献上してリットンは帰った。その時点では何のみかえりも求めずにな。それが生きた」

「レカン殿。私があちらの領主館に行くと、下へも置かぬもてなしぶりでした。ご領主みずからが応対してくださり、職人の派遣も二つ返事でご承知くださいました。しかも交通費はあちら持ちで。ほかにも何なりと協力すると仰せでした」

「はははははは。それを報告したときの、事務官がたのお顔をみせたかったよ。ははははは」

「父上のことをみる目が明らかにかわったのです」

「それはよかった。今忙しいだろうに、それを知らせるために、オレを呼んだのか?」

「あ、いや。そうではない。ここまでの話は、本題を話すために必要だったのだ」

「本題とは何だ」

「シーラ様の命が狙われている」

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― 新着の感想 ―
[良い点] この辺の政治の話も筋が通っててうまいこと話が回っててやっぱり良いですね
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