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「ふむふむ、ここが怪しいぞ」
「うむ、シュリ」
「了解」
使い魔とかいうどう見ても柴犬の子犬は鼻が利くらしく、私の胸の中で抱かれながらここほれわんわんしてくれる。
指定された場所にシュリを行かせて、移動魔法で邪魔なものを退かせて発掘をしてる。便利すぎ。
シュリの瞬間移動魔法便利すぎ。転移自体難しいのに、シュリは融合みたいなことも平気でやってるしすごすぎ。移動だけなら魔力にものをいわせて似たようにできるけど、落ちてるかけらを壁に埋め込んだりできない。
「ねー、シュリさ、その魔法便利なのになんで今まで黙ってたのさ」
「黙ってたわけじゃないよ。でも日常そんなに使わないし」
「なんで? 便利じゃん。読んでた本を棚に戻すとか」
「手元に引き寄せることはできないし、便利かなぁ? 小さいときから使う習慣なかったし」
使わないのに慣れてるからってことか。まぁ確かに、私も移動魔法ないから不便とは考えたことはない。ないことが当たり前だし。
「今度はあっちだ。さっさとしろ、ガキども」
「いい加減名前覚えろよ。私は結花奈、こっちはシュリだって」
「ふん。ガキはガキで十分だ。だがま、区別がつかないしな。お前のことはチビと呼ぼう」
「やめろ。なんでお前そんな偉そうなんだよ、犬っころのくせに」
「やめなよ、ユカナ。チャータさんの使い魔だし、私たちの監督者みたいなものなんだし。偉そうでもいいじゃない」
そうなんだけどね。
私たちは今二手に別れている。私シュリ犬と、雇い主の先生ともう一人。犬も遺跡調査に詳しいってことで、先生からは犬の指示のもと散策するように言われて入口で別れた。なので三人の今、犬が上司と言えなくもない。けどなんかむかつくじゃん?
「ねぇ、犬さぁ」
「おい、お前自分のことは名前っていうくせに俺のこと犬呼ばわりしてんじゃねーぞ、人間風情が」
「名前? あるの?」
「決まってるだろうが」
そう言えば、先生はなんとかと犬のこと呼んでたっけ? 説明されてないから覚えてない。あ、あ……なんか濁点ついてる名前?
「チャータさんは、確かアグリオネってよんでた、よね?」
「おう、あってるぞ」
あ、それそれ。うん、似合わないゴツサだな。
「長いし、あっくんね」
「あっくん……可愛い。ぴったりだね」
「おいこら、勝手にアダナつけてんじゃねーよ小娘ども」
「それであっくんさ、聞きたいんだけど」
「無視すんなチビ」
名前で呼べというこっちの要求は無視されてるんだから、当然あっくんの要求は無視。強引に話を続けることであっくん呼びを定着させる。
「で、さっきから外ればっかなんだけど、ほんとにあんた鼻いいの?」
「しかたねーだろ。長く遺物があったところは回りにも匂いうつってんだから」
街から丸1日魔法の馬車を走らせ続けた場所にあるこの遺跡は今までは国がずっと調査していたらしいけど、半年前から国の調査は引き上げ、民間人自由に立ち入り解禁になったらしい。
で、休みがとれた先生はようやく調査にこれたらしいけど、生憎と半年の間にめぼしいものはもうとられているらしい。
「てかさぁ、ほんとになんか匂いしてるの? 先生もあっくんの指示に従うようにって言ってたし、効果あるとは思うけど、なんの匂いなの?」
この遺跡が発見されたのは今から約10年前。山奥にひっそりと、といっても高い塔で目立つはずだけど魔法で隠されていて、誰も知らないこの建物が見つかった。
二本の塔は半壊しているが、それでも施された魔法技術の高さから大昔の偉大な魔法使いが作ったものだろうということでずっと調査されてた。でも壊れて三階以上にあがれないし、外から行こうにも外壁に触れると魔法が使えなくなるので、あまり成果もないまま一般開放になったらしい。
国の調査対象から外されて放置された過去の遺物も、一般人やマニアには高値で売れたり、調査して何かわかるかも知れないと一時は騒然としたらしいけど、今では人っ子一人いやしない。半年でとか、飽きられるの早すぎ。まぁ、なんにも面白いとこないしね。
「匂い、と感じてはいるが、人間が同じかは知らん。なんか感じる」
「適当かよ。魔力でよければ感じるけど、上の方にすごい感じるんだけど」
「ああ、上から匂いがプンプンするな。だからこそ、この辺もわかりにくい部分はある」
「んだよー、じゃあもっと奥行こうよ。まだ一個しかでてないじゃん」
「もう、一個だ。いっとくが、もう人の手がはいりまくってるからな。俺の鼻がなけりゃ見逃してるっての」
「えー」
これじゃ儲けは少なさそうだなぁ。それに私から魔力吸うとか言ってあっくん抱いてるけど、シュリの魔法便利すぎて任せきりだし。
言い出しっぺなのに申し訳ない。てか、なんかすることないかなぁ。魔力で私の方も探してみるか。
「次あっちな」
「うん」
あっくんの指示で次の瓦礫の山に手を伸ばすシュリを横目に、私はこっそり魔法を使う。
えーっと、まずは魔力サーチ、うーん、やっぱり上が存在感大きすぎて、このあたり見づらいな。
じゃあ、気配サーチ、あー、ないな。生き物全然いないな。魔力サーチの範囲狭めてできないかな。前は広範囲にすることしか考えてなかったけど。逆の要領で、こう、う、よしいけた。お?
「また外れだ」
「そうだな。次は」
「ねぇ、シュリ。ちょっとこっちきて」
「うん?」
シュリをつれてちょっと奥まで進む。
「おい、さっき二カ所くらい無視したぞ」
「いいから。シュリ、ちょっとこの壁どけてくれない? 一部分だけ移動もできるんだよね?」
「うん、いいけど、どれくらい?」
「おい、無視すんな」
「うーん、厚さ10センチの手のひらくらい?」
「わかった」
生意気なあっくんとは違い素直に指示通りしてくれるシュリ。シュリは私が示した壁に手を当て、音もなく一部が消えた。
「え、今の部分どこいったの?」
「壁の全体にまざってる。一部分だけだからほとんどわからないけど、ちょっと厚くなったはず」
「ええー、マジぱねぇ」
なにそのチート、と。それは置いといて、とりあえず中を見よう。
「なんかない? 魔力感じたんだけど」
「ん……隠し部屋みたい。というか、綺麗だし、ちゃんと部屋だ」
「お、まじか。さすが私」
よし、さっそく探索だ。
「シュリ、ドアをつくるのだ」
「了解」
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