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「ユウコ、起きて」

「はっ……ついた?」

「うん」


 ついに来たーー!!

 寝そうになっていた意識が完全覚醒。立ち上がった勢いのまま、馬車から飛び出る。


「門でかーーい!」

「王都だからね」


 城下町というだけあり、実際のお城の回りにも塀があるのは当然として、街全体が要塞のようになっている。

 ここに結花奈がいるのか。あー、うずうずするなぁ!


「シューちゃん行こう!」

「うん」


 私たちは手に手をとって門を通り抜ける。さっきまでとは真逆でわいわいがやがやと騒がしいほどの人ごみだ。

 はぐれないようさらに強く手を握りあう。


「まず、お城見に行こうか?」

「うん。とりあえずは素直に会えないか聞いてみよう」


 てなわけでお城へゴー! 大きなお城が見えているので迷わないけど、思いのほか遠いので途中で昼食をとりつつお城へ向かう。


「こ、ここね」

「うん。大きいね」


 ついにお城の前にたどり着いた。これまた大きな門に、兵士がたっている。街の入り口にもいたけど、直接話す人は普通のひとなので、鎧をきた人に話しかけるのは緊張するなぁ。


「あの、すみません」

「あん? どうした?」

「その、ゆか、ゆ、勇者様にお会いしたいのですが、できますか?」

「無理無理」

「そ、そこをなんとか、私知り合いで」

「つーか、もう旅立ったしな」

「……え?」

「知らなかったのか? もう結構前に旅立ってるぞ」


 え、えええーーーー!!? は、早くない!?


「い、今どこにいるんですか!?」

「知らねーよ。あ、いや、確か新聞に書いてあったような気がするな。とにかくそういうことだから、自分で調べてくれ」


 すげなく追っ払われてしまう。シューちゃんとその場を離れつつも混乱が収まらない。


「どどどどどーしよう!?」

「落ち着いて、ユウコ。行き先はわかってるんだから、先回りすれば大丈夫。手がかりならある」


 シューちゃんに強く手を握られて我に返る。そうだ。予想外なことにぱにくっていたけど、前はまったく手がかりがなかった。それに比べたらずっとマシだ。


「さっき新聞って言ってたね。ていうかこの世界に新聞とかあったんだ」

「うん? うん。情報共有のために必要だからね」


 とりあえず落ち着くためも宿を確保。荷物を置いて、二手に別れて聞き込みを開始する。


「すみません、焼き鳥一本ください」

「あいよ」

「ありがとうございます。ところでこの国、異世界から勇者がきてるって聞いたんですけど、ほんとなんですか?」

「おう、俺も遠目だけど見たことあるぜ」









 日が暮れる前に宿に戻るとすでにシューちゃんは部屋にいた。


「ただいま」

「おかえり、ユウコ」


 挨拶をされて、今更当たり前のことだけど、ほっとした。私にはシューちゃんがいる。おかえりと迎えてくれる。私には居場所がある。

 そして同時に、今結花奈は大丈夫なのだろうかと心配になる。

 二人の仲間を連れて行ったとは聞いている。活躍をしているのだと聞いている。だからこそ、心配だ。仲間にはちゃんと心を許せているのか。盗賊や魔物の大群を倒したというが、怪我はしていないのか。精神的にも疲れてないか。


「ユウコ? 疲れたの?」

「ううん、大丈夫よ。シューちゃんこそ、大丈夫だった?」


 丸テーブルに紙束を置いていたシューちゃんの向かいの席に座る。人見知りとはいえ、シューちゃんは事務的な会話であれば問題ないので二手に別れたけど、大丈夫かな?


「問題ない。ユカナについてかかれた新聞を集めてきた。見て」

「ありがとう」


 一枚紙の、新聞というにはお粗末なものに思える。写真もないので絵だ。でもイメージのままに描く魔法があるので、ほぼ写真のようなものだ。

 勇者の召喚がかかれた新聞では他や事件や求人情報とかにも場所がとられている。勇者の情報は少ない。

 段々と扱いが大きくなり、旅立ちの新聞ではほぼ半分をしめていて、大きな結花奈の絵がのっている。


「結花奈……」


 結花奈だ。結花奈だと信じていた。だけどこうやって顔を見て、間違いなく確信できて、ほっとした。絵は笑顔だ。少なくとも無理にでも笑顔をつくれる程度には余裕があるんだ。

 良かった。本当に良かった。

 

「…ユウコ」

「あっ、ご、ごめんね」


 シューちゃんが私の顔にハンカチを押し付けてきて、泣いていることに気づいた。駄目だなぁ。


「ありがとう、シューちゃん。ごめんね、なんだか感極まっちゃって」

「ううん。……早く、会えるように、私も頑張るから」

「ありがとう。シューちゃんがいてくれてよかった。本当に、ありがとう。大好き」

「うん。私も大好きだよ」


 頑張ろう。まだこれからだ。

 気を取り直して結花奈の情報をまとめていく。


 勇者として結花奈はこの国を4ヶ月も前に出発していた。

 出発前から出発してる! はっや! すれ違いとかってレベルじゃない!

 距離あるし、大陸違うから情報に遅れがあるのはわかるけどさ。確かにこっちの大陸にきてからも、結花奈はユニパル国にいると思い込んでたから、街についても軽く話題で知ってる?とか性別とか聞いたくらいだった。ほぼ馬車移動でその間はそんな聞かなかったし。


 勇者はいきなり魔物が占拠してる南大陸の魔王の元へ向かうのかと思ってたけど、そうでもないらしい。一度宗教国家に寄って勇者として改めて命名されてから、それからそれぞれの国の王都に挨拶で寄らなきゃいけないらしい。なにその挨拶まわり。

 RPGばりに大陸を回らなきゃいけないらしい。でもそれならそれで、追いつきようがある。真っ直ぐにこの大陸の一番南へ先回りだ。


「ユウコ、行こう」

「ええ!」


 今度こそ捕まえるわよ!











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