30. 造られた者達
リゾーはあまりの事に反応出来ずにいた。今は昼間だろうか。太陽の光が全く入ってこない鍾乳洞の中では分からない。エモとの会話中にいきなり襲ってきた何か、鍾乳洞の暗がりに紛れ、エモをぶっ飛ばして昏倒させた何か、その正体は自らをコロナと名乗る小さい女の子だった。
摩擦が全く無さそうな天井からいくつもの太い柱の様なトゲが伸びていた。
鎖の拘束によって赤い光に照らされた地面をエモの黒く長い足が踏みしめる。
リゾーの左手首からトゲが引き抜かれ濡れた地面に血を一滴零した。
リゾーは怯えていた。何だ!? こいつ、身体中に白い鎖模様があるぞ。色は違うがエモと同じ鎖模様だ。エモと同じ金属の身体で、恐らくスピードもエモと同じかそれ以上だ。エモと同じ存在だ。コロナは僕じゃない誰かが彫った別の石像だ!
「すごいね。凄いね。これならくっきり私が見えるね。私のスリーサイズまで分かっちゃう?」
コロナは尚も喋り続けた。半分以上意味の無い言葉だった。
「ああ、これでぶっ飛ばしてやれる」
「んー? ぶっ飛ばす? ごめん、ちょっとよく分からないなぁ。ぶっ飛ばす。私を貴方が?」
コロナは耳に片手を当てて分からないという仕草をした。エモは既に拳を構えている。
こいつ惚けている。自分の状況が分からないのか?
「私より遅いのに、その上ルール1の違反による拘束を受けながら勝てるとでも?」
コロナが消える様なスピードで湿った地面を物ともせずに駆け、エモに手刀を刺した。その動きはリゾーが思っていたよりずっと速かった。だが、
「Raッ!?」
エモには通じない。コロナの手刀を片手で掴み、掴んだその手でそのまま顔を殴った。
「私のルール1は目的の遂行だ。製作者の保護はルール3」
「へぇ〜、成る程。鎖の拘束の強さはルールの順位によるもの。ルール3なら違反しても拘束は緩いからね?」
「ああ、そうだ。そして、貴様はこのまま握った手の熱だけで焼き潰す」
「なにそれ楽しい!」
コロナは笑っている。エモの左手に利き手毎顔面を掴まれながら手の中で嗤っている。エモの鋭い指先がコロナのこめかみに食い込んだ。
リゾーは思った。追い詰められてる癖にふざけた奴だ。エモとは大違いだな。
「ルール1:命令を遂行せよ。貴様が誰だろうと関係ない」
「ん? 死ぬ前にお話し? いいよ! お話久しぶり!」
「ルール2:自己を保護せよ」
「それは叶わないね?」
「ルール3:製作者を保護せよ」
「それもダメだね?」
「いいや、貴様をぶっ飛ばして全て厳守する」
「Ra?」
鼻を鳴らしたコロナがエモの脇腹を蹴った。バランスを崩したエモの左腕に右膝でもう一撃。それでもエモはコロナを離さなかった。
「逃すか!」
しかし、コロナの狙いは逃げる事ではなかった。蹴った勢いのままエモの左腕に右膝を乗せて両足でエモの左腕と頭を挟んだ。エモの身体が後ろへ倒れていく。
エモの頭が地面に叩きつけられる。エモは手を離してしまった。
リゾーは頭を抱えた。非常にヤバイ。コイツ、エモよりも闘い慣れている。
コロナはエモの上に馬乗りになって両手の手刀を構えた。素早い動きだった。
「RaRaRaRaRaRaRaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
手刀の連打。コロナの雄叫びは金属を引っ掻いた様な不快音だった。耳を塞いでいなければリゾーの耳はやられていただろう。
今出来ることはない。エモ、早く起き上がってそいつをブチのめしてくれ。
エモの身体が残像が見える様な速さで何度も跳ねる。
