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 世界のどこにでも転移できるようになった。我ながら凄い!

 テンションのあがった私は結花奈を連れて、今や懐かしくさえある魔法使いの国や、ユニパル国のお姫様に会ってみた。


「ユカナ!? 会いに来てくれたのですね!? ああっ、とても嬉しいです」


 お姫様は本当に結花奈と仲良しらしく、忍び込んだ私たちに驚くより先に、結花奈に抱きついた。

 それから落ち着いてから、結花奈が紹介してくれた。


「まあ、あなたがユカナのお姉様ですのね」


 お姫様はちっちゃくって可愛くて、抱きしめるといい匂いがした。


「ってこらー! なにしてんじゃ!?」


 結花奈に怒られた。

 お姫様はさすが心が広くて笑って許してくれた。


「さすがユカナのお姉様、身分を厭わぬ爛漫さですね」


 ………許してくれた、のよね?


「それにしても、銀髪姿のユカナというのは、なんだか変な感じですわ」

「あ、忘れてた」

「最近はすっかり魔法かけっぱなしだったものね」

「えっ、これ魔法何ですの? すごいですね。私にも教えてください」


 それからしばらく談笑して、またねと言ってわかれた。お姫様は嬉しそうに笑ってくれた。


「いやー……それにしても、優姉も、やるじゃん。今日は頑張ったね」

「上からねー」

「まぁね」

「その受け答えはおかしいわよ」


 なんていいつつ、結花奈が心からお姫様と会えたことを喜んでくれてるのはわかってる。サプライズというか完全に思いつきだけど、我ながらナイスチョイスだ。


「さて、そろそろ帰りましょうか」

「うん」


 結花奈と手を繋いで戻る。鏡をだして、位置を特定すれば簡単だ。イメージはぐーるぐるマップ。


「よし」


 シーコさん家の裏手に戻ってこれた。路地裏の建物に挟まれ、ちょっと臭う環境から一瞬ですぐそばに木々があり空がひろがる景色。気温も少し違うし、なんだかちょっと変な感じだ。


「明日はシューちゃん連れて、一旦シューちゃん家に帰ろうかしら」

「お、いいね。雪凄いんでしょ? って、おい。遊び気分かい。休日にいけばいいでしょ」

「えー……わかってるわよぅ」


 わかってる。わかってるわよ。でも、うー。はいはい。頑張ればいいんでしょ。

 私はちょっとだけ結花奈に拗ねてることをアピールしてから、家のドアを開けた。


「ただいま戻りましたー」

「おや、お帰りなさい、ユウコちゃん」

「あ、ちょうどいいところに。シリルリさーん、お土産どうぞ」









「と言うわけで、今週末はお出かけしましょ」


 ベットにのりあがって壁に背中をもたれて脱力しながら提案する。ベットの縁に行儀よく座ったまま話を聞いていたシューちゃんは、私を向いてうんと頷いた。


「わかった。どこに行くの?」

「そうねぇ。やっぱり港町のラディンね。アルキアさんとか、チルラちゃんとか、ひさしぶりに会いたいわね」

「あー、懐かしいね」


 シューちゃんは嬉しそうに目を細めた。思い出しているのだろうか。

 チルラちゃんと仲良しだったものね。アルキアさんは……また邪険にされる姿が目に浮かぶけど。うん、でも会いたいわ。


「でもあれからもう一年以上たつよね。私たちのこと、覚えてるかなぁ」

「縁起でもないことを言うわね」


 寝転がって私よりに頭を向け、見上げながらイヤなことを言うシューちゃんに、手を伸ばしてデコピンする。


「いて。うー、だって、私たちは旅が多いけど、ずっと住んでたらいくらでも出会うしなぁ」


 シューちゃんが私のデコピンした手をとって、なんとなくもぞもぞもみもみしながらも不安そうに口をとがらせる。


「大丈夫大丈夫。シューちゃんが覚えているように、きっとみんな覚えてるわよ」


 遊ばれている手を強弱付けて握りながらなだめるように答えた。

 シューちゃんの不安はわからないでもない。一方通行だと悲しいもんね。でも大丈夫。少なくともチルラちゃんほどの付き合いだったのに、顔を合わせても全く忘れられてるなんてないわ。


「それに、もし忘れられてるとしても、思い出すまで話せばいいじゃない」

「うーん」

「それとも、忘れられてたら、もう知らない? チルラちゃんとは友達やめる?」

「……やだ。やめない。わかった。うん。頑張るよ」

「頑張って」


 シューちゃんはいい子だなぁ。

 人見知りではなくなってきたけど、まだちょっと人間関係では不安が残るみたいだけど、大丈夫。というか、シューちゃんみたいな美人さんのことはただすれ違ったってなかなか忘れないと思うわ。


「ねー、ユウコ。でも、何で来れたとか、明日いないのは何でとか聞かれたらどうするの?」

「うーん、考えてなかったわ」


 アリアベルちゃんには普通に説明したけど、うーん、魔法陣の開発でうんぬんでいけないかしら?


「新しい魔法陣開発じゃだめ?」

「いいけど、人間が移動する魔法陣はできないよね。そのうちばれちゃうんじゃない?」

「うーん。いっそ、結花奈が勇者なのをばらして、勇者魔法ですとかどう?」

「それなら、いいのかなぁ。でも、異世界ってばれたらダメだよね」

「いっそリアお姉さんの名前を騙るとか?」

「えー……どうなんだろ」


じゃあもう勇者全然関係なくて、特殊魔法使えるってオチとか?

 結花奈も最近では髪の色だけは変えてるけど、特に意識していないし、ばれるとかってありえるのかしら。

 うーん。でも、ばれてしまったらどうしようもないし。


「……まぁ、なるようになるでしょ」

「……そうだね」


 おや。突っ込まれるかと思ったけど、シューちゃんは相槌をうって

完全にベットにのりあがって身を丸めた。

 私の手は握ったままだ。


「眠くなっちゃった?」

「うー、ううん。まだお話する。ユウコと2人キリでお話するのも、そんなに、もう長くないから」

「……そうかもしれないわね。よし、じゃあ今日は一緒に寝ましょうか」

「いいの?」

「もちろん。ぎりぎりまで話しましょ」

「うん」


 まだ、私は覚悟ができていない。でもシューちゃんはちゃんと考えてるんだ。しっかりしないと、と思う反面、まだ決心はつかなくて、情けない。

 でも今はシューちゃんとのお喋りに集中しよう。それがシューちゃんへできる、せめてもの誠実さだ。











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