表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鞠奈ちゃんはドジな子ですが...  作者: 小麦 楓菓
鞠奈ちゃんが準備する、章
13/20

隠し事が上手いのにも困ったものです。

二話を同時に投稿していますので最新話から来られた方は前話からお読みください。

 五時間目の英語と、六時間目の化学の授業も多少のドジをしつつ終え、放課後になりました。

 坂町高校の校舎隅にある保健室で、鞠奈の姿が見られました。


「まったく、熊野さんは時々こういう無理をするんですから。」

「すいません。」

「次からは怪我したら直ぐに水瀬(みなせ)のところへ来てくださいね。」

「元はと言えばまりのせいだったので、名賀ちゃんに責任感じさせたくなくて......。」

「その気持ちは分かりますけどね。」


 実は昼休みに光月(みつき)を階段で助けた際、倒れ込む時に庇って左手首を痛めていたのです。

 しかしその場で怪我をしたなどと言えばあの光月のことですから、必要以上に自分のせいだと気にしてしまったでしょう。

 それを嫌がった鞠奈はそれから放課後になり、彩芽(あやめ)に飴のお礼がすると言って実砂と別れるまで、痛みを堪えていたのです。

 その他の生徒なら誤魔化せるかもしれませんが、今日の内に実砂にバレると光月に伝わってしまいかねません。

 勿論彩芽にはお礼に好物の購買(のおばちゃん)産ピリ辛チキンをプレゼントしてから保健室に来ましたから嘘ではありませんが。


「実砂ぽん、怒るだろうなあ......。」

「それが分かってるなら隠したりしなければいいでしょう?

 左手だったからよかったものの、右手だったら悪化していましたよ。」

「それは不幸中の幸いだったと思います。

 最近関節の怪我はしてなかったんですけどねぇ。」


 情けないなぁ、と自身を笑っていると手当てを終えた保険医、水瀬先生が真っ直ぐ鞠奈と目を合わせてきたので鞠奈も真っ直ぐ見返しました。


 暫く沈黙が続きましたが、やっと水瀬先生が口を開きました。


「熊野さん、あなたの考え方は相手を思いやった素晴らしいものだと思います。

 ですがまずは自分の身を大事にしなくてはなりません。

 それができない人に体を気遣われても嬉しくありませんし、説得力もないんですから。」

「それは分かってます。

 でも、まりは結構演技に自信ありますよ。頭も悪くないです。

 トラさんとウマさんでも持ってこられない限り、上手く立ち回れます。」


 この学校で鞠奈の、傲慢とも言える台詞と不敵な笑みを目にしたことがあるのは実砂を覗けば、この水瀬先生だけでしょう。

 どうもこの先生には見透かされているような気がして強気に出てしまうのです。


 暫くお互い視線を逸らさずに見つめあっていましたが、折れたのは水瀬先生でした。

 諦めたようにため息をつきます。


「分かりました。そこまで言うのならもう言いません。

 ですがそのトラさんやウマさんが現れたり、上手く立ち回るのに疲れたときにはここへいらっしゃい。

 水瀬はカウンセラーもしてますから。」

「どうしようもなくなったら、そうします。

 まず身内に打ち明けるかも知れませんけど。」

「それでも構いません。辛くなったら愚痴でいいですから誰かに話すんですよ?」

「はい。ありがとうございました、水瀬先生。」


 強気な態度はすっかり鳴りを潜め、いつも通りの無邪気な雰囲気を纏って鞠奈は一度礼をすると保健室から出ていきました。


 それを見送った水瀬先生はもう一度ため息を溢しました。


「熊野さんは、自分がここでどれだけ特殊な立ち位置にいるか分かってるんでしょうか?

 思っている以上にあなたを注意深く見ている人は多いのですよ。

 ファンクラブなんてものまであるんですから。」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「鞠ちゃん!」


 鞠奈が下駄箱で上履きから靴に履き替えていると二年生の女子生徒が声をかけてきました。


「あ、愛ちゃん。」

「鞠ちゃんも今帰り?」

「うん、そうだよ。」

「じゃあ駅まで一緒に帰ろうよ。モノレール?」

「ううん、まりは南岐(なんぎ)線。」

「そっか残念。ところで手首、怪我したの?」


 早速手首に巻かれた包帯が気になったようです。


「うん、またドジして転んじゃってさぁ。荷物持ってたから上手く受け身取れなかったんだよねぇ。

 おかげで手首痛めちゃった。」

「しょっちゅう転んでても怪我しないのにね。」

「大事な荷物だったから庇ったらドーン、って下敷きになっちゃったんだよー。」

「あちゃー、関節じゃあ絆創膏は役に立ちそうもないね。」

「あはは、確かにねぇ。でも水瀬先生にちゃんと手当てしてもらったから、大丈夫だよ。」

「もー、気を付けなね? 鞠ちゃんが怪我したら皆悲しむからさ。」

「うん、気を付ける。」


 そのまま二人はとりとめもない話をして駅で別れ、それぞれで家に帰ったのでした。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「ほら、名賀ちゃんを庇って怪我したなんてバレなかった。

 大丈夫だよ、水瀬先生。」


 明日の昼休みに光月本人に訊ねられたときの言い訳を考えとけば大丈夫、と鞠奈は安心していました。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「鞠ちゃんがかすり傷以外の怪我なんて珍しい。

 明日の報告会で話さなきゃ。

 会長が聞いたら自分のせいじゃないのにお傍で防げなかった! とかって嘆きそうだよね。」


 しかし、愛は鞠奈が存在に気がついていないファンクラブの一員です。

 たまに開かれる報告会という名の鞠奈についての語らいは明日の朝にもあるのです。

鞠奈はこんなに強気なはずでは......

でもこんな水瀬先生も気に入ってしまったので消したくない......

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