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「ねぇ、シューちゃん、お願いがあるんだけど」

「駄目」

「何も言ってないけど……わかっちゃう?」

「うん。ユウコも戦いたいって言うんでしょ?」

「そうそう。シューちゃんが毎日相手してくれるし、その辺の雑魚くらい相手できると思うのよ」

「駄目。ユウコを鍛えるのは、いざって時にも冷静に余裕をもって逃げられるように、なんだから」

「うん、でもほら、ちょっと弱いくらいので慣れておいたほうが、変に緊張したりびびったりしないですむと思うのよ」

「……」


 そう言われると、みたいな顔をするシューちゃん。もう一押しだ。こちらの大陸にきてから、魔物に遭遇する頻度が確実に増えている。

 というか倍増どころじゃない。向こうでは数日に一度見るくらいだったのに、ここでは毎日やってくる。シューちゃんが瞬殺してるけど、たくさんきたりして、私が実際に戦うことになる可能性も高いだろう。

 その時に慌てないよう、シューちゃんが監督できるくらい余裕な時にあえて私が戦うべきだと思う。

 別に戦うシューちゃんがカッコイいからやってみたいわけじゃ断じてない。


「やらせてやったらどうだ? お前さんほど強いなら、面倒みるくらい楽勝だろ」

「……あなたには関係ない。話しかけないで」

「つれねぇなぁ」

「もう、シューちゃんたら」


 馬車に乗ってる他の旅人に話しかけられてつんとつれない態度をとるシューちゃん。人見知りだから仕方ないけど、一週間も一緒にいるんだから、ちょっとは愛想よくしなきゃ駄目よ。

 そんな風に私の手をぎゅっと握ってくれるのは可愛いから、あえて何も言わないけどね。


「あなたたちはどこに行くの?」

「私たち、ユニパル国へ行くんです。妹がいるので」

「へえ、三姉妹なのね」

「はい。そうなんです」

「強い妹さんがいると、頼もしくていいわね。女2人でも安心ね」

「はい。でもやっぱり任せっきりってわけにもいきませんから。私も頑張りたいんです。お姉さんも強そうですよね。ちょっと説得してくれません?」

「どうつながるのかわからないけど、いいわよ。お嬢さん、ーーーーーー」

「それは、そうだけど」

「ーーーーーー」

「……わかった」


 さっきから話してるいかにも冒険者風の男女二人組のお姉さんが耳打ちして説得すると、シューちゃんはすんなり頷いた。


「え、今なんて言ったんですか?」

「内緒よ」


 えー……、まぁいいか。足手まといにならないよう頑張らなきゃ。









「……」

「ゆ、ユウコ、大丈夫?」

「大丈夫よ。思ったより使えない自分に絶望してるだけ」

「は、初めてなんだから仕方ないよ。ユウコ、動きはよくなってるし、魔法の選択だって悪くないし、すぐに勝てるようになるって」

「うう……シューちゃーん!」


 攻撃があたらない。もうびっくりするほどあたらない。訓練のおかげか、私自身も敵の攻撃をかわすことは割と余裕でできるのに、私の攻撃も全然あたらない。

 ぐぐぐぐ。シューちゃんとの練習ではちゃんとシューちゃんが投げる的に魔法あてたりできるのに、なんでよ。


「大丈夫。ユウコは逃げてさえいれば、私が倒すから」


 だからそれが嫌なんですけど。年下の女の子に荒事を押し付けるとか。そりゃシューちゃんは強いしある程度仕方ないけど、でもやっぱり、ちょっとくらいできないと。

 単にカッコ良く魔法つかったりしてみたいってのもあるけどさ。でも動機の7割はシューちゃんを助けたい一心なのよ。信じて!


「それじゃ駄目なのよぅ。はぁ、遠距離攻撃に向いてないのかしら」


 今のところ私がやっているのは、敵をさけて距離をとりつつ、風切り魔法で攻撃する。シューの系統が風だと教えてもらったので、攻撃に関しては風魔法を使っている。

 魔力もらっても移動魔法は使えないけど、使う系統は影響される。といっても、魔力消費が多少変わるくらいで、ゲームの属性みたいに明確にわけられてないし、そう重要ではないけどね。

 イメージでは同じような魔法ででもスプーンいっぱいくらい魔力消費量が違うくらいの微々たる差だし、シューちゃんなんかは系統関係なくつかう。でも私は借り物の魔力なのでできるだけ節約してるのです。


「ねぇユウコちゃん、あなたさっきから風魔法ばかり使っているけど、もしかして系統特化タイプ?」

「へ? 系統特化?」

「あれ、違うの?」


 何故か目をきらきらさせながらお姉さんが質問してきて、そのまま問い返すと目に見えてしょんぼりされた。

 え、ていうかほんとになに? 聞いたことない。

 シューちゃんを見ても首を傾げられたら。


「なんだ、知らないのか? 魔法には系統があって、個人個人で得意系統不得意系統があって、魔力消費量が違うんだ」

「それはすみません、知ってますけど、でもそんなに消費量の差ってないですよね?」

「そっちか。消費量の差にもまた個人差がある。たまにめちゃくちゃ差がでて、得意系統魔法しか使えない奴がいる。そういうのを系統特化タイプと云うんだ」

「へぇ、そうだったんですか。私の回りにはそんなに差がある人はいなかったので」

「私はね、風系統特化タイプなの。滅多にいないから、仲間かなーって思ったのに。がっくり」

「す、すみません、紛らわしくて」

「ウソウソ。私が勝手に勘違いしただけだもの」

「それにしても、特化タイプって大変じゃないですか? 火とかだせないんじゃないですか?」

「いやいや、さすがに体内にある魔法は普通に使えるわよ」


 なるほど。それなら普通に街中で生活するぶんには、魔法陣で魔法使うことも少ないし、そう困らないのか。


「でも旅するのは大変じゃないですか?」

「それがね、逆に風については他の人よりめちゃくちゃ少しで使えるから、案外便利なのよ。飛行魔法も平気で使えるもの」

「おおっ、飛行魔法といえばすっごい魔力消費で殆ど使える人がいないって聞きました。すごいですね」

「ふふーん。戦闘の時はかなり便利よ。囲まれても私ひとりなら、空にあがって毒薬をまけば勝てるもの」

「ど、毒ですか」

「あ、ひいてるわね。風系統タイプにはかなり有用よ。的を絞る必要もないからユウコちゃんでも実用できるし。ユウコちゃんにも教えてあげようかと思ったんだけどなー」


 う。た、確かに範囲攻撃なら外す可能性はぐっとへる。風を操るのはできるから、毒とはいえ味方が被る可能性は低い。毒消し魔法はすでに持ってるし。

 でも……ど、毒かぁ。私ゲームでは戦士1択で、後方支援はしたことないのよね。まあ現実的に考えれば戦士無理だし、シューちゃんが強いんだからそのサポートとしてならありか。


「毒以外にも痺れさせたり眠らせたりできて便利なんだけどなー」

「あ、その、お、お願いします」

「え? なに? 聞こえないわねぇ」

「お願いします! 私を弟子にしてください!」


 思い切って言うとお姉さんはけらけら笑ってから私の肩を叩く。


「おっけおっけ、いいよ。馬車にのってる間でよければ、弟子にしたげる」

「ありがとうございます!」


 やったね! 予期せず本職の冒険者の師事を受けられることになった。今度こそシューちゃんの力になれるはずだ。

 今も一応回避はできるから、足手まといではないはずだけど、それだけじゃダメだしね。










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