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鞠奈ちゃんはドジな子ですが...  作者: 小麦 楓菓
鞠奈ちゃんが奮闘する、章
19/20

ふたご座転校生くん、あらわる。

今日は二話を同時に投稿していますので最新話からこられた方は、一話前からお読みください。

 噂の転校生が来ることになっている今日も、いつもと同じように鞠奈が二年六組の教室へやって来ました。


「おはよー、鞠奈ちゃん。」

「おはよう、琴美ちゃん。」

「はよっす、熊ちゃん。」

「はよっすー、(かける)くん。」


 とまあ、挨拶をされ挨拶を返しという一連の流れもいつも通りです。


 強いて昨日との違いをあげるとするならば、今日は鞄に足を引っかけることなく実砂の元までたどり着けました。

 しかし、いつもいつも転んでいるという訳でもないので別段特別なことでもありませんが。


「おはよ、実砂ぽん。」

「おはよう、鞠奈。今日は何してきたのかしら?」

「今日はねえ、進藤先生とみどり先生がお話してるところにちょっとお邪魔させてもらって、それからゆうちゃんにおすすめの本を教えてもらって、図書室で探してたの。

 まだ見つけられてないから、次行ったときに小野先生に聞いてみる。」


 小野先生というのは図書の先生です。


「本当にいつもと変わらないのね。」


 実砂は『今日転校生が来るのに』と言いたいのでしょう。


「内心では結構ドキドキしてるよ?」

「そう? 感じのいい人だといいわね。」

「そうだねえ。」


 そうこう話しているといつも目黒先生がやってくる頃合いになって、このギリギリの時間に登校してくる村木くんが教室に入って来るとこういいました。


「先生と転校生っぽい人が来てる。」


 一瞬教室中がざわつきましたが、席から離れていた人たちもそれぞれが自分の席に戻り、(またた)く間に静かになりました。


 目黒先生と転校生が教室前に来る頃には、二人分の足音が聞きとれるほどの静けさでした。


 誰かの(つば)を飲む音が聞こえたような気がしたとき、ドアが音を立てて開かれました。


 初めに目に入ったのはいつも通りの目黒先生でしたが、次いでその後ろに立っているらしい人物の制服の端が見え隠れしていました。

 十中八九この人物──村木くんが言っていた『転校生っぽい人』──は転校生でしょう。


 静まり返っている二年六組の生徒たちに苦笑を漏らしながら目黒先生が教壇へ近づいていくにつれ、その後に続く転校生の姿が見えるようになります。


 転校生の姿が見えるようになるのですが、



 ──ん? あれ? んー?



 そうなればなるほど鞠奈の中で何かが引っ掛かります。

 引っ掛かりの正体を突き止めようと転校生をよく見てみるのですが、引っ掛かりの存在感が大きくなりはするものの正体はわかりません。


 しかし案外簡単に答えは出てきました。


「鞠奈、あれって高橋くんじゃない?」



 ──あ......。



 鞠奈は自分の血の気の引く音を聞いた気がしました。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 教室の前についたときにこれ以上ないってくらい緊張してる気がしたけど、中に入ってもシーンとしてた時のほうがやばかった。


 なんでこんなに静かなわけ? 普通転入生が来たらもっと騒ぐだろ?


 なんて考えてたら窓側の奥の方でなんか話し出した。

 というか人が集まり出した。

「大丈夫?」とか聞こえてくるんだけど何事?


「おい、どーした? 熊野がどうかしたの?」


 担任の教師が言った名前にどうも聞き覚えがあるような気がした。

 まあ、小中のどっかにそんな名前のがいたとか、そんなもんだろ。


 とか思ってたわけだが、更に聞き覚えがある気がする名前が聞こえてきた。


「まりちゃんの顔色が悪くて。」


 先生が「大丈夫か?」とか返してたが、俺は『まりちゃん』という名前の方が気になった。


 まりちゃん、まりちゃん...。

 まりちゃん......?


 無意識に人だかりの方を見てただけなんだが、間から『まりちゃん』が見えた。

 しっかりと目があって、昔の記憶がよみがえった。



 ──

 ────

 ──────

 ─────────


 家の近くの小学校の三年生になった頃だった。


 授業はそれなりに真面目に受けたり、ふざけて進行の邪魔をしたり。

 休み時間には友達たちと校庭でサッカーかドッチボールをして遊んでた。


 どいつが俺を好きらしいとか、友達のどいつが女子のアイツが好きとか、そんな話もそこそこ出てきた頃。

「まりちゃん」と呼ばれてた熊野鞠奈って女子が、実は結構人気があった。


 テレビとか出れるだろ、ってくらい顔が整ってるとか。

 それほど愛想はよくないけど仲いい友達とかには可愛く笑うとか。


 実を言うと俺も気になってた。

 俺に笑ってくんないかな、とか思ってたし。


 熊野鞠奈は一部の女子としか殆ど関わらなかったから、挨拶したとか少し話したとかだけで男子内でちょっとした自慢話にできた。


 だから熊野鞠奈の友達の一人が「まりちゃん」を間違えて「まるちゃん」って言ったときに意気揚々とからかいに行ったんだ。


 きっと今まで以上に話せる。

 そしたら友達に自慢できる。ってな。


「まる子!」

 って呼んだら必ず

「まりなだってば。」

 って返されるのが嬉しくてまる子まる子って何回も言ってた気がする。


 それで、皆もまる子とかまるちゃんとかって呼びだしてそれがあだ名になった。


 熊野鞠奈(まる子)は結構失敗とかしてたから、尚更"まる子"っぽかった。


 ─────────

 ──────

 ────

 ──



 あいつ、まる子だ!


「まる子!」


 気がついたら指をさして叫んでた。

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