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2話 神様


「おい、起きておるか?」


最初に感じたのは音だ、風の音じゃなく、今度はしわがれた声だが。



「ん、ああ、起きてますよ....」


なまじ先程の記憶がはっきりしている分、混乱は大きいが、反射的に返事は返す。


眠って起きた時の様なものでは無い、記憶がプッツリと途切れた後にすぐこの状態になっているような感じだ。


パソコンで例えるなら、シャットダウンではなく休止状態、またはスリープモードから復帰した時の状態に近い。


混乱の原因はそれだけではない。

今ここにいる空間もそうだ。


光源もないのに一面見渡す限り真っ白で、いるのは俺と目の前の老人だけだ。


そして老人の格好は、まるで.....



(さっきから何や訳わからん...まさか、ほんまに「お約束」のアレやとでもゆうんか?)



「そうじゃのう

確かに概ねそれで合っとる

まぁ、これで最後じゃが」



「え、心読めんの...」



「お主の国の言葉で言うなら、当たらずとも遠からず、じゃな

儂が心を読んでいるのではなく、お主が思考を垂れ流しておるのじゃよ」



(わけわかんねぇ....)


「解らなくてよい。

理解してもさしたる問題は無いがのう」



こちらの考えが相手に伝わってしまうのなら、何も考えないのはどうだろうか?


(いやいや、そんなん無理や)



はっと脳裏に浮かんだ考えを即座に否定する。


人間が、意識を落としているわけでもないのに意図的に何も考えていない状態になるにはそれなりの訓練が必要だろう。

この状態に対する混乱状態にある今なら尚更。


少なくとも、現在の俺には不可能だ。



「少々時間が押しておるのでの。

手短に伝えさせて貰うが、そのお約束という奴じゃ。

お主には取り敢えず、生きていてもらわねばならんからの。

能力を....そうじゃな、お主の認識で言えばチート、と呼ぶレベルの物を授けて異界に放り出す手筈になっておるのじゃ」



「そーすか.....」


咄嗟にでた感想はこんな物だったが、悲観的になっているわけではない。


元はと言えば、イヤホンなぞつけて周りを見ずにいた俺自身の不注意だ。


そう考えれば親にはとても申し訳ないが、運で掴んだラストチャンスだと捉える事も出来る。



だが、ならば先程の森は何なのだろうか?


なぜすぐここに来なかったのだろう?


「それはの、お主が勝手に行ってしまったのじゃよ。

お主が死んでしまった後処理の間、ここに留めておく筈じゃった。

なのに目を離した隙にふよふよと好きに動き回ったようでの。

気が付いた時にはもう向こう側じゃったよ。

まぁ直ぐに戻ってきたから良かったがのう」



ふよふよ、という表現から推測するに俺はその時魂だけであったのだろうか?


魂レベルで異世界に惹かれるとは、俺はそこまでファンタジーに憧れていたのか。



(いや待てよ?

このじいちゃん俺が行く先がファンタジーなんて一言も言ってないで?)


そうだ、向かう先について俺は一切情報が無い。


先程の森を思い返せば、植物はあまり変わりないように思える。

もしかすれば、元いた地球と変わりない世界なのではないだろうか。



生き返る世界を選べるような状態では無いだろうが、何とかならないだろうか。



「心配せずともお主が生き返るのはお主らのファンタジーの認識に近い世界じゃよ。

お主がやられた熊、あれも魔獣じゃ。

暗くてよく見えなかったろうが、お主の世界の熊とは似て非なる姿をしておる」



「じゃぁ良かったわ」


安堵と同時に納得もする。

そうか、あの熊に殺されたからここに戻って来たのか。


確かにそれなら筋も通る。

だが、一体あの巨体でどうやって音も立てずに近づいたのだろうか?



そこはファンタジーでよくあるスキルといった物のせいだろうか。



「そうじゃな。

まぁ、あの種族全体が持っているわけではないがの。

お主が運悪く、そういったスキルを持った個体に出くわしただけじゃ。

安心せい、平均的な個体であってもお主は逃げきれんかったよ」



(そうやろうけどさ....)


俺の体力と熊の体力、まさに比べるまでもない。


逃げ切れはしなかったろう。


なら、あの場で動かない方が正解だったのだろう。


(俺はこう...いつも大事なとこでテンパって外すよなぁ....焦ってる時ほど慎重に選ばんと、解ってても治らんなぁ)



「そういうわけでもないがの。

あの場に留まっていても、いずれ見つかったじゃろうて。

木の上でも、朝までには必ず見つかったじゃろう。

どっちにしろ、お主の未来は決まっておった」



どう足掻いても詰みだったか。

それはもうどうしようもない。



「そうならぬよう、能力を授けるのじゃよ。

お主が思うこれなら死なない、というものをあまり強すぎない範囲での。

本来なら充分考えて答えてもらうのじゃが....」



言葉が終わるか終わらないかの刹那、地平線まで続く白が、突如崩れ始める。


「い!?」


(どうなってんの!?)



「ほっほっほ、時間じゃな。

ほれ、幾つか言うてみい。

そうでないと、先程の二の舞いじゃぞ。

戦いが多い世界じゃから、そこら辺を加味したほうがいいかものう」



「あ、えっと...」


(いきなりかい!!っち、言うてても仕方ない!!何がいい!?何が!

生き残れるチート、なんか、何か....)



考えている間にも崩壊は迫りもうすぐそこまで来ている。


「ほれほれ、間に合わんぞ!!」


急かすじいさんはとても楽しそうだ。


こっちはとことん焦っているというのに。

そして先程戒めようとした教訓を、またしても俺は破ることになる。


「えっと!バフ!

バフとデバフつよいの、沢山!!

あと!必殺技みたいな、派手な威力の技とか色々と....」


足元にも亀裂が走り


「向こうの全部の言語喋れるようになるのも!

使える技とかの一覧とかも見れる用に....」



ついに自分がいた床が崩れ落ちた。



「後はゆうたやつしっかり余裕持って使えるように体丈夫にして、敵の情報とかも見れるよう、うわっ!!」



「よし、しかと承った!!!」



落ちる先さえみえない暗闇に落ちている最中も、じいさんはずっと楽しそうに笑うだけだった。




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