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「いらっしゃいませー、あ、ナーゲルさん、こんにちわ」


 からんころんとドアベルがなったので反射的に挨拶をしながら振り向くと、近所の診療所でナースをしてるナーゲルさんだった。


「こんにちわ。すみません、遅くなって。急患が来ていて」

「いえいえ。大丈夫です。追加でのご注文はありますか?」

「そうね、今月は増血剤を多く使ったから、もう二瓶くださいな」

「はい、かしこまりました」


 ナーゲルさんのところへは毎月定期的に薬をおろしてる。シューちゃんもいるし配達してもいいのだが、診療所へはほとんど材料費だけで売ってるらしく、わざわざ運ばせるのは申し訳ないからと取りにこられる。

 アルキアさんってほんと、口は悪いけどいい人の見本みたいな人だ。


「ありがとうございました」


 ナーゲルさんを見送って、しばらくお客さんも来ないので、アルキアさんの蔵書から借りた薬関係の本を読む。

 三人ほどお客さんが来たところでお昼になった。


「ただいま」

「おかえりなさい」


 薬を売りに行っていた宅配係りのシューちゃんが帰ってきた。奥に引っ込んでから、アルキアさんと共に戻ってくる。


「昼、食べてきな」

「はい」


 アルキアさんと店番を交代し、お昼休憩だ。


「お昼何食べる?」

「うーん…昨日のパン屋さん美味しかったと思う」

「そうね。じゃあ今日もそこにしよっか」

「うん」


 店から歩いて15分ほどのところにあるパン屋さんは、店内と表で食べることもできる。


「昨日ユウコが食べてたフィッシュフライサンドにする」

「あれ美味しかったわ。私は…うーん、シューちゃんの薫製魚サンドもいいけど、フィッシュフライサンドのスパイシー味も捨てがたいわねぇ」

「私スパイシーにして半分こにする?」

「いいの?」

「うん。昨日一口もらったから味知ってるし」


 お言葉に甘えて半分こにすることにした。カットしてもらったものを持って、テラス席につく。


「いただきます」

「いただきます」


 薫製魚サンドも、ちょっと固いけど風味がよくて、変わったソースがマッチしていて美味しい。フライサンドは普通に美味しい。ぴりっとしたソースもあう。


「美味しいねぇ」

「うん」

「あ、ユウコじゃん! 一緒していい?」


 声をかけられて振り向く。ナーゲルさんとおなじく診療所勤務の新人ナース、チルラちゃんだ。13才くらいの可愛いナースさんだ。


「どうぞ。チルラちゃんのところもお昼休憩?」

「うん。交代で休憩なの。えっと、あなたはユウコの妹の…シューちゃん、よね?」

「うん。本名は長いからシュリって呼んで」

「おっけ。私のこともチルラでいいわ。よろしく、シュリ」

「うん。よろしく、チルラ」


 隣に座ったチルラちゃんに、シューちゃんも旅立ってから人見知りが段々改善されてきてるらしく、ちょっと微笑んだ。和むわー。


「あ、2人薫製魚サンドなんて食べてるの? 私それなんか変な匂いするしきらーい」

「え、そうかなぁ?」

「私は美味しいと思う。チルラは、フライサンドだね」

「ええ、もちろん。このお店の一番人気だもの」

「よく来るの?」

「常連よ。2人は?」

「私たちは二回目よ。ね?」

「うん。今、お昼はあちこちのお店を食べ歩いてるんだ。一昨日は向こうの定食屋に行ったよ」

「へえ、2人とも住みだして2ヶ月くらいよね。じゃあまだまだ知らない店も多いでしょ」

「そうなのよ。よかったらチルラちゃん、今度のお休みに一緒に食べ歩きしない?」

「奢り?」

「もちろん、誘ったのは私だしね」

「もちろんOK! アルキアさんのとこは不定休だったけど、次の休みっていつ?」

「確かに。アルキアさんの予定でかわるわね。シューちゃんはわかる?」


 私よりはシューちゃんの方が秘書的に一緒にいるのでアルキアさんの予定もわかるだろう。

 話をふるとシューちゃんはんー、と顎に手を当てて考える。


「明後日と明明後日は休みで、その次は来週の…多分木曜日が休み、多分」

「じゃあ来週の木曜日ね。私もシフト制だから大丈夫だし」

「わかった」

「シュリは好物とかある?」

「ううん、えっと、美味しいものなら、なんでも」

「意外と食いしん坊なのね」

「そうかな。ユウコもだよね」

「そうね。癖があって苦手なのとかあるけど、甘い辛いは平気だし。あ、じゃあ美味しい甘味屋さんとか教えて欲しいな」

「了解。ユウコはイメージ通りね」

「……どういう意味?」

「そのままよ。おっと、もうこんな時間。時間とかはまた明日決めましょ。明日もお昼ここで」

「わかったわ」

「んじゃユウコ、シュリ、またね」

「ええ、また明日」

「またね」


 チルラちゃんは慌てたように席をたって出て行った。診療所ってやっぱり忙しいのね。


「シューちゃん、来週楽しみね」

「うん」

「私たちはまだ時間あるわね。そうだわ。ここから近いし、新聞買いに行きましょ」

「うん。わかった」


 この街では新聞は三種類あって、それぞれ記事内容の規模が違う。世界レベルのものが二週間に一度、国レベルのものが一週間に一度、街レベルのものが週に二回。発行元がちがうので、発行曜日が違う。念のため全部に目を通している。

 今日は街レベルの日だから、勇者に触れてる可能性は低いけど、念のためだ。万が一にも結花奈を取り逃がすわけにはいかないからね。


「ごちそうさま」

「ん、ごちそうさま。美味しかったけど、明日は何食べようかな?」

「今から悩まなくても、明日のことは明日決めればいいじゃない」

「そうだね。うん。わかった。新聞屋さん行こうか」


 新聞の内容にはやっぱり、結花奈どころか勇者自体に触れられてなかった。うーん、残念。











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