表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*女王様の非日常*   作者: 由紀
8/12

忠実なる白神子

お待たせしました、閲覧ありがとうございます。


世界高等会議に向け慌ただしい城内を尻目に、女王リーアはのんびりと歩く。


テラスに見つけた長椅子に座り、最近城下で流行っているらしい本を開き目を通す。


よくある男女の生と死、出会いと別れが描かれている。


ふーん。

なんだか、ワンパターンな短編小説って感じだわ?


ぼうっと読んでいると、耳に小さな溜め息が聞こえた。


「…お久しぶりですわ。女王陛下。」


外見は十代前半の、白い神職の装束を纏う少女が頭を下げる。


気付いたリーアは顔だけを向け、緩く笑みを浮かべた。


「ええ。久しぶりね、ルカ。」


ああ、とルカは歓喜の涙を一筋流し膝まづく。


「…女王陛下とお会いできない間は、何をしても暗い海を漂っている様な心持ちでしたわ…。今はただ喜びで胸が震えております。ああ、この思いでだけで、私は生きて行けますでしょう!」


……長い。


嬉しいわ、と口にしながら半分は聞き流す。


この口上は何百回聞いたのだろうか。

彼女はルカ。女王リーアに心酔する神子である。


元々は女神に仕えていたが、一度リーアに出会い一目で憧れ、心を奪われた。

それからは、不老不死のリーアの為に人生を捧げ、リーアの妾の一人と契り不老不死となった。

多少いやかなりルカの思いは他の者に比べて重いが、害はない限り口出ししない事にしている。


「そういえば、霊王ルヴィランス様が、大層女王陛下にお会いしたいと仰っておりましたけれど…。」


ふと、気の済んだルカの話題が、ルカの住む精霊国の話題に移る。

精霊国の宰相がルカの夫である為、一応は霊王も多少敬っているのだろう。


「…まあ、ルヴィが?」


「はい。勿論、殿下や夫…いえ妾のシシェアもお待ちでいらっしゃいます。」


そう、本当は世界会議までは獣国で大人しくしようと思ったのだけれど。


精霊国にも最近行って居なかったし、1日位は顔を出した方が良いかしら?


そう思うと、夫の精霊王の顔が思い浮かぶ。ああ、子ども達にも会いたいわ…。

次いでに、ルカの夫でもあり、私の妾シシェアにも。


少しだけ、行ってみましょうか…。


「…そうね、今日の夕方頃早速行ってみるわ。一晩だけ泊まりに行きましょうか。」


「一晩だけ、でございますか?…承知致しました。」


女王の返事に僅かに戸惑いを見せるも、ルカは静かに頭を下げた。


そう、これがルカの良い所ね。無駄口を聞かないで意図を汲み取る有能さ。

勿論、仕えてくれる者ではスイキが一番だが、同性となるとルカの名が上がる事だろう。


「…それでは失礼致しましす。」


リーアとの会話を切り上げ、ルカは精霊国に戻っていく。直ぐに女王の帰国を精霊国に伝える為だ。


さーてと、私はリルトとちょっと遊んでから、精霊国に行きましょ。


でも、本当に久しぶりかも?普段は、魔国と獣国を行ったり来たり、一人で過ごしたりしているし。


精霊国と法国なんて、10年に一回行くか行かないか?だったわね~。


あら私って結構酷い…。


僅かの反省を胸にし、可愛い孫の元に向かう。



「…おばあさま!」


「こんにちは、リルト。」


リーアの姿に、慌てて衛兵が扉を開けてくれる。流石は獣人王の直系孫、護衛や侍女も多い。


センヤの特徴を受け継ぎ、獣人王と女王の名を戴くこの王子に、周囲の期待も大きい様だ。


女王の力も絶大で、リーアが孫と遊ぼうと軽く言った事が、このように簡単に叶えられる。


「おばあさま、ぼく…いっしょにエホンが、みたいです!」


あら、可愛い。


目を輝かせて児童書を胸に抱く姿は、庇護欲を多いに沸き上がらせた。


「ふふ、良いわ。では一緒にね?」


嬉しそうなリルトを膝に抱き上げ、ゆっくりとページを捲っていく。


うんうん、こういう老後も良いわねえ。不老不死とは言え、五千万年も生きてるのだもの…お役ごめんしたいわ。


のんびりと絵本を読み進め、次第にリルトが目を擦り欠伸を始める。


ああ、まだ3歳だったものね。


「そろそろ、終わりにしましょう?続きはまた明日ね。」


「…は、い。では、また…あした。」


うとうとと微睡みながらも返事をするリルトに少し笑い、後を侍女に任せて廻廊を歩き出す。


外を眺めると、少しずつ傾く夕日。


さてと、精霊国に向かいましょうね。


その一瞬で、目の合ったサヴェルに軽く手を振って微笑みを向けた。


「…丁度良かったわ。サヴェル、精霊国に一晩行ってくるから、イシュに言って置いてね?」

という拷問の様な事付けをして、リーアの姿は薄くなる。


消える瞬間、サヴェルの悲痛な叫びが木霊したそうである。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