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 おじ様に旅立つ許可をもらってから、ユウコにはバレないように日々、野宿の方法、魔物との戦い方、野草の見分け方、役立つ魔法の習得など様々なことを学んでいる。

隠してるのは深い意味はなくて、あえていうなら驚かせたいからだ。別に、ついて行くと言って拒否されたら立ち直れないからとかじゃない。拒否されても無理やりついていくし。


「はぁ、はぁ」


 今日はすこし長引いてしまった。ユウコより先に帰らなきゃいけないので、走って帰る。よし、まだいない。


「ふぅ」


 上着なんかも片付け、これでいつ帰ってきても大丈夫だ。私はほっと息をついて暖炉をつけて前に座る。


 めらめらと燃える炎をぼんやり見ていると段々眠くなってきた。以前も毎日活字漬けの毎日だったので知識を得るのは問題ないが、今日は体力づくりをさせられたので、疲れたせいだろう。

 そのままソファに寝転がる。毛足の長い絨毯は、寝転がるとさらに私の眠気をました。

 以前の私ならこんなことはしなかった。必ずベッドで寝ていた。でもペンダントもあるし、何よりユウコが帰ってきた時すぐに迎えたいので、ちょっとだけこのまま仮眠をとることにした。









「ただいまー! って、あれ、シューちゃん寝てる?」


 結界を越えて、勢いよくドアがあけられてユウコの声がする。それでもちろん起きないわけがないけど、何だかぼんやりふわふわした気持ちで、返事をするのが億劫だった。

 もう、怯える必要はないのだから、もう少し眠ろうか。でもせっかくユウコが帰ってきたし、話をしたいな。でも、うつらうつらした今の状態はすごく気持ちいい。


 迷ってるうちに、物音がごそごそしてから、隣にユウコが来たのを気配で感じる。

 慌てて開きかけていた目を完全に閉じる。って、別に起きてるのを隠す必要もなかった。


「可愛いなぁ、シューちゃん」


 なでなでと頭を撫でられる。気持ちいい。


「私もちょっと寝よっと。おやすみ、シューちゃん」


 ユウコは寝転がると、そっと私を抱きしめるように腕を添えてきた。


「……」


 直接くっついているわけではないけど、ユウコの温もりを感じられる。暖炉よりも温かくて、もうこの世界に他になにもいらないくらいだ。

 この幸せな状態をやめたくなくて、私はもう一度眠りにつくことにした。









 プレゼントをしたお風呂だけど、ユウコはとても気に入ってくれた。実物を知らないので、ユウコにちょっと手直ししてもらったけど、私作と言ってもいいだろう。


「はー、気持ちいぃ」


 しかしそれにしても、ちょっと何だか、恥ずかしいものだ。体を拭くのも背中を拭いてもらったりしていたけど、前は隠していた。

 それが惜しげもなく全裸をさらしあうなんて、変な感じだ。もちろん、ユウコの故郷では当たり前でおかしな意味などないのはわかっている。

 それでもやっぱり、堂々と裸でいるユウコを見ると目のやり場に困るし、何だか気まずい。混浴は仲良しの証だとユウコは言うし、嫌なわけではない。

 お風呂自体、気持ちのいいものだ。お湯につかり手足をのばすと、じわじわと汗がでてくるんだけど、それは気にならないし、お風呂からあがるころにはスッキリする。

 私もお風呂は好きかも知れない。


「はー、いーいゆっだっな、あははん」


 上機嫌で妙なメロディーを口ずさむユウコについ視線がいく。

 お湯で体温があがり、全体的に赤らんだ肌。女性的でふくよかな膨らみに思わず目線が落ちそうになるのを慌ててとめる。

 気にしすぎだ。他人の裸なんて初めてで、ましてユウコだから気になるのはわかるけど、じろじろ見るなんて失礼だ。


「私、そろそろあがるね」

「はいはーい」


 湯船からでて、体を洗ったりする場所で軽くタオルを絞りながら体を拭き、廊下にでて乾いたタオルで拭く。魔法で一瞬でも乾かせるけど、風情がないというので拭いている。

 確かに、乾いたふわふわのタオルで体を拭うのは気持ちいい。髪は魔法でもいいとのこと。

ユウコのやることは全部気持ちよくて、無駄に思えることも楽しくて、きもしかして、こういうことを本当に贅沢だというのかも知れないと思う。


 今や寝室となった自室に戻り、ベッドに入る。ベッドは普通のサイズで、2人で寝ると触れあうほどにちかい。


 ベッドの中で、人が一人分入るスペースをあけて端による。それだけで、なんとなくわくわくする。

 ユウコはすごく不思議だ。ユウコのことを考えるだけで嬉しくてドキドキしてわくわくして、たまらなく幸せな気分になる。


 ユウコのことを考えていれば、一人でも平気だ。ユウコのことを待つのはむしろ好きだ。何分でも何時間でも同じで、あっという間に過ぎている。


「ふぅー、お待たせー」


 ほら、すぐだ。時計を見ると私があがってから20分近くたっているけど、感じなかった。


「シューちゃん、今日はね、料理の仕込みも手伝ったの。ふふふふ、順調に出世してるわ。このぶんなら賃金アップも遠くないわね」


 ユウコはいつも寝る前には今日あったことを話してくれる。それを聞くとまるでずっと一緒だったみたいに思えて嬉しい。

 でもユウコは情報収集だけじゃなく、真面目にお金稼ぎも目的らしい。未知の魔法具をつくって研究へ提供してるというだけで、私が貸した分なんか軽く帳消しになるくらい本来もらえる。

 ユウコの存在を表沙汰にはしたくないので、おじ様がかわりにあげようとしたのに、世話になってるからと辞退した。あまつさえ私にお金を返そうとするし。

 今まで興味がなかったから中身も見なかったけど、お金だと渡された箱にはそれぞれの種類のお金がぎっしりつまっていた。銀貨、四分金貨、半金貨、金貨、大金貨の五種類が5箱ずつあったから、一つくらいなら遠慮なく使ってくれると思ったのに、逆に軽々しく財産があると言っちゃだめと怒られるし。

 そこだけは本当に不満だ。


「ユウコ」

「なに?」

「……バイト楽しい?」

「もちろん。楽しいだけではないけど、でもやっぱり楽しいわよ」


 楽しんでいるなら、いいか。ユウコがしたいならいい。いつか必要にかられたら使ってくれるだろう。


「シューちゃんもバイトする?」

「私はいいよ。ユウコの話を聞くだけで楽しいもん」


 本当はすこし、興味はある。でも今はそれよりやらなきゃいけないことがある。だからいい。


「ふわぁ、そろそろ寝ようか」

「うん。電気消すね」

「お願い。おやすみ、シューちゃん」

「おやすみ、ユウコ」


 明日がくると信じられる。明日もいい日になるだろうと、無条件で信じられる。全部ユウコのおかけだ。

 おやすみ、ユウコ。また明日。











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