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「で、できたっ」
「おめでとう! ユウコ」
「ありがとうシューちゃん! シューちゃんのおかげよ!」
あまりに嬉しいのでシューちゃんを抱きしめてぐりぐり頬ずりする。ついでにさわさわ撫で回す。シューちゃんの髪はいつさわってもさらさらで気持ちいい。
結花奈は癖っ毛だったからなぁ。あれはあれでふにゃふにゃで好きだけどね。
何ができたってもちろん魔法だ。シューちゃんに色々試してもらい、ついに灯火の魔法が成功したのだ!
へーい! 凄いぞ私! 感動した!
「いやー、これでついに私も魔法使いね」
「う、うん。そうだね」
テンションの低いシューちゃんに我に返る。
あー、うん、ごめん。そうだよ
ね。こんなの大したことなさすぎよねー。気を使わせてごめんね。
「と、とりあえず他の魔法も試してみましょうか。いい?」
「うん」
私はどうしても自分の魔力というのを感知できないし、念じても唸っても魔法はぴくりとも反応しなかった。
そこで逆転の発送。自分の魔力が分からないなら人の魔力を使えばいいじゃない!
何故か私、シューちゃんの魔力を吸い上げるのだけは手で触れて念じればできた。
吸い上げてる実感はないんだけど、吸ったのを燃料としてイメージして魔法を使えばできたのだ。
「……。よしっ、完璧だ」
練習を重ねること一週間。念じるだけでシューちゃんと同じようにタイムラグなく、安定して魔法が使えるようになった。温もり魔法とか生活に必要なのはもう完璧だ。
「うん、もう完璧だね。こっちの人と見分けつかないよ」
「よーし、じゃあシューちゃん、お祝いにお出かけしましょうか!」
魔力は夜に寝ればほぼ回復すると言うので毎日寝る前に魔力をわけてもらってる。魔力が全くなくなるとマズいらしいけど、少しでも残れば特に苦しいということもないらしい。シューちゃんは進んでくれる。
シューちゃんは魔力の量も多いらしく、一日中でも問題なく使える。
今までは温もり魔法も使えないと、と思ってひたすら家に引きこもってたけど、そろそろ限界だ。
家の人には見つからないように、こっそりお出かけしよう。お弁当用意して、ピクニック気分でもいいかもしれない。シューちゃんに街を案内、してもらうのは無理として、一緒に探索しよう。結花奈のことも勇者として情報がないか調べたいしね。
「え……ど、どこに?」
「え、街に。……まずかった? もしかしておじさんにばれないように出かけるのは難しい?」
「う…えっと、でるのは、できる、と思う。でも……出かけないように言われてるし」
「それはシューちゃんの病気があって危ないからでしょ? 今は私が一緒なんだから大丈夫よ。ね?」
「……ほ、ほんとに大丈夫?」
「大丈夫。私がついてるから」
「…わかった」
説得成功だ。ふー。でも私がでたいのもあるけど、シューちゃんもね、ちゃんと外にでないといけないのだ。知識とか常識とか教わってるけど、シューちゃんは経験値がやっぱり少ない。お金の単位はわかっても、それで何がどれくらい買えるかとか知らないし、そういうのが多い。
それは仕方ないことだし、それにまだ病気の感覚からか、私にも触るのを怖がるふしがある。荒療治にならない程度には積極的に行かないとね。
「今からだと、お弁当つくると出てすぐ食べることになるわね。うーん……簡単に、サンドイッチだけなら歩きながら……いや、さすがになぁ。でも都合よく食べる場所あるかな……」
うーーん。適当に外で食べるのがベストだけど、私こっちのお金持ってないし。何か物を売るにしても……宝石とか持ち歩いてないしなぁ。こっちにないシャーペンとかボールペン売れるかなぁ? でも売れなかったら困るし。
「あの、シューちゃん、お金借りてもいい?」
「え、うん。いいよ。ちょっと待ってて」
シューちゃんは立ち上がると、一度部屋をでた。戻ってきたシューちゃんは箱を抱えていて、机の上に置いた。
「はい。まだ足りなかったら、あるから」
とりあえず開けてみる。金貨がぎっしりつまっていた。
「ま、まだあるの?」
「うん。使わないからって言ったけど、おじ様が私の分だからって。金貨は爆発くらいで壊れないから、とりあえず置いてたけど、ユウコが使うならよかった」
い、いやいや。金貨一枚どのくらいか知らないけどね。でもこれ、例えば一枚百円玉としても、何万円よってくらいあるし。
シューちゃんから教わった限りでは大金貨、金貨、半金貨、四分金貨、銀貨、半銀貨、銅貨、半銅貨の八種類があるらしい。
まぁ物価やレートは金の価格によっても変わるらしいし、10年以上前の情報だから今はわからないけど。
と、とりあえずまあ、これだけあるならとりあえず借りるだけ借りるのはOKよね? えーっと、足りないときは困るから千円と考えて5枚くらいあれば、一食くらい余裕よね。最悪一枚百円でも大丈夫でしょ。
もし大金だと困るし、とりあえず今日はちょっとにして様子をみよう。
「ありがとう。じゃあちょっと借りるわね。いつか返すから」
「別に、あげるよ?」
「駄目よ。親しい人ほど、お金はちゃんとしなきゃ。よし、じゃあ用意しましょうか」
「…うんっ」
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