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「ユウコさん」
「あ、隊長さん、いらっしゃいませー」
大繁盛から2日たち、いつも通りに戻った昼下がり、隊長さんが何やら真剣な雰囲気でやってきた。
「ユウコさん、話があるんだ」
「な、なんですかっ?」
「ロウトという少年を知ってるね」
「いえ、すみませんが知りません。その子がどうかしたんですか?」
「……え、ほんとに知りませんか?」
「ほんとですけど…」
「こ、このくらいの身長で、明るい赤髪の、無口で、あ、紙あるかな? 写すや」
「はい」
紙を渡すと、隊長さんが魔法で似顔絵を書いてくれた。
「あ、この子なら知ってますよ。それにしても隊長さん、絵の魔法も持ち歩かれてるんですか?」
「ええまぁ。犯人の似顔絵を書くために必須だからね。やっぱり知ってるんだね」
「はい。この子がどうかしたんですか?」
「……落ち着いて聞いてほしい。この子は今、牢屋にいる」
「えっ」
話を詳しく聞いた。
無口な少年、ロウト君。彼は盗賊の仲間、というか数年前に親を殺されて自分も殺されそうだったのでなんとか荷物持ちをさせてもらうことで生きてたらしい。
毎日おふざけやストレス解消のためかで盗賊に虐待されて日々を過ごしていた。だけどこの間の火事場泥棒の際に個人財産を手に入れたので、武器を購入して薬で眠らせた盗賊たちを皆殺しにして、そのまま騎士団に自首したそうだ。
自首なんてほぼない世界なので、理由を聞いたところ私が原因だという。はてな? 私何もしてないけど。
「君のおかげで、大人を信じることにした、と言っていたが、いったい何をしたんだ?」
「? いえ、別に、何も? 怪我をしていたのを手当てしたり、薬をサービスしたくらいですけど」
隊長さんはどうも、私が危険なことに顔を突っ込んだのかと気にしてるらしいけど、全く意味がわからない。
確かに、最後に会ったとき、勇気がでたとか言ってた気もするけど。……とりあえず会った方がいいのかな?
「あ、ちなみにロウト君、牢屋にいるってことですけど、捕まりませんよね?」
「いや、捕まるに決まっているだろう」
「えっ、だ、だって、確かに殺してるかも知れませんけど、盗賊で、ロウト君をひどい目にあわせてましたし」
というかこの世界って盗賊の人権ほぼないって聞いてたのに、普通に罪になるの!?
「いや、盗賊を皆殺しにしたのは問題じゃない。むしろ手柄だな。ただ今までに、脅されたとは言え本人も盗みをしていたからな」
「そ……そうですけど」
「もちろん、年齢も年齢だし、自己申告だけど盗賊以外には殺しもしてないそうだから、死罪にはならないよ」
し、死罪にはならない、なんて……それ以外はありなんですか。というか、そうか。ここって死罪って割と軽くなるんだった。あと死罪にもかなり種類があるし、確か奴隷刑も……。
「ど、奴隷刑とか、じゃ、ないですよね?」
「いや、今回はかなり軽い罪というのが見立てだ。そうだな、年齢と盗賊殺しの手柄もあるから、2、3年牢屋にいれて問題なかったら出してもいいと思ってる」
え、えー、いや、殺した分が手柄になるから単に盗みの罪だけで、2、3年もなの? 大人で自分の意志なら無難かもだけど、まだ子供で命のために言うこと聞いてただけなのに。
私の不満を感じたのか、隊長さんが説明してくれたところによると、子供だからこそ盗みをするのが癖付いてしまってる可能性が高いから、すぐに釈放とはいかないらしい。
理屈はわかるけど、でも牢屋に入ってても、出たらすぐに職があるわけじゃない。
「牢屋での生活ってどんな感じなんですか?」
「いや、普通だぞ。普通に牢屋から出られなくて、トイレと手洗いくらいはできる。毎日二食はでる、人道的なものだろ 」
「教育とかは?」
「は? 犯罪者に? なにを教えるんだ?」
「……ちなみに、再犯率とかわかりますか?」
「うん? ああ、やはり子供のころに盗みをしていたものは、出所後もすぐに盗みをして、死罪になる可能性が高いな」
「しっ、死罪なんですか?」
「そりゃあ、大人になって自分の意志での繰り返し犯罪なんですから。なので子供の場合初犯でも死罪にするべという人もいます」
「いやいや! ちょっと待って下さいよ」
それは元々盗みをするくらいだから、保護者に恵まれなかったりして満足な教育が受けれていないはずだ。それをただただ拘束したからって、はい大人と釈放されても、働く方法も頼る先もなくて、また盗みをするのは仕方ないことだ。
盗みが悪いことだと、少なくともロウト君はわかってるはずだ。でもお金が稼げなければ、どうしようもなくて盗みをしてしまうのも、また生きるためにと判断しても仕方ない部分がある。
出所後働けるように、働き先を用意してとは言わないけど、せめて何か手に職がつけられるよう訓練をもって刑としてもらうとか、内職をすることでちょっとだけでもお金をもらえるとか、勉強できるようにするとか、何かしら対策が必要だ。
というのを、何とか伝える。
これがこの世界では当たり前なんだろうけど、当たり前だからって変えてはいけないわけじゃない。
無駄に閉じこめるより、例えば逃げられないようにした場所の中で畑仕事でもさせれば、その分それぞれの食料もつくれる。
子供にはチャンスをあたえるべきだ。
「…なるほど」
うまく理論立てて説明できたか自信はないけど、私の話に隊長さんは真剣な顔で耳を傾けてくれて、頷いた。
「ユウコさんは面白いことを考えるね。確かに、再犯する子供の多くが、お腹が減ったという短絡的な動機だ。それに無駄に税金を使うよりは働かせた方がいいというのも、わかる。管理は大変だが……うん、わかった。一度検討させてもらう」
「本当ですか!? ありがとうございます隊長さん!」
「あ、ああ。もちろん。私も子供が死刑にならざるをえない現状はどうにかならないかと思っていたからね」
「はい! あと、本人が真面目で適性がありそうなら、他にも騎士の手伝いとか公共事業の手伝いをさせたり、頑張りに応じてたまに食事を豪華にするとかすれば、いいと思うんです!」
「うんうん。そうだな」
隊長さんも乗り気になってくれて、さっそく今日にも会議をするので明日報告にきてくれることになった。
隊長さんはほんと、お仕事熱心でいい人だなぁ。
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次から番外編2話あります。




