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(うまくいった、うまくいった!)
谷崎はそう、直感的に感じて内心では小躍りするほど浮かれていた。
しかし実際後ろから追って来る気配はなかったし、理屈で行けばアレから逃れられる『フォーク』なんていないはずだ。
この方法はとても効果的な『フォーク』対策になるはずだ、こうすれば例え『ケーキ』であろうとも追って来る『フォーク』っから逃れられ......
「はい、捕まえた」
「ぴぎゃッ!?」
薄暗がりから伸びた手に肩を捕まれ、谷崎は悲鳴を上げてしまった。
恐る恐る見上げると、そこには呆れたような男の顔がある。
「......全く、舌の根も乾いていないうちに撒くとかばかじゃねえの、んな事するから信用失ってめんどくさい干渉受けるようになるんだよ。あとウチの『フォーク』と言えどキレるとモラルがはじけ飛ぶ奴は結構いるから、怒らせるのは得策じゃねえな......」
ぼそぼそとした口調はさっき聞いた気がする、......って、ああ、思い出した。
(コイツ帰るときにつけられた『フォーク』の......)
「自己紹介前にお前が消えたから今言うけど、おれ、壬生佑一郎。局長は歳の離れた姉さん。大二。んで、『フォーク』」
壬生は谷崎を無感動な目で見下ろした。
谷崎は咎められても少し罰の悪い思いをしただけだった。
反省のない谷崎を見て、壬生は少し不機嫌そうな声を出す。
「全く、チョコの臭いを追わなきゃならんかったし道中グロ画が広がってるし、まじでお前一回は『フォーク』に腕の一本くらい食われてみればいいと思うぞ」
ぶつぶつ文句を言う壬生に、谷崎は驚いた顔を向ける。
「え? アレそんなに言うほどグロい画でした? ちょっと赤くていい匂いなだけでしょう?」
「......アレお前がやったのか!!!!」
壬生は呆れたような非難するような、そんな声色の大声を出す。
「......どうなったか見たか?」
「いいえ?」
「......無知って怖いな」
「?」
首を傾げる谷崎の服の襟首を捕まえて、壬生はくるりと方向転換。
「さっきの所に戻るぞ、まだ掃除されていないはずだ」
「?」
「......お前みたいな奴は見ないと分からんだろ」
壬生は痩せている体型の割に強い腕力で、同じ身長くらいの谷崎を無理矢理引っ張り歩き出した。




