表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼は眠らない  作者: 支援BIS
第23話 王都よりの使者
224/702

5

5


 使者一行は、昼食時間をかなり過ぎてから到着した。

 ということは、道中で昼食をとったのだろう。

 レカンは、領主に乞われ、玄関で使者一行を出迎えた。

 〈貴王熊〉の外套を身にまとったままで立っていたら、領主が脱ぐようにと迫ったので、〈収納〉にしまった。もちろん、武器の類も全部しまってある。

 領主側は、これでもかと出迎えの人数を繰り出して、玄関周りを埋め尽くした。

 テスラ隊長が町の門外で一行を出迎え、領主館まで案内してくる。

 玄関前で、書記次官と領主は簡単なあいさつをかわして、打ち合わせに参加する者は応接室に移動した。

 領主側は五人である。

 領主クリムス・ウルバン。

 守護隊隊長テスラ。

 文官が二人。

 そしてレカン。

「こちらは薬師シーラ代理、薬師レカン。ヴォーカの町の金級冒険者でもあります」

 という紹介がなされたとき、静謐を保っていた使者一行に、わずかなざわめきが生じた。

 使者側は十二名だ。

 宰相府内務書記次官イェテリア・ワーズボーン。

 事務官二名。

 その護衛である王国騎士団副団長ザイファド・カッチーニ。

 従騎士二名。

 王都エレクス神殿一級神官アーマミール・タランス。

 その護衛である王都エレクス神殿の神殿騎士デルスタン・バルモア。

 従騎士二名。

 三級神官二名。

 紹介が終わったあとソファに座ったのは、領主側では領主とレカンの二人であり、使者側では書記次官と一級神官と事務官二名の四人だった。人数分のソファしか用意されていなかったので、誰が座るかについて、あらかじめ打ち合わせがあったのだろう。

 使者側で座らない者たちは、ぐるりと周りを取り囲むように立ち、領主側で起立したままの三名は、領主とレカンの後ろに立った。さほど広い部屋でもないので、領主の受ける威圧感はかなりのものだと思われる。

 会談の口火を切ったのは書記次官だ。

「お忙しいところ、ご造作をおかけする。まず、宰相殿よりの口上を申し伝える。〈こたび薬師スカラベル導師の願いを受け、王陛下におかれては、スカラベル導師がヴォーカにおもむき薬師シーラと会談するため必要な準備を進めるよう、勅命を発せられた。ヴォーカ領主クリムス・ウルバンは、わが使者と協議のうえ諸般のことを取り進めよ〉。以上である」

「ち、勅命」

 領主が目をみひらいて硬直している。勅命というのは、そんなに珍しいものなのだろうか、とレカンは思った。

「さて、事務上の取り運びについては、領主殿とのちほど協議することとして、まずは薬師シーラ殿のお目にかけねばならぬものがあるのだが、ご代理をよこされるということは、薬師シーラ殿はご病臥であられたか? お見舞い申し上げることはかなうであろうか」

「遠路はるばる宰相ご使者様ならびにアーマミール一級神官様のご来駕を得、まことに畏れ多く、また光栄に存じております。ヴォーカ領主といたしまして、陛下のご勅命の趣旨に沿って宰相様のご下問に応うべく、全力を尽くす所存でございます。薬師シーラの現状につきましては、薬師シーラの弟子であり、薬師シーラが代理人に指名したレカンよりご説明申し上げます」

 頭を下げたまま領主は横をみて、レカンをぎろりとにらんだ。お前が説明しろ、と要求しているのだ。

 レカンはソファにふんぞり返ったまま、言葉を発した。

「使者殿からの来信を受け、領主はその趣旨をシーラに伝えた。その翌日、すなわち一昨日、シーラはオレと領主に手紙を残して姿を消した」

「レカン! 言葉遣いを改めよ。ご使者様に非礼である」

 領主の言葉を、書記次官は手を上げて制した。

「領主殿。レカン殿は冒険者であろう?」

「は、はい」

「冒険者には冒険者の流儀がある。言葉尻をとらえて非礼とは申さぬ。レカン殿。続けよ」

「二つの手紙に書いてあったことをまとめれば、こうなる。自分は旅に出る。王都からの使者については、オレを代理人に任ずるので対応せよ」

 レカンはここで言葉を切って、相手の反応をみた。

 さすがに書記次官も、硬い表情をしている。

「シーラは、あんたたちが来ると知って姿を消した。つまり、あんたたちに会いたくないということだろうな」

 王国騎士団副団長のザイファドが、すさまじい怒気を放った。その後ろの従騎士たちも同様である。

「シーラ殿は、お付きの人たちとご一緒であろうか?」

「いや。一人だと思う」

「一人で旅に出られるほど、ご壮健か?」

「元気いっぱいのばあさんだ」

「それは重畳。スカラベル導師は、シーラ殿のご健康をひどく案じておられた。しかし、これは困った。どうしてもシーラ殿に直接お会いせねばならんのであるが」

 ここで書記次官は、アーマミール一級神官のほうをみた。

 先ほどからこの一行をみていると、宰相の正式の使者は書記次官イェテリアにちがいないが、一行で一番尊ばれているのはアーマミール一級神官のほうである。立場上は随行者にすぎないアーマミール一級神官が、実はこの一行で最重要の位置にある。

 アーマミール一級神官は、老いてしわだらけの顔をした小さな男だが、その目に宿る叡智の光は、みる人をして畏敬の念を抱かせずにはおかない、そんな人物である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
やはりここら辺からがこの物語で1番面白くなるなぁ。
イェテリアはレカンの態度見ても眉1つ歪めない鉄仮面ぷりがさすがに慣れてるなって感じですね 表向き礼を尽くしてても皮肉の応酬をすることもありそうだし、直情的でわかりやすいレカンはむしろ望むところですか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