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次回から4話更新に変更します。

「はーるがきーたー、はーるがきーたー、どーこーにー、きたー」

「やーまにきーたー、さーとにきーたー」

「のーにーもー、きたー」


 シューちゃんと春がきたをリピートアフタミーな感じにエンドレスに歌いながら、花冠が完成する。


 出発は朝。もし起きれなかったら一大事なので、前日にお昼から夜中まで眠って早くに起き出すことにした。

 宿屋は前払い方式なので早くでるぶんには迷惑にはならない。鍵入れはカウンターに置きっぱなしだし、一応大丈夫か聞いたし。


 街についてからはぶらぶらし、冬服もこもこな格好だったので、シャツなんかの上に軽く羽織えるようなものを一つだけ買った。でも他に特にお店的に目立ったところもない。

 宿屋を早めに出て暇を持て余した私たちは、待ち合わせ場所である門の脇に座り込み、山盛り育ってる白詰草っぽいので花冠なんかをつくって遊ぶことにした。


 門は民家とはちょっと離れてるので多少声をあげたり、魔法の灯りで照らしても問題ない。というのは見張り番をしてる門にくっついてる詰め所の人に聞いた。


 花遊びなんて懐かしいし、そもそもこの前まで雪しかないところだったからなんとなくテンションがあがって歌を歌ってしまった。

 シューちゃんが歌い出して気づいて、詰め所の人にも聞こえてるだろうし恥ずかしくなったけどシューちゃんが楽しそうなので今更やめられず、やけになって歌ってます。

 いくつとか言わないで。ぴっちぴちの十代なんだからっ。……我ながらないわ。はぁ、客観的にみて自分が可愛いという形容詞が似合わないことはわかってるだけに、ぶりっこ系はマジでないわ。


「さて、できた。はい、シューちゃん頭だしてー」

「うん」


 身を寄せて前屈みになるシューちゃんにそっと花冠をのせる。金の髪をかざる白い花。暖色系の明かりに照らされて、綺麗だ。そして可愛い。

 外人さん特有の大人っぽい顔立ちで年上にすら見えるけど、はにかむ顔は無邪気な子供みたいで、そのアンバランスさがとても可愛い。


「ユウコ、最後はどうするの?」

「最後の一本を逆方向にしてもいいし、円ならそのままでこうやって、絡めても、ほら」

「うんっ、できた。ユウコ、頭さげて」

「うん」

「はいっ。えへへ、ユウコ似合うよ。お姫様みたい」


 お姫様みたいとは、また、ありきたりでありながら気恥ずかしい。本気で誉めてくれているのだし、嬉しく思わないでもない。でもそれより恥ずかしさが先立つ。だってほら、あんまりにも私向きではない。

 まだ女らしいとか、女王様ならわかるけど、お姫様というと小柄でふわふわして可愛いイメージというか、とにかく私と真逆だ。無理やり褒められている気がするというか、普通に恥ずかしい。というかシューちゃんこそお姫様みたいだし。


「ありがとう。シューちゃんこそとっても可愛くて、素敵よ。シューちゃんこそお姫様みたいよ」

「ありがとう。ユウコがそう言ってくれると、嬉しい」


 シューちゃんは可愛らしくはにかむ。こんな可愛い子と2人とか、私女でよかった。男ならさすがに二人旅はとかってシューちゃんもついて来てくれないだろうしね。


「シューちゃんはほんと可愛いなぁもう」


 それにこうして気安く抱きしめられるしね。シューちゃんはいつでも柔らかくていい匂いだなぁ。


「ユウコも可愛い」

「ありがとね」


 さて、堪能したし、次は首飾りに挑戦しますか。









「ユウコ」


 名前を呼ぶと、ユウコは振り向く。


「なに?」


 私を見つめて、にこりと微笑んでくれる。

 私の言葉に反応して、私を見てくれる。それだけでどれだけ嬉しいか、ユウコはわからないだろう。


「ユウコの髪、私がとかしたい」

「え、やってくれるの?」

「うん。私のはいっつもやってもらってるから」


 ブラシをかりて、ユウコの後ろに回る。鏡の前に座っていたユウコの後ろにたつと、ユウコの頭が上から見えてちょっと新鮮だ。


「優しくお願いね」

「うん」


 ユウコにしてもらってるように、そっとブラシを髪にすべらせる。


「あ、いた、み、耳には気をつけて」

「ご、ごめんね」


 ううん。少し難しい。前は自分の髪は伸びたらてきとうに切って、寝癖もつかないので、たまに髪を洗う時にしかとかさなかった。

 今ではユウコが切りそろえてくれるから、ユウコがしてくれる前に自分でとかすこともある。やってもらうのは好きだけど、自分でもできるようにならなきゃ一人前とは言えない。


「こう?」

「そうそう。上手上手」

「うん」


 ユウコの長い髪をとかすのは、何だか楽しい。ユウコの髪は綺麗でさらさらだ。

 初めて会った時から思ってた。ユウコは肌も髪も綺麗だ。ユウコの世界のことは聞いた。

 魔法がなくて、ずいぶん変わった世界みたいだ。似たところもあって、全然違うところもある。魔物もいなくて、平和な世界らしい。地元では雪にはばまれていて、そもそも魔大陸から遠いし、あまりいなかったけど、全くいないなんて想像がつかない。 


「ねぇ、シューちゃん」

「なに?」

「明日には出航するわけだけど、大丈夫?」

「うん? なにが?」

「なんというか、ここまではまだ見送りと言い張れるけど、大陸を出てしまうと、簡単には戻れない。シューちゃんにとっても向こうは未知の場所でしょう? ……今更ね」

「うん、今更。だって、この街だって、私は知らないよ。でもユウコと一緒だから大丈夫。ユウコとなら、どこででも、大丈夫だよ」

「うん。ごめん。ちょっと弱気になってた。よし! シューちゃん、髪の毛ありがとう。じゃあそろそろでかけましょうか」

「うん」

「シューちゃん、私について来てね」

「うんっ」


 ついて行くよ。ユウコに嫌がられない限り、ずっと。本当に、ずっと、ついて行けたらいいのに。











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