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*女王様の非日常*   作者: 由紀
6/12

五千万年前*episordⅠ

ユリアの女王になるまでの話しです。

ストーリーの中に時たま放り込む予定です。



五千万年前、18歳の娘だった私は突然この世界へ連れて来られた。


前の世界ではそれなりに立場があり、婚約者も居た私は初めは嘆き泣き続けた。


飽きる程に泣いた時、神だと名乗る女性が目の前に現れたのだ。


『世界を整えて欲しい』


様々な人種、種族の入り乱れる世界…私が初めに持った感想として、気持ちが悪いだった。



世界の規範も無く、取り纏める存在も居ない世界。


比率的に、雄の数が多いらしく女性は大切に扱われるらしい。


その為、今より少し前に私と同じ年頃の娘を連れて来たが、酷かった様だ。

自尊心の高いその娘は、自分の好みの男を集め飽きれば捨て、数少ない女を殺す様に命じ更に世界を混乱させた。


神は心を痛め、娘を元の世界に戻したが遅すぎた。


女の激減した世界、空気は荒み、人々の心は淀み切ってしまっていた。


神は僅かに時を早め、娘に侵された世代が居なくなるのを待っていた。


そして時が経ち、平和な異界を選び良識のある娘を選んだ。


神は目の前に立ち竦む娘を見つめる。


『…木崎 ユリア。せめてもの私からの手助けに、高位魔力、年齢操作、法力…他にも精霊達からの祝福を授けました。…どうか、世界を整えて貰えませんか?』


嫌だ…

やりたくない…


ユリアの瞳から涙が溢れる。


自分を真っ直ぐに射ぬく視線に体が震える。


「…わかり、まし…た。」


神が消え、与えられた城と呼べる邸内の室内で呆然とした。


鏡に映る見知らぬ美少女。

顔すらも変えられたのか。


涙を拭い、城から出て行く。


神から御触れでもあったのか、異界からの女を探し走り回る人々。


外套を頭から被ったユリアは、街中を抜けて道なき道を歩く。


ふと、ぼろぼろの衣を身に付けた小男と目が合う


驚愕に見開く目に気付くと同時に、その醜い口を開く。


わめきたてながら、ユリアの腕を掴む男。


恐怖に怯えるユリアは抵抗出来ず固まるが、男はこう言っていたように思う。


『これはこれは異界からの姫様、どうか私と来てくださいませ。あなた様の良いように致します。』


私を見つけたら金でも手にはいるのか?


興奮する男に怯えている間に、周りに人が集まって来る。


自分と供に来いと騒ぐ人々に、ユリアは顔を青ざめ震えるしか出来ない。


裏のある笑みに、ユリアが込み上げるものに耐えている時、人混みが突如割れた。


馬に乗った人物は、ユリアを抱き上げ馬に飛び乗ると走り去った。


周囲の騒ぎを気にも止めない様子にユリアも思考も吹っ飛び、相手の顔をまじまじと見上げる。


二十代初め頃の精悍な顔立ちの青年、灰色の髪を持ち、それ以上に目を引くのは獣の様な尖った耳。


人気の無い森に入り、馬を止めた青年はユリアを下ろした。


戸惑うユリアを余所に、青年は近くの木に寄り掛かり口を開く。


「…俺は獣人のスイキと言う。君は?」


じゅうじん?


「…どうして、助けてくれたの?」


ユリアの戸惑う視線に、何故かスイキの表情は不思議そうに目を細めた。


「か弱い女人が危険に会っていたら、放って置けないだろう。」


当然だと言わんばかりの相手に、ユリアは全身の力が抜けていた。


もしかして、異界からの女の話しを知らない?


神がどういう風に人々に伝えたか知らないが、この青年の耳には入っていないようだ。


安堵し、ゆっくり外套を下ろす。


目が合うと、何故か固まる青年。

「私の名前は、ユリア。さっきはありがとう。」


笑みを向ければ、スイキの頬に赤みが差す。


「…あ、いや。ええと、ヤーリアか?」


ん?


「いえ、ユリアよ?」


「……ユリーア?」


青年の伺う様な表情に、ユリアは頭を振る。


もしかして、発音しにくい名前なのかしら。


「ユ」


「ユ?」


「リ」


「リ…」


「ア」


「ア。」


思わず笑ってしまうユリアだが、相手の表情は至って真剣である。


「ユリア…?」


「ええ。」


ニコッと微笑めば、嬉しげに笑むスイキ。


真っ直ぐな彼の雰囲気に、ユリアの心は不思議と落ち着けていた。


この際、自分の美しく変わった容姿を利用してしまおう。


心を整え、スイキに近付き相手を見上げじっと見つめる。


「お願い…私を手伝って…守って…。」


ユリアの言葉にスイキの瞳が瞬く。


まだ…駄目かしら。


相手の胸元に体を寄せ、手を取り指を絡める。


「お願い…貴方しか居ないの。」


弱々しく囁けば、背に回される腕。



「俺などで、良ければ…。」


力強く抱き締められ、ユリアの口元は知らず綻んだのだった。






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