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裏野ドリームランドの怪  作者: 三太郎
2/8

消えた少女 前編

ウワサその1の話です。

前編ですので、ご覧ください。

「何十年振りだな……この遊園地」


 私は裏野ドリームランドの出入り口の門に立っていた。


「アイツがいなくなった事件もあったな……」


 門の前に立つ壮年の男は鷺沼新一、この裏野市の出身で、今は東京の大学に進学して、今は東京の大企業の株式会社の重役を務めて働いていた。実に仕事が忙しすぎて家族に構っている暇がないのだ。

 昨日、実家の両親から連絡があった。小学時代の友人が他界したことで、仕事を休んで急いで帰省し、実に数十年ぶり……

 そう思いながら、遊園地の離れていた場所で、何人かの子供たちが燥ぐように遊んでいた。


「タクちゃんと一緒に遊んでいたな……」


 ダブルブリッジセル眼鏡のテンプルを手で押す。あの頃を思い出す。

 右ポケットから取り出すと、かなり昔の写真を手に持ち、あの頃の写真を比べていた。


「廃園になってもう数年か」


 小学時代に遊園地で集合写真を撮影したな。真ん中の二番目の位置にいる眼鏡を掛けている少年が私だ。右隣にいるのが友人のタクちゃん、それに……忘れてはいけない友達もいた。左隣に座る三つ編みの女の子だ。


「どうしていなくなったんだ……りっちゃん」


 そう……私の女の子の友達で、初恋だったりっちゃん。あの遊園地(裏野ドリームランド)で、姿を消えてしまった。


「タクちゃん……死ぬ前にこう言ったよな?」


 私がタクちゃんの入院している病院で、面会した後、廃人のように死にかけていた。

 病室を訪れた私は、タクちゃんが自分の服を掴まるように、彼が放った最後の言葉とは……


『りっちゃんは連れていかれた! あの……異次元……空間……に……俺は……見た……』


 タクちゃんは言いかけた時には、力が尽きてしまい、掴んだ手が離れ、目を瞑るようにこの世を去った。

 その後、すぐ様葬式は無事に済ませた。タクちゃんの家族とその兄弟の挨拶をした後、寄りたいところが一つある。

 りっちゃんが消えた裏野ドリームランドを。


(彼が言った事とは?)





 196x年、今日は裏野第一公立小学校の校外学習の為に、裏野ドリームランドのオープン初日に、ここへとやって来た。


「おーい、早くしろよ二人とも」

「待ってよー! タクちゃーん」

「そんなに走ったら危ないよ」


 手前に右手を振っているツンツン頭をした少年、タクちゃんだ。本名は溝口拓海、同じ小学校のクラスメイトで、仲が良い友人である。

 後から追いかける僕と、隣にいる三つ編みの女の子の律子ことりっちゃん、本名は青葉台律子、普通の目立たない女子生徒で、タクちゃんの幼馴染で、いつもタクちゃんに心配をする。

 先生のグループ分けで、僕とタクちゃんとりっちゃんの三人グループになった。

 一番マイペースなタクちゃんは元気に走り回る。まあ、いつものことだ。僕たちは園内を巡るように走って行った。

 

「ねえ……アトラクションは決まっているの?」

「もちろん。なんでもだ!」

「全部回るのは大変だよ」


 この裏野ドリームランドは、アトラクションがとても大人気で、スピードが速いジェットコースター、船で盛を冒険するアクアツアー、鏡で溢れているミラーハウス、馬や馬車などの回るメリーゴーランド、夢が集まるドリームキャッスル、そして……裏野ドリームランドで一番有名な観覧車、田舎町で一つ……僕らの楽しく遊べるテーマパークである。

 僕たちは、まず最初にジェットコースターへ、順番待ちでチケットを購入し、ようやく僕らの番が出て、乗車してハラハラドキドキで緊張感が溢れる程、とても絶叫するように悲鳴を上げてしまい、おまけに吐いてしまう。

 次は夢の楽園アトラクションのドリームキャッスル、城の中は、中世ヨーロッパの内装で作られて、王様やお妃様や、王子さまやお姫様、魔法使いや魔女や家来や家臣などの人形が置かれていて、まるでおとぎ話の世界に飛び込んだみたいで、女の子は物好きだなあ。

 僕は冒険アトラクションのアクアツアーに行ってみたいと告白し、二人は楽しくOKとしてくれた。アクアツアーの船ツアーは、どこかのアルプスみたいな風景で、自然に囲まれたように冒険の鮒旅をしている。船は十何人で乗れる状態で、船上の上で川下りのように、とても乗り心地がよかった。