馬乗りになっているコロナの背中にエモの膝が命中した。そうだ! 足は自由だ。もっと膝を叩き込むんだ。
「Raaaaaaaaaaaaaaa!」
ダメだ。効いていない。コロナの手刀は止まらない。
エモは今度は両膝を食らわせた。そして、コロナの背中に弾かれた両足を勢いを殺さず思いっ切り地面に叩きつけた。エモとコロナが跳んだ。
エモは空中でコロナの両腕を掴み、頭突きをした。コロナが怯んだ隙に
「Aaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
エモは顔面を蹴り飛ばした。難なく着地したエモの顔色は良くない。自分より相手の実力の方が上だと悟ったのだ。リゾーも分かっている。コイツには勝てない。細い傷が沢山付いた顔がリゾーの方を向いた。
「強い」
「うん、思ったよりヤバすぎる相手だ! これなら暗闇に隠れなくっても全然問題ないじゃないか」
「ああ、だから協力しろ。二人でその彫刻刀を叩き込むんだ」
「君の全開速度で動かれたら僕は左腕と身体が引き千切れるよ」
「クソ、どうすれば」
エモの全身を這い回る鎖模様が擦る音が変わった。リゾーに見えないくらい速く回転していた鎖模様が赤い輪の一個一個まで見える程遅くなっていた。赤い光が徐々に明るさを失っていく。
「もう鎖の拘束が終わる。明かりが無くなったら今度こそ終わりだ! ここに居ても勝ち目がない。逃げようエモ」
「……だが、何処から逃げるんだ。奴に背中は見せられないぞ!」
コロナは既に立ち上がっている。鎖の光が弱くなった所為でコロナの表情はもう見えない。
「RaRaRa本当に面白いのね貴方達。私から逃げるですって。もし逃げられたら何でも教えてあげるよ?」
コロナは歌う様に言う。直立不動で鎖の明かりが消えるのを待つ気だ。
しかし、
「これはチャンスだ」
リゾーは待たない。鎖の明かりが弱くなった時点でコロナは光が消えるのを待つはずだと、慎重で確実を狙う奴だと、リゾーはそう踏んでいた。
明かりが弱くなって、コロナの身体が闇の中に消えていく。それより前にリゾーとエモは走り出した。
消えゆくコロナの驚愕の声が聞こえる。エモがリゾーの首を引っ張って無理やり加速した。リゾーが耐えられる限界まで速度が上がる。
一瞬で距離を詰めたコロナの手刀が迫る。だがもう遅い。既に辿り着いた。
「[口を開けろ]」
リゾーは命令した。エモにではない。エモの下にいる[者]に命令した。
エモの足元に大きな穴が空いた。暗がりで闘いが始まった時既に彫り始めていた[地面の巨大な口裂け顔]が口を開けたのだ。口の中に見えるものは激流の川。
それは鎖の拘束で明かりを灯すより前に作っておいたものだ。エモとコロナが殴り合いを始めた時に既に彫り終えていた[逃げる為の巨大な顔]だ。
これが唯一の脱出路だ。
「地面にッ!?」
エモは地面に開かれた口の歯を掴んで口の中へ飛び込む。遅れて口へ入ったリゾーの首筋のすぐ上をコロナの手刀が撫でていった。
「Ra! 面白かったけど、詰めが甘いのね! 貴方の首は今日で胴体とお別れなの! でも、残念。お別れを言う暇もないのねー!」
落下するリゾーの顔にもう一方の手の手刀が迫る。絶好のタイミングで放たれた手刀。空中のリゾーには回避する事は不可能だ。しかし、
「うるさい奴め。[口を閉じろ]」
地面に空いていた穴が轟音と共に閉じ、コロナの手刀を止めた。
リゾーはチラリと落下する先の激流を見た。ここしかないとはいえ思ったよりも激しいような。
