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 風の噂、じゃなくて新聞によると、結花奈は砂漠の国で大蠍の大群を倒して、おまけに水源見つけてオアシスまでつくっちゃってるらしい。

 へー、そら凄いですねぇ。英雄だねぇ。で? 結花奈が旅だってから一年近くたってるけどまだこの街に着かないってどういうこと?

もうこの街で生活を始めて約半年。すっかり馴染んでいる。もう何なら永住できちゃうレベル。


「はぁ、全く。のんびり屋なのは誰に似たのかしら」


 確かに果報は寝て待て、ってタイプで日常的にはだらけたとこもあったけど、どちらかと言えばせっかちな方だったんだけどねぇ。

 ま、この世界、色々のんびりしてるから仕方ないか。


「ユウコ、新聞私にも見せて」

「はい、どうぞ」

「ありがと………ふぅん、ユカナ、相変わらず大活躍みたいだね」

「そーね、それはほんと、いいことだわ」


 善行だし怒らないけど、いつまで待てばいいのやら。あんまり遅いと、うっかりしてユカナとまたすれ違いそうで恐い。

 全く、人の気も知らないで。実際知らないだろうけどさ。


「ユウコ、お行儀悪いよ」

「んー」


 口からはみ出たままぶら下げてたパン生地を引っ張りちぎり、皿に置く。甘く味付けて自作したパンなので、単体でそれなりに食べられる。

 でも飽きた。パンの改良は数ヶ月前からしていて、初期につくったこの砂糖パンは無難なできで、何度も作ったので飽きてきた。


「ねぇユウコ、明日の休みはどうする?」

「ん? んー…よし! じゃあ明日はひさしぶりに、ピクニックに行こうか」

「うん! 行く!」


 シューちゃんも元気に活発になってきたなぁ。最初の頃と比べるとずいぶん多弁で、よく笑うようになったシューちゃんを見てると、私も頑張ろうって気になる。

 よし、今日も気合いいれて仕事するぞー!









「アルキアさん、この薬、値札がとれちゃってるみたいですけど。いくらですか? 書き直しますよ」

「おや、そんなものどこにあったんだい?」

「え、この棚の奥ですけど」

「そんなのあったかねぇ。名前かなにかあるかい?」

「ラベルが剥がれた跡はあるんですが」


 謎のビンをアルキアさんに渡す。残っているラベルカスも、かなり変色してるから残ってても読めない可能性が高い。


「うーん、匂いからするに、魔力薬だね」

「魔力薬って、確か魔力の回復させるものですよね。そんなの売ってたんですか?」

「ああ、普通のやつらは使わないけど、騎士団なんかじゃ訓練で魔力を使い切ってから敵がきても大丈夫なように、常備しとくもんさ」

「へぇ。今は売らないんですか?」

「こんな田舎じゃ需要もないからねぇ。そもそも南大陸に近いから、この街の人間は平均的に魔力も高い。一通り訓練をしたって魔力がなくなるやつはいないさ」

「そうなんですか。でも冒険者さんとかには売れそうな気もしますけど」

「そういうやつは大抵、大きな店で買うよ。こんな小さな店に来るのは地元の人間だけさ」

「そうですか……ちなみにお高いんですか?」

「傷薬も変わらないさ。なんならこれはやるよ」


 渡されるまま受けたるけど、こ、これは大丈夫なの? 消費期限とかは?


「これ、期限切れてないですか?」

「蓋さえあけなきゃ、数十年くらいはもつように瓶自体に魔法をかけてるからね」

「今開けてましたよね?」

「ああ、だから1ヶ月以内に飲みな」

「あ……ありがとうございます」

「そんな微妙な顔をするんじゃないよ。同じものがでてきたら今度は封を開けずにやるよ」

「あ、ありがとうございます」


 別にどうしてもほしかったわけではないけど、もらえるものはもらっておく。今まで必要なかったから1ヶ月以内に必要になる機会とかないと思うけど。まぁいいか。小さな瓶だし鞄にいれとこう。


「じゃあ整理に戻りますね」

「ああ、今日中にここの棚までは済ましてリストにしておくれ」

「はーい」


 今日はお店をしめて棚卸しをしている。シューちゃんは材料が今どれだけあって何が足りないかをチェックし、私は店舗の製品数をチェックしつつ片づけている。


「あれ、打撲の薬が減ってますね」


 性能が激的なのを覗けば普通の薬局みたいなもので、病気も軽いのならほぼすぐ治るので、切り傷や打ち身なんかの薬がよく売れる。売れるけどまだ半分は在庫があったと思ってたけど、思ってたより少ない。

 危ない危ない。品切れになるところだった。


 リストに打ち身用の塗り薬を記入する。残5。要追加、と。


「後でちゃんと、帳簿と合致するか確認するんだよ」

「はい。わかりました」


 切り傷用は昨日補充したからOK。28個、と。

 火傷薬はそんなに売れないから15個でも問題ないかな。10以下で補充の必要あり、と。

 痛み止めは12個ね。これは結構売れるから、要追加、と。


 薬品を並べ直しながら数を記入していく。

 値札が見にくくなっているものは書き直し、見やすいよう瓶を揃え、どれがどれかわかりやすいように、配列していく。


 よし、普段使い用の棚は完了だ。

 次は効果がさらに強力でそのぶんお高い薬の棚、と。でもこっちはそんなに頻繁に売れないから補充はなしかな?


「ん? こっちも打ち身用が減ってるなぁ」


 私がいない間に売れたのかしら。もしかしたら万引きかも? 後でちゃんと帳簿と突き合わせなきゃね。


 お昼の時間だとシューちゃんが来るまで、私は整理を続けた。

 こういう地味な作業って結構集中して夢中になってしまう。ふぅ、疲れた。











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