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オーパーツは眠らない  作者: 兎和乃 ヲワン
第2章.シャイン騒乱編
9/42

9.芸術国家シャイン その1

「まずは自己紹介だね」


 言葉に困ったリゾーは気が付くとそう言っていた。隣の自分より大きい黒い石像は怪訝な顔で見返してきた。

 リゾー達は山頂にいた。さっきはさあ、出発だ。などと勢い付いたが、その前に確認したい事があった。


「私に紹介する自己はない。名前もさっきお前が付けたばかりだろうに」

「でも、知ってる事はそれだけじゃないんだろ」


 エモはああ、と納得した顔で口を開き


「[ルール]についてか?」


 鉄斧をかみ砕いた犬歯を見せた。


 エモの話によると[ルール]とはエモ自身を縛る決まりのことで、三つあるという。


 ルール1.命令を遂行せよ。

 ルール2.自己を保護せよ。

 ルール3.製作者を保護せよ。


 この決まりはエモがエモであるために必要で何があっても破れないものらしい。


「ルール3はお前の事だな」

「?……守ってくれるの?」

「ルール1と2に反しない限り、でな」

「なんだよ。僕は後回しか」

「お前のせいだぞ。本来ルール1.と3.は逆なはずだ」


エモは恐らくヴィクトリエへ行く道中合う大人の誰よりも強いだろう。勿論これは生まれて初めて外出するリゾーの希望的観測という奴なのだが、少なくとも自分より強くて大きくて硬い彼女が守ってくれるならとかなり期待したのだが、命令第一らしい。だがそもそも、


「命令って?」

「? お前の命令だが?」

「ジャンヌの無念を晴らすこと?」


リゾーは顎を黒くてよく滑る指で押し上げられた。あの深黒の眼がリゾーの目を覗き込んだ。


「た、確かに言ったけど、それは君を彫る前だ。君はまだのっぺらぼうだったじゃないか」

「まだ理解してないな。お前私を人間だと思っているだろう」


人間じゃない? 人間じゃないって、何だ? リゾーはエモの眼を見返した。縦に細い毒々しい黄色の瞳はさらにその輪を細く歪ませた。その眼は怒っているようでもあり、悲しんでいるようでもあった。


「人間……だろう?」

「石で出来た人間がいるか?」

「分からないよ。僕は絵本の中しか知らないから」

「……」


エモの口が僅かに開こうとして、顔をしかめた。リゾーの顎から指が離れる。視線を下げると右手首を左手で抑えていた。


「ど、どうした?」

「時間だ。行くぞ」


それだけ言うとエモはもう話すことはないとばかりに背を向けて山を降りて行ってしまった。エモの黒い背中が遠ざかって行く。一瞬、エモの真っ赤な鎖模様が


 ズルリ


 と動いたような気がした。


 リゾー達は傾斜のきつい坂を降りていた。ついさっきまでリゾー達の眼下を占めていた町並みは山を五百メートルも下ると見えなくなった。代わりに背の高い木々がリゾー達の視界を覆っている。不規則に生えている木々はどれもこれも真緑で初めて外出したリゾーに命の瑞々しさを感じさせる。

 リゾーは服の切れ端で左腕を押さえた。切れ端は乾いた血で茶色く変色している。

 リゾーは怪我と空腹のせいで青くなった顔を空に向けた。彼の灰色の目には木の葉の隙間から白いものが空をゆっくりと流れていくのが見えた。それに手を伸ばす。届かない。知ってはいたが、雲というのはやはり掴めないものらしい。そうこうしているうちにやたらに眩しい光の玉、太陽とやらが登ってきていた。

 急に太陽が大きく動いた。続いて下から持ち上げられるような感覚。そして、衝撃。


「痛ッ、おい! 跳ぶなよ。ルール3はどうしたんだ」

「ルール3.製作者を保護。その左腕の損傷は私が彫り起こされる前のものだ。故にルール3は適用されない。そして、今の跳躍によるダメージ程度ではルール3には違反しない」


