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骸旅  作者: 眠維ノヨ
第一章 骸と竜
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第5話「穏やかな朝」

 窓から光が差す。

 懐かしくもあり、見慣れた朝日。

 しかしここは地球ではない。

 にも関わらず、太陽は昇る。


「……んっ、朝か」


 ベットに横たわる俺の隣から、凛とした声が聞こえてくる。


「おはようございます、モルセラさん」


「うむ。久々によく眠れた。ムクロのおかげだな」


「俺……感謝されるようなこと、しましたか?」



 窓から差す日の光に照らされる彼女の妖艶な裸体は、美しく綺麗だった。


 俺の隣で寝ていたのはモルセラだった。

 ログハウスの完成後、彼女の宣言通り家で共同生活することになった。


 しかしここは絶海の孤島。

 電気もなければ水もない。

 俺自身もあまり知識があるわけじゃない。


 料理や家事ならある程度できるのだが、この島に生息するモンスターや植物は、地球には存在しないものばかりだ。

 なりより道具がない。

 道具がなければ何もできなかった。


 幸い、俺は骸骨のため生活に困ることはなかった。

 モルセラも空腹になると散歩感覚でモンスターを襲い喰い散らかした。


 ある日俺が彼女の食事風景を観察していると「ムクロも食べるか?」と聞いて来たのだが、胃も腸もないのにどうやって食べればいいのかと問い返してみると「気合いでどうにかならんのか?」と言われた。


 気合があればなんでもできる!

 わけないでしょ。



「ムクロと出会ってから、もう一年は経つのだな」


「急にどうしたんですか?」


「懐かしい……と思ってな。我がこうして、また地上で暮らすことになるとは思わなかったぞ」


「俺も美人なドラゴンさんと一緒に生活するとは、思いませんでしたよ」


「だからドラゴンさんはやめろ。しっかり名で呼べ」


「わかってますよ。モルセラさん」


 こうして彼女との朝が始まる。

 起床後に、こうして何気ない雑談をするのだ。



 しかし皆さん、お気付きだろうか?



 会話だけを聞けば世の男性諸君は羨むことだろう。美人なドラゴンのお姉さんとイチャイチャすることを。

 しかし、今の二人のやりとりを第三者からみた場合、どう思うだろうか?


 ベットの上で眠る美女と骸骨。

 しかもムクロは骸骨のため声が出せない。

 二人の会話が成立しているのはモルセラが念話を使っているからだ。


 つまり二人が楽しく会話している様子を他のものが見ると、女性が楽しそうに骸骨に独り言をしていることになる。



 果たして正気だと思うだろうか?

 否、異常だと思うだろう。



 骸骨とは腐り果てて骨だけになった死体のことだ。そんな骨だけの死体に挨拶をし、楽しそうに会話をする姿を微笑ましいと言えるだろうか?



「それじゃあ。今日も魔法の指導、お願いします」


「ああ。今日も厳しく指導するゆえ、ムクロも覚悟せよ」



 唯一の救いは、この島にはムクロとモルセラ以外には、獰猛かつ強大な魔物しかいないということ。


 ムクロは気付かない。

 この島が、どれ程危険で異質な島なのかを。



 しかしその事実を彼に教える者はいない。


 ーー誰も、いないのだ。

時間が経つのって早いですね。

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