水の中に落ちた。地面下の川だ。素早い川の流れに飲み込まれる。息が出来ない。立てない。しまったそうか、川って立てないのか。リゾーはそう思いながら意識を手放した。
目を醒ます。音が聞こえない。視界がぼんやりとしている。狭い部屋だ。家具は自分が寝ているベッドと机とその上のロウソク台だけ。ドアの小窓には鉄の棒が何本も取り付けられていて何があっても外には出られない様にしてある。牢屋だ。傍らに少女が立っていた。赤い髪を両耳後ろからだけ肩まで伸ばした褐色の少女、ジャンヌが居た。
僕はジャンヌに手を伸ばして。
水をぶっかけられた。
リゾーは口に溜まった水を吐き出した。何度も咽せる。目を開けるとまだ暗がりに居た。しかし、さっきコロナと闘った時よりも明るい。
目覚めた場所は丸く広けた場所だった。地面はその中の半分程しか無く、残りは水溜りになっていた。とても深い水溜まりだ。リゾーにはそれを正しく形容する言葉が思い出せなかった。
いつかエモがぶっ壊した壁の中の村だった場所の水溜りに似ている。その水溜まりの底から光が入ってきてこの空間を明るくしているのだ。
丸く開けた地面と水溜まりの何処にも逃げ場はない。
「起きたかリゾー」
低く落ち着いた声が聞こえた。エモがリゾーの側で屈んでいた。水をぶっ掛けてくれたのはエモらしい。両手に水を汲んでもう一度ぶっ掛けられるすんぜんだった。
「うん、あの後どうなったの?」
「川に飛び降りてから、流されてあの穴から此処へ出た。時間は殆ど立っていない」
リゾーの後ろに絶え間無く水を吐き出す大きな穴があった。そこから出た水がこの場所の水溜りを補強している。
リゾーは状況を理解してひとまず安心したが、すぐに別の問題を思い出した。
「コロナは此処に来るかな」
来るとしたら迎え撃つしかない。ここに逃げ場はないのだから。
「来るだろうな。奴の目的が全く分からんが、逃す気は無さそうだったしな」
「なら仕方ない。コイツを試してみるか」
溜め息を吐いたリゾーは濡れた白い服からローバーに託された物を取り出した。
「銃……おい、貴様全部諦めて自分の頭を撃つつもりか」
エモが凶悪な犬歯を剥き出しにしてリゾーを威嚇する。
リゾーは思った。この思い込みが激しいというか早とちりは何とかならないものか。
「そんな訳あるか。コイツでコロナを撃ち抜くのさ」
「フン、私に効かない物が奴に効くか?」
「そう? じゃあ、効く物だったらどうなる?」
リゾーは銃の真ん中を折る様にして開き、六つある穴の中で一つだけ詰まっていた筒状の弾を摘まみ出す。その筒状の弾の側面に書いてある文字を見せた。
「何て書いてあるんだ?」
「もう忘れたのか? このくらい覚えようよ。[焼夷弾]だよ」
「! 私を溶かしたヤツか」
「正解。あいつがもしエモと同じ存在なら、エモを溶かすこの焼夷弾はコロナにも効く筈だ。多分。きっと。当たれば、だけど」
「何をズレた事やってるんだリゾー! そんな物があるならさっき撃て」
エモがリゾーの肩をガクガクと揺さぶる。
「一発しかないんだ! 一発で倒し切らなくちゃならない。それに僕は一度も銃を撃った事がないんだぞ。外したらどうする? まともに握るのもこれが初めてだし」
使い方は何度も撃たれたから分かるけど。リゾーは嫌な事を思い出しながら言った。
「成る程分かったぞ。つまり、貴様に当てさせればいい訳だな? コロナの奴を押さえ付けて貴様が奴の口に銃口を突っ込んで、ぶっ放すまで黙らせておけばいいんだな?」
口に銃口を突っ込むかはともかく、コロナの身体に押し付けて撃たないと外してしまうかもしれない。リゾーは顎に手を当てて考える。結局エモの負担が大きい。いや、まてよ?