 エモが前を向いたまま役場のない声でそう答えた。

 リゾーはエモの肩の上で吠えた。


「適用されないの!? こんなに痛いのに!?」

「ルールは厳格に守らなければ意味がない」


 あんまりな扱いだ。僕の事を製作者とか言う癖に僕の痛みには関心がないらしい。というより、発掘現場で見たエモとは余りに様子が違う。まるで別人だ。今だって前を向いたまま白銀の長髪を揺らしている。その表変ぶりがリゾーに居心地の悪さを与えていた。

 何かに急かされるように口を突いて出たのは


「は、肌つるつるしてるね」


 [ズレた]お世辞だった。しかも辛いことにエモは無反応だ。素直にさっきとまるで別人だ、と言えば良かった。余計に居心地が悪くなった。

 リゾーは身体を傾けて顔を覗いて見た。左目の上で分けられた髪がたなびいている。柔らかそうな曲線を描く鼻が陽の光を強く返し、目元が見えない。更に首を傾けると、縦長の黄色と目が合った。


「石像だからな」


 リゾーは面食らった。適当な事を言うと無視されるのかと思っていたのだが。エモという石像の事がまだよく分からない。こいつは今何を考えているのだろう。人間じゃないって何だろう。


「……」


 会話が終わってしまった。


 太陽がリゾーの頭上まで来た頃、急に山の傾斜が緩くなった。それから数分も歩くと今度は背の高い木が無くなり、草や花が目立つ様になった。


「森を抜けた……」


 リゾーは嬉しそうに声を上げた。


「街が見えない……」


 エモは片手を目の上にやった。毒々しい真黄色の瞳は何処まで遠くを見渡せるのだろう。

 彼らが山の上で見た建物は見えない。見えているのは積み上げられたレンガの壁だけだ。


「多分、あの壁、何処かに入り口があるんじゃないか……」

「よし、跳躍するか」


 リゾーが顎に手を当てて思考していると、エモが一気に加速した。急な加速でリゾーが後ろに仰け反る。周りの低い木々から鳥が一斉に羽ばたいた。

 エモは一瞬の内にレンガの壁目前まで移動した。そして、彼女は地を蹴り、中を舞う。空高く上って行くリゾーの視界は山で見たものより遙かに巨大に思える建物群と無数の人間で一杯になった。うわあ、と声を上げる。

 硬そうな地面に小さな凹みを作ってエモは着地した。落下と共にリゾーの全身に痛みが走った。痛みに悶えていたリゾーは自分達が何者かに囲まれているのに気が付いた。


「何処から湧いて出やがった!」

「敵か……!」

「何処の国の人間だッ! 武器を捨てろッ!」


 殺気だったその大人達は皆リゾーを睨んでいた。

 リゾー達を取り囲んでいる人達の服装は珍妙だ。彼らは草を体中に巻いており、その手に持っている銃は緑色に塗られていた。そう銃だ。あの遺跡で仮面の男達が持っていたそれだ。とても恐ろしいものだ。


