第9話「その時を待つ」
森で倒れていた少女をログハウスへ運んだ二人だが、一つ問題が発生していた。
「見た所、この少女には傷や怪我が一切見当たらなかった。しかし服に付いていた血は、間違いなくこの少女のものだ。一体どういうことだ?」
「誰かの返り血かもしれません。もしくは少女を治療した者の仕業かと」
最初に少女の姿を見たムクロは、服全体に血が滲んでいるのを見て大量出血していると思ったのだが、いざ確認してしてみると、出血どころか擦り傷の一つもなかったのだ。
しかし命に別状はないとわかり、二人は安泰した。
少女の外見は十代前半と推測される。
身長は百五十ほどで、雪のような白髪、そして身につけていた衣類は綺麗な刺繍が施されたドレスだった。
ムクロは服に関する知識など全くないが、ドレスは高いというイメージだけはあった。
もしかしたら身分の高い裕福な家庭で育った子なのかもしれないと、ムクロは予想していた。
ちなみに体の負傷を確認するために二人は少女のドレスを脱がしたのだが、疚しい気持ちなどは一切ない。
一人は人間の姿をした常時裸の竜。
一人は何もかもがモロ見えの骸骨。
面子的には問題だらけな気もするが、この島には二人以外の人はいない。いるのは魔物だけだ。
今スヤスヤと眠っているこの少女を足せば三人となる。
「とりあえず、少女が目覚めるのを待ちましょう」
「そうだな。この少女には、いろいろ聞きたい事がある。なぜ突然この島に現れたのか、なぜ服に大量の血が付いていたのか」
少女が目覚めるのを待ちつつ、今までになかったことが起こり、久々に気持ちが高ぶる二人であった。
◆◇◆
暗い、暗い、どこまでも闇。
自ら動くことは出来ず。
それでも足掻く。
懸命に四肢を動かす。
ふと上から光が差す。
少し手を伸ばせば届きそうだ。
痛みと苦しみを抑え、右手を伸ばす。
あと少し、あと少し。
光に触れた。
この感覚を自分は知っている。
少女は光に包まれた。