第1話 continue
俺は、切須川楓、春になり、高校生になってすぐに学校の奴らに距離を置かれる事となる。
緑色の瞳
少し尖った耳
この世にこのような容姿の人間かいるだろうか。恐らく怪奇の視線で俺を見る事になるだろう。
だが、こんな生活はもう慣れた。この手のタイプはもう小学生から続いている。
家に帰ると見慣れた国際メールが届いていた。それをテーブルに置いて部屋に戻る。今日は入学式だった。そのため、皆家にいるなり、外に出るなりしている頃だろう。
「今晩の飯を買いに行くか。」
今は、母親は海外に出張に行っている。父親は三年前に死んでしまった。
2人とも普通の人間だというのに、俺はなんでこんな姿なのだろうか。とつくづく思う。
今は、髪を伸ばしてカラコンをつけていれば、耳と目は隠せる。
しかし母親である切須川由美はこんな姿の俺を深く愛してくれた。皆にお前は人間じゃないといわれても母さんは、
「大丈夫よ楓、あなたは立派な人よ。母さんが保証する。」
そうして、母さんは俺の姿を受け入れてくれた。
親父はというと、
「自分に自信を持てば他人など気にしなくなる。」
と逆に怒られてしまった。
そんなことがあって気にならなくなってきている。
買い物に行くために、家を出た。
この町は都心に近くビルが沢山並んでいて、季節の変わり目などは気温の差異でしかなく自然も少ない。圧倒的な高さから見下ろす建物を見ていると、首が痛くなってくる。
この地域で生まれた俺ではあったが、昔母親の実家に行った事がある。
見渡す限りの木々、それが集まった山々に静かな中に聞こえる川の流れる音がとても心地よかった。
田舎ではあったがそんなところがとても気にいり、毎年お盆と年末帰省するときは一年の大きな楽しみだった。
そんなことを考えていからか自分の目の前の人に気づかずぶつかってしまった。
すいませんと謝ろうとしたが、
「痛てぇ。これは折れたわー、いやマジで。」
「あーあやっちまった。これは慰謝料を払わないといけないな。」
「そうだな...。十万円で許してやるよ。」
「おっ、お前優しいな。よしこいつの顔に免じて十万円で。ほらさっさとはらえよ。」
と三人組の柄の悪そうな男達に謝罪する前にカツアゲの理由をこじつけられ、それを正当化されるまでいってしまった。
ここまでくるとこいつらは初めてではないらしい。一体何人が被害にあったのか。
取り敢えず穏便にこの場を切り抜けるべく説得を試みる。
「いや、あのすいません、俺いまお金持ってなくて財布も家に置いてきちゃったし。」
だがこの人たちには対話など通じないのか自分勝手に話を進める。
「はぁ?嘘つけよ、ポケットに入っているだろう。」
すると、三人は俺の周りを囲みポケットから財布を奪い取った。
「ほーらあった、嘘はいけないよ、嘘は。」
だったら、カツアゲはいいのかよと悪態を付きつつ、財布を取り戻そうと相手の手を掴むと、いい加減我慢の限界なのかさっきのふざけた態度が変わり威圧的になった。
「ああ、うぜぇんだよ離せ。」
ついにキレたのか楓の顔面に向かって拳を振るってきた、しかしその攻撃はむなくしく空を切る。
「はあ?」
間抜けな声をだして惚けた顔をしているところにカウンターを入れる。確かな手応えを感じた時には、もう倒れながら殴られた場所を押さえながらのたうち回っている。落とした財布を拾ってポケットに戻す。
「テメェやりやがったな!!」
「ぶっ殺す!!」
仲間がやられたのをみてあとの二人もこちらにむかってきた。
同時にきたのを軽く避けたのに、又もや驚きを隠せない二人は追撃してくる。
それをまずは拳を下から肘受け止め、背負投げの要領で相手を投げ飛ばす。