「武器を捨てろと言っているのが分からんのかぁ!!」


 リゾー達を取り囲んだ人間の一人が叫ぶと同時に発砲する。弾はエモの足下を穿った。硬い地面には小さな弾痕が残り、遺跡でリゾーが見た煙が一筋空へ昇った。


「障害を確認。脅威度:低」


 エモの言葉に感情は篭ってない。これは脅しでも警告でもなく、決まりだから仕方なく喋っているという風に見えた。

 言い終えると、エモはリゾーを下ろさず、低い姿勢からゆっくりと立ち上がった。首を回してエモがその寧猛な眼で無感動に見渡した。


「……ッ! その小僧が腰に付けている[それ]を捨てろと言ってるんだ!」


 取り囲んでいる内の一人が上ずった妙に高い声で叫んだ。他の大人達は口々に何か抗議している。

 エモは周囲を観察し終えたのか、高い声で叫んだ男へ再度首を向けた。そして予想通りこんなことを口走るのだ。


「ルール2.自己を保護。ルール3.製作者を保護。ルール尊守のため障害を排除」


 リゾーはエモの肩から飛び降り、腰に挿していた彫刻刀を地面に放った。衣服を破き、その一部で左腕を縛り直す。白かった囚人服はじわりと赤く染まった。

リゾーは


「……エモ! 抵抗しないでくれ。僕はあんなので撃たれたら穴が開くよ」


 君は大丈夫だろーけど、と付け加えた。

分かっているのかいないのか、エモは仏頂面のまま拳を開いた。すぐにリゾー達を囲んだ珍妙な服装の人達は彫刻刀を蹴り飛ばし、複数の銃口をリゾー達の頭に寄せた。

 すぐ近くまで来た大人の顔を見てリゾーは変だと思った。この人達は仮面なんてしていないのに、まるで仮面でもしている様に皆同じ表情をしている……。

 珍妙な服装の人達の内、二人がそれぞれエモとリゾーの身体を調べだした。エモに触れた男は訝しげな表情をしたが、何か追求してくる事はなかった。

リゾーは腰に入れていた絵本を取り上げられてしまった。抵抗しなかったのに随分な扱いだ。

 突如、リゾー達を囲んでいた彼らが二人を残して一列に並びだした。


「何事だ! 飯時だぞッ!」


 大きな建物群の前に佇む緑のテントから初老の男が出てきた。その男は両足を真っ直ぐ伸ばしたまま歩いてリゾー達の所までやってきた。両腕はずっと脇を締めて、ピッタリと体にくっついていた。その様子はさながら絵本に登場する兵隊がやっていた[行進]のようでリゾーは、本当にココは外なんだなぁ、と場違いな事を考えていた。

 初老の男はリゾー達の一メートル手前で行進を止め、敬礼をした。


「……シャイン後衛基地所属ル・バルカスである!」


 初老の男-ル・バルカス-は白髪の頭から手を離した。


「……何か事情があってココへ辿り着いた事だろう。我々はそれを聞かずに通す訳にはいかん……しかし、まずは……」


 バルカスは両足の踵をくっつけたままリゾーに目を合わせた。


「お前達! 子供が怪我をしているというのに治療もせず、事もあろうか銃を向けるとはどういう事だ!!」


 バルカスと名乗った男はリゾー達に銃を向けていた珍妙な服装の人達を一喝した。さらに、バルカスは彼らにこけた顎で何かを指示した。

 一分もしない内に救急箱を持って珍妙な服装の人達は帰ってきた。バルカスはその救急箱を受け取り、地面に座ってリゾーの左手を介抱し始めた。血で汚れた衣服の切れ端を取って、ガラス瓶に入った消毒液で消毒する。

 彼の左手は小さな穴がいくつも空いておりリゾー達を囲んでいた人やバルカスの表情を驚愕の色に染めた。救急箱を持ってきた人に至っては左手を押さえてうずくまった。目を反らす者もいた。

 一方、リゾーは何かマズイことをしたのかと冷や冷やしていた。


「痛ッ!!」


 左腕の上の方に液体が掛かり、リゾーは声を上げた。じわりと痛む。バルカスは無言でリゾーの口に木の板を突っ込んだ。何故、口に木片なんかを突っ込まれなければならないのか、突っ込むにしても何故木なのか。

 ここで珍妙な服装の人達が治療に参加し始めた。彼の体は擦り傷だらけであり、何より頭のコブから血が出ていたのだ。リゾーは治療とはこんなに痛いものだったかと見張りに腕を折られた時のことを思い出した。そう言えば痛かった気がする。

 しばらくして、全ての治療が完了し、リゾー達はテントの脇にあるベンチに案内された。

 嗅いだことない匂いがリゾーの鼻を突く。リゾーが見てみるとテーブルの上に[料理]と思しき食べ物が沢山乗っていた。というのもリゾーはまともな食事など口にしたことはない遺跡で出されていたものは全て固形の保存食とかいうほとんど味のしないものだ。[料理]など絵本以外では見るのも初めてだ。リゾーは感動していた。