 アクアツアーの船旅はとても楽しかった。川を横断する冒険の旅に行った気分だ。

 隣にいるりっちゃんは、僕とたっちゃんの背中を叩くようにトントンとする。

 ミラーハウスへ、鏡の迷路で数々の自分の姿が写し出される。

 迷子になるほど、鏡がいくつもどれが正しい道なのか、右か左などの方向がわからない。出口まで大分時間が掛かった。


「とても出口に出るまでかなりかかったわね」

「今何時だ?」

「もう閉演時間になりそうだよ」


 時計台で時間を確認すると、午後二時半が過ぎている。段々と時間潰しにしていたな。

 僕たちは最後に観覧車へと向かった。

 観覧車へ着くと、何十人以上が順番に並んでいた。

 今度は僕達三人の番だ。観覧車で外を眺めると、山に囲まれて、アッチには富士山が見えている。西の方へ向くと、僕たちが住んでいる裏野町と、通っている小学校もアリのように小さかった。

 僕たちはとてもいい思い出に残りそうだ。


「とても楽しいアトラクションがたくさん遊んだね」

「うん。また遊びに行きたいな」

「そうだね」


 裏野ドリームランド……最高のテーマパークだった。今度は家族と一緒に行きたいな。そう考えている場合じゃない。

 

「そうだ。早く集合場所へ行こうよ」

「うん」


 急いで集合場所の広場へ戻ろうとした時。

「ちょっと待って」


 突然、りっちゃんが声を掛けられて、走るのを一旦ストップした。


「トイレに行きたいけど……」

「そういえば俺も」

「でも……早く急がないと」

「じゃあ新ちゃんが先に戻ってくれないか?」

「僕が?」

「先に戻ってて、私達は後を追うから」

「迷子にならないのかな?」

「マップで確認するから」

「わかった」


 りっちゃんとタクちゃんはトイレへと向かい、僕は先に学校とクラスのみんながいる集合場所の広場へと戻って行く。

 もう何十人以上のクラスメイトや教師がたくさんいた。

 先生に他の二人がトイレに行っているので、後から来ますと、話をして、僕は後ろでりっちゃんとタクちゃんを待っていた。


「遅いな……」


 二人がトイレに行ってから大分時間が掛かっている。クラスの連中は暇そうにして、早く帰りたいとする子もいた。中々戻ってこない二人を心配する先生は、係員に話しかけて、一緒に探しに行った。

 園内はもう、人がガラガラになっている。もう閉園の時間になりそうだ。

 探していると十分が掛かり、ようやく、別の係員が、タクちゃんが発見した。

 しかし、タクちゃんの様子が変だ。もう一人であるりっちゃんの姿が何処にもいない。

 僕は気になって近づいてみると、恐れた表情で先生に何か話している。


「本当だよー! りっちゃんが連れていかれたんだよー!」


 連れていかれた。りっちゃんが消えたというのは、先生は興奮するタクちゃんを落ち着きを取り戻そうと必死だ。

 警察に連絡して、遊園地内を必死で捜索したが、何処にも見つからなかった。りっちゃんは何者かに誘拐されたと主張される。

 りっちゃんの両親は捜索願を出したが、手掛かりがつかめず、断念とした。

 一緒にいたタクちゃんが、『りっちゃんが異次元に連れていかれた!』と訳の分からないことを言って、誰も信じてくれない。

 タクちゃんは学校にも行かず、無断で裏野ドリームランドへと侵入してしまい、警察佐太を起こす事態になってしまった。

 タクちゃんの両親は、自分の息子が頭がおかしくなってしまい、もう耐えられず、精神病院へと強制的に入院させられた。

 タクちゃんとりっちゃんがいなくなった僕は、中学と高校まで裏野市に住み、東京の大学へ合格して、卒業後にタクちゃんに会いに行ったが、面会拒絶で別れの挨拶を言えなかった。

 東京の大学に出て、大企業の一流会社に就職し、段々と時が流れて行き、重役に出世した直後、故郷の裏野市には帰国できなかった。

 もうじき定年になりかけた頃、弟から連絡が来て、『タクちゃんが倒れて悪化してるんだ』と、私は急いでタクちゃんの元へ駆けつけた。

 裏野市には、もう何年も経って、建物や住宅地が拡大し、通っていた小学校も新校舎になっている。私が離れて大分変ってしまった。

 タクちゃんの最後に放った言葉が気になって、私は葬式直後に、家族に連絡を取って『少しは故郷を眺めて帰る』と伝えてある。


「タクちゃん……一体りっちゃんが連れていかれた真相を突き止めるんだ」


 数十年間、タクちゃんがりっちゃんが消えた真相が知りたくて、裏野市の外れにある、もう何年か前に廃園になった【裏野ドリームランド】へと足を運んだ。


                                  ~後編へ続く

                          

 

 






いかがでしたか、

昔話ですけど、主人公の現在視点で、続きは後編でお会いしましょう

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