「君がこれを使えばいいんじゃないか?」
「えっ? 私が、銃を?」
キョトンとしたエモに銃を手渡す。エモは両手で受け取ると、銃を折ってまじまじと中を見た。大人より少し大きいくらいの大女がしげしげと銃を観察している。縦に細い黄色の瞳が更に細くなった。
「いや、ダメだ。確かに私が持っていれば奴の口にコイツをぶち込む機会はあるかもしれん。だが、私はこんなの壊さずに持っていられない。雑魚ならともかく奴を相手にして荷物を気にしている余裕はない。やはりこれは貴様が使うべきだ」
エモは急に興味を無くした様に一丁しかない大事な銃を投げて寄越した。半ば予想していたリゾーは特に驚きもせずに両手で難なく受け取った。
「全く……そういうことなら、やっぱりやるしかないか」
リゾーは銃の六つの穴の内、次弾を吐き出す位置に自決様に渡された最期の一発を込め直した。自決ではなく文字通りの一発逆転を狙う為に。
作戦会議が終了してから数分後、リゾー達は自分達が出てきた穴からなるべく離れて潜伏していた。
コロナがここに追ってくるとしたら、何処に通じているか分からない道よりも地面を破壊して川を下ってくると思ったからだ。あの穴を警戒して伏せている。
リゾーは身体の殆どを水の中に沈めて岩にしがみつき顔だけを出す。エモは黒い身体を利用して影になっている場所に潜ませた。
エモは大人しく伏せているようだが、我慢強い方ではない。このままコロナが現れなければルール1:命令の遂行を遅らせていると捉えられて鎖の拘束が始まってしまうかもしれない。もしそうなったら今度の鎖の拘束はルール1によるものなので戦闘は難しくなる。ひょっとしたらコロナはそれを狙っていて既に何処かに潜んでいるのではないかとさえ思えてくる。
疑念が拭えない。リゾーは岩を伝って、川が水溜りに入っていく大きな穴を岩陰からギリギリの角度で覗いた。
穴の中には何も見えない。轟々と吐き出される水が岩の間を降って飛沫を上げているのみだ。もちろん誰もいない。少しづつ角度を増して大きな穴の前に身を晒していくリゾー。何も見えない。何もいない。
リゾーの目に水が跳ねてきた。リゾーは岩を掴んでいた手を離して目元を拭う。目を瞬かせて鬱陶しい水を外へ追い出した。
リゾーは安心して再び大きな穴へと目を向けた。相変わらず何も居ない。川が激流となってリゾーの居る水溜りに注いでいる所にも、岩陰にも、大きな穴の奥にも、いない。
リゾーは考える。エモは作戦通りコロナを抑えられるだろうか。戦闘への慣れとスピードではエモは負けてしまっている。できればこちらが先に発見して拘束し、そのまま決着を付けたかった。しかし、もう仕切り直しは出来ない。ここから逃げる場所がない。なんとか拘束するチャンスを生み出さなくては。
リゾーは周囲を見渡す。彫刻刀で[地面]を彫る手はもう使えない。たぶん二度も同じ手が通用する相手ではない。何を彫ればあの恐ろしいコロナの隙を突く事が出来るだろうか。
水が一滴またリゾーの目元に落ちてきた。
「なんだ、さっきから」
水が目にばかり入ってくる。そう思ったリゾーの頭に肩に数滴、大粒の滴が落ちてきた。
リゾーの全身に鳥肌が立った。腰から彫刻刀を抜きながら可能な限り早く上を見た。
天井の太いトゲの様な柱に足だけでしがみ付いている黒い影が真上にいた。その影のまるで身体の一部みたいに吸い付く黒い服が足先から首元までを覆っている。肩から先の細い腕と首から先の灰色の肌を白い鎖模様が這い回り、その存在の異質さを魅せていた。紅い瞳がこちらを見ていた。
柱から足が離れた。
「ッ!?」
水飛沫を上げながら一切音を立てずに浅瀬に着地した[コロナ]がゆっくりと顔を上げた。
「ハロー、エモちゃんのマスター君? ちょっと聞きたいことがあるんだけど……あれぇ、エモちゃんは何処かなーー?」