もう一人は背を向けているため後ろから襲ってくる、しかしそれを予測し向かってくる敵に対して回し蹴りで横腹を直撃、たまらず吹き飛び地面にたおれこむ。
ふっと、一息つきひとまず気を落ち着ける、集中していたせいか回りのことが見えず街中だというのを忘れていた。
いつの間にか見物客が集まりだして騒ぎになっていた、厄介なことになる前に早々にこの場を離れた方がいいだろう。
そそくさと人の波をかき分け目的地のスーパーの方向へと急ぐ。
「はぁ...、またやっちまった。」
こういうことは何回かあって警察沙汰にはまだなっていないが、それも何回続くか分からない。
でも必ず癖で悪意をもって攻撃されると反撃してしまうそろそろ自重すべきなのではとも思ってしまう。
近くのスーパーで、肉と野菜を買い、帰路についていると。
グサッ
腹に確かな痛みと不思議な感覚に襲われながら俺は倒れた。
血液が大量に流れているのか、目の前の道路が赤く染まっていた。
まだ、春先で気温は低くはないはずなのに体がどんどん冷えていく。
「これが…死ぬって事なのか。」
朦朧とした意識の中で、
「あなたの世界はここから変わる。あなたが世界の調律者となれますよう…。」
そこで途絶えた。
「...きて。起きて。」
何かの幻聴が聞こえる。なぜだ、俺は確かに死んだ筈だ.....。
そうか、いま俺は天に召されようとしているんだ。
では、天使の顔でも拝むとするか、と目を開けるとそこには、顔の隅々まではっきり分かるくらいに、天使の顔が近くにあった。
透き通るような瞳。柔らかな頬。薄い桜色の唇。それらをかたどる小さな丸顔。
めを見張るような、美しさにびっくりしていたが、起きてと言われたら起きねばならない。
沸き上がる男の性を理性で押さえ込み上体を起こした。
「やっと眼が覚めたね、なかなか起きないから心配したよ。」
本人はホットしているようだが。楓はまだ混乱していた。
あの時の傷を確かめてみるべく服をめくり腹を見た。あとは残っているようだが塞がっている。でも刺されたことは間違いないらしい。
見渡すと何処かの部屋のようだった。
置かれている家具などは普段見ているものと変わらないが少し違和感がある。
木造の壁や天井を見ると境目がなく、まるで大きな木をくりぬいてこの空間が作られたかのように見えた。
しかしこの方法が取れるほどの巨木は楓の知っている範囲では存在しない、一体どれぐらいの大きさなのか。
「傷の方はもう大丈夫みたいだね。痕は十日位で消えると思うから安心して。」
「傷のことは分かった、けどきみは誰だ?」
その時、部屋の向かい側のドアが開き何者かが入ってくる。
目の前の美少女とはまた違った美女に見とれたがすぐに印象が変わる。
深緑の目。長く尖った耳。
なんと、自分と似た顔立ちをしていた。
「....その耳は。」
「ああこれか。私はエルフという種族でな、この尖る耳と緑色の髪と目が特徴だ。」
その言葉を聞いたとき楓は無意識のうちにカラコンを外し自分の髪を耳が見せるようにかきあげた。
「それなら、俺はさしずめ、ハーフエルフかな。」
それを見た二人は呆然としていた。
「なんと。これは珍しい、君のいた世界にも何回か同族が遠征をしていたが、子供がいたのか。」
そのエルフの女性は少し考えたあとため息を着いたがすぐに表情を戻した。
「まあ、わからないことをいくら考えても仕方がない。こちらとしては都合がいいからな。自己紹介がまだだな。私はセリゾナ、よろしく。」
「私は、ユキ。君をこの世界に連れてきたのは私。方法はちょっと怖いけどそこのところはあんまり気にしないでくれたら嬉しいかな。これからよろしくね。」
「俺は、切須川楓。え~とまあよろしくお願いします。」