「で、君達は何処から来たのかね?」


 そう質問したのはバルカスだ。リゾーとエモを挟んで、木で出来たテーブルの向かい側に座っている。

 リゾーはベンチに座った。リゾーは左腕と頭に大きな包帯とガーゼを巻いている。


「ん? 山からだけど」


 リゾーは[料理]を貪りながら答えた。


「…………質問を間違えた。どういう名前の国から来たのだね?」


 バルカスは腕を組み直して再度質問した。


「えっと……」

「…………フゥ」


 バルカスは一端、頭を抱えてから元の姿勢に戻って、ベンチに座り直した。

 今彼らの周りには先ほどリゾー達を取り囲んでいた_バルカス曰く、部下_が黙々と食事をしている。部下達はいつまでも要領を得ない問答に嫌気がさしたのか、随分前に食事を再開してしまった。そんな中バルカスは律儀に何も口にせず、尋問を続けていた。


「……バルカスさん。もういいんじゃないですか。自分の国も分からないまま飛び出してきたって事で……」


 部下の一人が食事の手を止めて、そう言った。


「バカもん! 生まれた国が分からんという事があるか……それに、怪我をした上、突然空から降ってきたという事も不可解だ」

「何かの見間違えですよぉ~」


 適当な部下から目を離したバルカスはテーブルの隅に置かれた四角い大きな時計を見た。時計は午後1時を指していた。


「……残りの休憩時間も少ない。さすがにもう飯を食おう」

「あッそうだ。バルカスさんさっき言い忘れたんですけど歩く度にいちいち[行進]するの辞めた方がいいですよ。時間の無駄ですし……後、[行進]の仕方も間違ってました」

「そうかそうか。よく言ってくれた…………褒美として、お前にはエモくん達を前衛基地まで連れていく義務をくれてやろう」

「えー……」


 リゾーは驚いて手を止めた。


「そうだ。これは返しておこう」


 そう言ってバルカスはリゾーの彫刻刀を取り出した。


「……! けど、これは武器だからって!」

「これは武器じゃない……新たな芸術を作るための物だ。この[芸術国家]が人からそんな物を奪える訳がない」

「芸術国家?」

「……フッ」


 バルカスは口端を釣り上げて彫刻刀をリゾーに渡した。リゾーは受け取った彫刻刀の目玉がバレない内にすばやく腰に挿した。ついでに絵本も返して貰った。

 しばらくして休憩時間が終わり、バルカスの部下達が交代する。同時に、さっきの適当な部下はリゾー達を連れていく。

 人より背の高い白い網の壁、その前に立つ門番に事情を話し、特別に開けて貰う。今度こそ尖った建物の白い町並みが彼らを迎えた。


「おお」

「……白」


 リゾーとエモがそれぞれ驚嘆する。


「ココは芸術の国だからなぁ~。芸術って言ったらやっぱ白だろ」

「そうなの?」


 適当な部下は一メートルもある長い銃を片手に持ち、後ろ歩きでおどけた。


「うお……あれ……? 何だろう?」

「……色々置いてあるな」

「きっと食事係りだ! 色々あるってことは選べるのかな? さっき食べ損ねたし……何か貰ってこよう!」


 リゾーは初めて見る街並に興味心身で適当な部下の言っている事はほとんど耳に入っていなかった。リゾーは、はしゃいで喋り掛けるが、エモは前を向いて真っ直ぐ進むだけで答えてはくれなかった。


「あれは店だ。飯なら買ってやる。貰えないからな?」

「ああそうか……ココは外なんだった」


 適当な部下は白いモチモチした塊を買ってきた。食べ物らしい。リゾー達は最初、食えるものなのかと疑ったが、食い始めると止まらなくなった。素朴で単純な味がリゾーの口に合ったのだ。エモは一口で食い終えると仏頂面に戻った。

 リゾー達の歩く道は丸くなった鉱石のタイルで色はやはり白だった。その道は人が何人も行き交っていても大手を振って歩けるほどの大通りで、その煌びやかな様は牢屋暮らしをしていたリゾーの目には眩しかった。


