13
「おばちゃん! なんでさとちゃん辞めたの!?」
「『おばちゃん』って呼ぶの止めなさいって言ってるでしょ!」
局長室の扉を蹴破る勢いで入室した谷崎を、局長は大声で制した。
「......壬生の綺麗なお姉さん、なんで丸木戸君が辞めたのか、知っていますか?」
言い直すと壬生局長はすんなり答えた。
「辞表には『一身上の理由』って書いてあるわ。詳しいことは、よく分からない......講演会に行っていた、留守中に何か起きたみたいね」
情報量の少ない答えに、谷崎は机を力いっぱい叩いた。
「一身上の理由って何! 何でも知ってる幼なじみとして言いますけどね、さとちゃんの親御さんはピンピンしていますよ! 家業も何もないサラリーマンの家だし、そもそもさとちゃんは大学ろくろく通学せずに辞めてから、実家とほぼ絶縁状態で、一身上の理由ってさとちゃんを辞めさせるためのテキトーな理由にしか見えません! 何が起こって辞めたのかって、一番重要な事でしょう! 理由を誰かに報告させるか記録を見せるか、どっちかしないと僕ァ『フォーク』の詰め所で腕立て伏せして汗かいてやりますよ!?」
「何それよく分からない事をするよね潤くんって! 一身上の理由なんて親御さんの事情以外にもあるでしょう! いい加減丸木戸君離れしなさい!」
「さとちゃん離れしないのと、元職員の辞職理由を追求するのは別のこと! 『ショーケース』辞めた『フォーク』なんて社会復帰出来なくなるなんて誰でも分かることだし、現代日本の馬車馬教育を受けてきた、現代日本で育った人間だ、贅沢言えない状況の人間が、過労死することはあっても仕事をやめるなんて選択肢ない! ......それとも、まさかまだ『フォーク』への偏見が取っ払えてないんですか? 人喰いの危険な『フォーク』なんて、弟以外の『フォーク』なんて」
局長が振りかぶるような動作をしたのを見た谷崎が反射的に首を竦めると、頭上を何かが通りすぎて背後で何かにぶつかりガシャン、と鳴った。恐らく机上の文鎮を投げたのだろう。何にぶつかったのかは分からない。後ろを向いて確認しようとして、追撃を喰らっちゃ堪らない。
そのまま、両者は机を挟んで睨み合った。
「......」
「......」
「............」
「............」
「......あの、それについては、アタシが説明出来る......スよ」
「!?」
突然入ってきた『ケーキ』の少女に、谷崎が驚いて飛びすさって、睨み合いは局長の勝ちになった。
「あら、斉藤ちゃん。教えてくれる?」
局長は少女に向き直る。