「さ、さあね。勝ち目がないんで何処か抜け道でも見つけて逃げたかな? それとも怯えて水溜まりの底で震えてるとか? エ、エモが僕を守るのは……二の次らしいからね」
恐怖で声が上ずっている。リゾーはせめてもの抵抗として左手の彫刻刀をコロナに向けた。
「あー言ってたね。ルール3:製作者の保護って。ふーん。なら貴方は一人で私を待ってたの?」
「そうだよ。き、君を破壊する為にね」
「へぇ、そうなんだ! ちょうどいいわ。エモちゃんと闘えないのは残念だけど。私は貴方の方に興味があるもの」
「嬉しくないな。石像はエモだけで充分」
「あら、ふられちゃった。ていうか、石像って……。無知って怖いのねー」
「……何?」
コロナの垂れ目がリゾーを見ている。アレは明らかに見下している目だ。
「それじゃ、死んでね」
コロナの指先が真っ直ぐ揃って手刀の構えに入った。
「おっと待て。約束、約束を忘れてないか?! もしも逃げられたら何でも話すって約束だ。君が言った事だ」
「あー、それ忘れてたー。でも、結局私に追いつかれた訳だから逃げられてないんじゃないかなーって」
コロナはリゾーに構う事無く近づいてきた。
「くっ」
容赦なくコロナの手がリゾーへと伸びて来る。手刀が振り上げられ、消える様な速さで振り下ろされた。
「なーんて、嘘嘘! それじゃ約束した意味ないもんねー。ちゃんと何でも教えてあげる。何が知りたいのー。スリーサイズ? スリーサイズが知りたいのー?」
コロナの指先がリゾーの首元で止まっていた。
さっきまでの殺気はどこ吹く風、コロナは少女らしい可愛い笑顔でリゾーの顔を覗き込んでくる。
リゾーは冷や汗を掻いていた。生き残った。これで時間が稼げる。しかし、何を聞く。コイツは何を知っている。そうだ。コロナの目的は何だろう。何の為に襲ってきたのか。他は、オーパーツの秘密はどうだ。こいつ自身オーパーツみたいな物だから、少なくとも自分より詳しそうだ。それにしても、スリーサイズってなんだ?
「……それはいい。これから君に質問する」
「いいよ。特別サービスで三つ答えたげる!」
やった! リゾーは僅かの顔を輝かせた。三つ! この会話はエモも聞いている筈。そして、今襲って来ていないという事はエモはコロナに悟られない様に背後を取ろうとしているんだろう。コロナはエモが居ないと信じた様だし、逃げ場が無くて自分より強いコロナと戦うしかない状況だからルール1の違反にもならない。
「それじゃ答えたげるね。私のスリーサイズはぁ」
「第一の質問は」
尚もふざけた態度のコロナを遮って質問をする。相手のペースに呑まれてはいけないのだ。まず、聞くべき事は。
「君はオーパーツについて多分その、知っているだろう?」
「それが第一の質問?」
「いや! 違う」
リゾーはすぐに否定した。三つしかないんだ。はっきりと質問しないと!
「オーパーツとは何なんだ?」
「うん。オーパーツ、言葉の意味は分かる?」
「いや、全く分からない。発掘された物って意味か?」
「ブッブー残念。確かにオーパーツは発掘される物だけど、正確な意味は[場違いな工芸品]。発掘された場所や年代から説明できないほど高度な加工品。でも貴方が聞きたいのは多分、これの事でしょ?」
左手に握られた彫刻刀の刃先が指で弾かれた。たったそれだけでリゾーの手から彫刻刀は捥ぎ取られリゾーの背後の岩に突き刺さった。リゾーは頬に熱いものを感じ、すぐにそれが血だと理解した。
コロナは不気味な笑顔のままだ。
「だからこの場合の正解は、今存在する[全ての技術を超越した遺物]。旧人類が遺した叡智。旧人類が自分達だけがいつまでも勝ち続けられる様にと生み出した武器。本当の名前は、[アルマ・ディー]」
「アルマ・ディー……」
リゾーの空になった左手が震えていた。
次回 31. 最後の一発
どーも、兎和乃です。30話お楽しみ頂けましたでしょうか? 楽しんで頂けましたら兎和乃が喜びます。コロナちゃんの強さが伝わっていたらさらに喜びます。




