十四
丸木戸聡規が目を開けると、コンクリ打ちっぱなしの天井が見えた。
窓を見ると鉄格子。布団の下から床の硬さ。
(......あー、俺留置場で一泊しているんだっけ)
ぼんやり考えて身を起こし、取り出した着替えは白黒の縞模様。
着替えて正座しながら待つと、廊下を渡って来た看守が独房の鍵を開けてくれるから大人しく、言われる前に廊下に出る。
連れていかれる先は食堂。大人しく出てきたプレートを受け取り、丼や皿を載せていく。
料理を集めたら食卓に向かい、椅子に座って食事を開始。
丼の中のものを口に入れるとーー甘い。
(......? 何だコレ)
不思議に思って目を落とす。自分の食べた物を見る。
丼の中には、どこかで見たことがあるような、人の指が数本入っていた。
(!?)
箸を取り落としたが体が固まり拾えない。頭の中で勝手に自問自答が始まる。
自分は一年ほど前から味覚を失っていなかったか?
いや、通称『おやつ』だけは味わえる。
じゃあその『おやつ』とは何だった?
それは......
自分の目玉がゆっくり動いた。主菜の載った皿を見る。
そこに載っていたモノは......
『はろーさとちゃん。僕、美味しい?』
「うああああああっ!!!???」
叫びながら身を起こすと、実家から持ってきた扇風機が目に入った。
アパートの自宅、敷きっぱなしの煎餅布団の上。
どこを見たって鉄格子も看守も、人の頭が載った皿もない。着ている服は無地のTシャツ。びっしょりと汗に濡れてはいるが、囚人服ではないことが確かだ。
「夢か......」
そう口に出して自分に言い聞かせ、暴れる心臓を宥めるために深呼吸。5,6回程繰り返し、ようやく立ち上がれる様になった。
あんな夢を見たのは、間違いなく昨日の出来事の影響だ。
扇風機の風に当たりながら、丸木戸は昨日の惨劇を思い出していた。




