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 講演会もようやく終わり、スタッフ達の片付けも済んだ。

「それじゃあみんな気をつけてね~」

 局長が号令をかけると、スタッフ達が散っていく。

「『ケーキ』は集団になって帰ろうね、『フォーク』も気を引き締めて行こうね、最近『フォーク』狩りの過激な奴出てるから」

 谷崎も注意を呼びかけながらスタッフ達を見送る。

「過激派やり過ぎだよね~」

「なんか『フォーク』の体を引き裂いたり、映画かなんかって感じ......嫌だねえ」

 『ケーキ』のスタッフ達がこそこそ話しているのを見て、谷崎は少しほっこりした。

 『フォーク』への過激な迫害を、いい気味だ、ではなく非難する考え方が、迫害を解消する近道だから。

(実際『フォーク』なんてそんな怖いものじゃないんだし)

「じゃあ局長、僕も上がります」

 谷崎も帰ろうとしたら、事務室の中から女性が飛び出してきた。

「待って潤くん、送っていくよ!」

「......局長」

 飛び出してきた女性は、このNPO法人「ショーケース」の創設者で、谷崎の母親の友人である。因みに彼女は『ケーキ』でもなく『フォーク』でもない『その他』である。

 うっかり暗くした顔に笑顔を浮かべて谷崎は安心させる様に言う。

「大丈夫ですよ、表通り行きますし」

「最近の凶悪な『フォーク』は表通りにも狩りに出るって言うよ!」

(ならさっき送り出した『ケーキ』の団体に行くだろ)

 心の中で呟いて、谷崎は笑顔で代案を示す。

「......じゃあ、ウチの警備員さん呼びましょうか」

「谷崎くん、丸木戸くん以外をつけたらすぐに撒いちゃうでしょ!」

 そう言えば、丸木戸聡規は今日非番だった事を谷崎は思い出した。

「......じゃあ、今回は撒かないようにしますから」

 この人は僕を子供扱いしてるのか男扱いしてるのか、分からないような事を言うから嫌いだ。手をつなぐのを強制されたかと思えば、恋人に見えるかどうかって言う。終わり頃とは言え思春期の男子としては一緒に帰りたいと思えない人だ! 谷崎はそう思って足掻いた。

「ダーメ。私が準備できるまで待ってなさい!」

(うぜぇ......)

 なんか楽しそうな局長に、谷崎が心の中で頭を抱えた。その時。

「......なぁ、あまり遅くなると危険じゃねえのか?」

 局長が出てきた部屋から男が出てきて、ぼそっと言った。

「ユーイチ! あんた準備終わったの!?」

「『フォーク』で男で見なり気にしない奴の準備ってなんだよ。むしろそっちの準備待ちだろ、いつも」

 男と局長は対等な口調で言い合っている。妙なことに局長は谷崎の母親の友人であるので、谷崎とは二廻りも年上だが、この男は谷崎と同年代に見える。

 男━━ユーイチ、だったか━━は嵩張らないコートを羽織ってポケットから出した手袋を嵌めて、それで準備は終わったらしい。

「今回は撒かないって言ってんだし、遅くなると危険な『フォーク』の出現率も上がる。谷崎クンは家近くて歩きで行けんだろ、おれが見張って行った方がマシ」

「そう、かな......」

 よく分からないが、どうやらこの男がついて行ってくれるらしい。

(まぁ、今日は撒かずに置いていけばいいや)

 そう考えた谷崎は、男と同時に建物を出た。

「......気をつけてね~」

(ちょっと試したいこともあるし、今日も一人で帰ろう)

 考えながら、彼は局長の声を背中に受け、深夜の街に出た。



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