「この通りは治安が良くて~…………っておいおい、聞いてないのかよ…………よし……じゃあ! ……この国の名所に連れてってやろう。そうすればお前達もこの国の良さが分かるだろうしな……バルカスさんには内緒だぞ」


 楽し気にそう言うと、適当な部下は大通りを外れた。彼は建物と建物の間にある狭い隙間を通り比較的狭い路地に出た。路肩には看板にBARと書かれた建物が複数あった。


「ココは路地裏さ……酒場と怪しい店でいっぱいだ。でもいい店を知ってりゃぼったくられる事は無いぜ」

「……怪しい店って?」


 適当な部下が耳打ちしてきたので、リゾーは若干警戒しつつ質問した。


「非合法に……って言っても分からんか……まあとにかく怪しい薬だとかどっから出てきたんだよ! っていう商品とか売ってるとこもあるのさ」


 適当な部下は何も書かれていない看板を見ながらそう言った。リゾーは顎に手を添えて聞いていた。

 リゾーがふと隣を見ると、エモは両腕を頭の後ろで組み、空を見上げていた。曇りつつある晴れの空を睨むエモは不満そうだ、とリゾーは思った。


「名所ってココの事なのか?」

「え……ああいや違う。違う。ココは名所に行くための近道でだな……でもココらも良いとこだぜぇ」


 エモが上を向いたまま平坦な声で疑問を口にすると適当な部下は慌てて大げさに手を動かし、表情を忙しく変えた。リゾーは吹きそうになったので顔を反らした。


「オホンッ……え~では改めて、この国の良い所を説明しながら名所に連れてってやろう」

「説明なんてあったっけ?」


 適当な部下はリゾー達に合わせたペースで歩きつつ話し始めた。しばらく同じような風景が続く。


「この国はシャインという名前でな……[芸術国家]を自称している」


 適当な部下は両手を広げてすかして見せた。

 路地裏の突き当たりの壁は白いペンキが剥がれかけている。


「というのも……数十年前まではこの国は芸術なんて興味なかったからさ」


 彼らは突き当たりを右に曲がった。適当な部下は壁のペンキの剥がれた所を少し引っ張った。ベリっと大きく剥がれた。


「……けど……戦争があって、力とかそういうものしか無かった国だからこそ……今まで地下に眠っていた芸術品を誇りにしようっていうことになったんだ」


 手に持った白いペンキの屑を優し気な目で見て適当な部下がそう言った。しかし、リゾーにはその目よりも気になることがあった。


「地下……に眠っていた?」


 リゾーは足を止めた。見開いた灰の目で前を歩き続ける適当な部下を見る。


「……最初は売り飛ばしてたんだけどな」


 冗談にじみた声調で言った適当な部下は苦笑いした。そんな表情とは裏腹に苦々しく手を握るのをリゾーはしっかりと見ていた。


「おッ……着いたぞ。この隙間を抜ければこの国一番の名所だ」


 適当な部下が指差す先には建物の間の狭い隙間があった。


「まあさっきより狭いけど我慢してくれぇ」


 そう言った部下は既にその隙間に身をねじ込んでいた。リゾー達はざらざらした建物の壁に体を挟まれながら隙間を進む。途中、エモが配水管に引っかかり、リゾーは壁に頭をぶつけた。

 近道に入る時よりも苦労をして、ようやく隙間を抜けた。

 そこは遠くまで見渡せる広大な広場だった。そこら中で人が歩き周り、中央にある大きな噴水では人が水遊びをしていた。


「見ろ! あれがこの国一番の名所……ファミア美術館だ」


 適当な部下が指を指した。その遙か先には見上げる程巨大な一本の塔があった。その先端はやはり鋭利に尖っている。


「どうだお前等……」


 適当な部下が後ろを振り向く。


「……あれ?」


 が、そこにリゾー達はいなかった。



 次回 芸術国家シャイン その2

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