表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/197

118

 まずはシューちゃんね。

 シューちゃんが私以外の恋人……ここは具体的に、リアお姉さんとしよう。迷惑だろうけど想像するだけだし、相談にのってもらってるついでだ。


『ユウコ、私…やっぱりリアさんのことが、好きになっちゃった』


 ……なんか、すっごい複雑だ。ていうか何で私、リアお姉さん選んだの。目の前にいるからって、同性を選ばなくてもいいじゃない。

 よし、架空の男性にしよう。


『ユウコ…今までありがとう。私、あの人のところに、お嫁に行くことにしたよ』


 ……泣きそうだ。あんなにかわいかったシューちゃんが、立派になって。


「ユウコちゃん? 涙目になってるわよ? そんなにリアルに想像しなくても」

「おっと、えー、とりあえずシューちゃんは大丈夫ですね。お嫁に行くとなると泣けますけど、あくまで母親としての心境ですから」


 恋人として嫉妬したりはない。さっきはリアお姉さんだから複雑だったけど、うん。シューちゃんが素敵な人と出会って幸せになるなら大賛成だ。


「どんな想像してたのよ。いいけど、納得したならいいけど。じゃあ次はユカナちゃんね」

「はい」


 で、ユカナね。リアお姉さんとはスキップして架空の男性と、と。


『優姉、ごめん。実は私、好きな人ができたんだよね』


 む……。


『だから、この人と結婚することにしました。祝福してくれるよね?』

「……」


 なんか、ものっすごい、嫌だ。


「ユウコちゃん? 何だか不細工な顔してるわよ?」

「う、いや……何というか」


 いや、単純に、シューちゃんより結花奈のことを子供扱いしてるからだろう。より付き合いが長いし、見た目も小さいし。


「ちょっと待ってください。今想像してるので」


 えーと、じゃあ恋人をつくった想定でいこう。


『優姉、この人私の恋人なんだ。いいでしょ。格好いいでしょ?』


 う、うう……い、嫌だ。というか、結花奈が私以外の人とキスする以前に、恋人の距離感でいるだけで、なんか嫌だ。

 心狭すぎるだろう。シューちゃんは寂しいとは思うけど応援しようと考えられるのに、結花奈は反射的に嫌って拒否して考えられない。


「………………」

「ねー、まだ?」

「り、リアお姉さん」

「はいはい。どうだった? 私が判断してあげましょう」

「い、いえ……その、相手が自分以外と付き合うと言うだけで凄く嫌な気分になったり、自分とだけキスしてほしいと思うのは……恋ですか?」

「私に聞かなきゃわからない?」

「……ですよね」


 いや、理屈としてはわかる。わかるけど、私、結花奈のこと好きなの? もちろん好きだけど、恋愛感情と言われても全然ぴんとこない。

 結花奈が恋人つくるのは嫌だけど、自分がなりたいかと言われると、どうなんだろう。恋人になること自体は嫌ではないけど、積極的になりたいかと言われたらよくわからない。


「うーん、私、結花奈のこと好きなんでしょうか」

「あら、ユカナちゃんなのね。ふーん」

「……どうせ隠しても後々ばれますから。で、どう思います?」

「え? どうって言われても、お幸せに?」


 そうじゃなくて……いや、そうじゃなくても、どうするかは私が考えなくちゃ駄目よね。

 うーん。どちらかを選ぶとしたら結花奈、というのが今の結論ではあるけど、無理に付き合って関係は壊したくないし、どうすれば。


「さすがにどう話すかまでは私もわからないし、後は自分で頑張ってね。よし、じゃあさっそく、魔法の授業を開始します」

「あ、はい。お願いします」


 とりあえず、まだ初日だしね。後で考えるか。









「はい、これで本日の授業は終わります。質問は?」

「はい、リア先生」

「なぁに?」

「あの、人間の魔法とほぼ基本は同じみたいなのですが」

「そりゃそうよ。元々エルフって人間だもの」

「えーっと、こう、エルフならではの魔法を教えてほしいのですが」

「エルフならではねぇ。自分以外の魔力も利用するのが一番の特徴だけど、魔法体系的には基礎は同じだし。一応エルフオリジナルもあるけど、人が今使ってるのを効率化したものとかで、少なくとも召喚魔法はないわね」

「そんなぁ」


 そのものはなくても、もっと進んだ魔法があるかと思ったけど、規模や効果があがっても基本が同じなら、期待していたほどの発見はないだろう。

 前勇者に期待するしかないのだろうか。

 露骨にがっかりする私に、リアお姉さんはぽんぽんと肩を叩く。


「ごめんなさいね。期待に添えなくて」

「…いえ、私が勝手に期待しただけですから。それに、勉強になりました。大胆な省略化でも同じように発動するのには驚きました」

「でしょ、人間の魔法陣って結構無駄が多いのよ。私があなたにあげた魔法陣は人間がつくったものだけど、私が改良してたのよ。気づいてた?」

「そうだったんですか。綺麗な式だなぁとは思ってたんですよ」

「いやぁん、照れるわ」


 頭をかいて恥じらうリアお姉さん。勉強になるには違いないし、折角なのでもっと教えてもらおう。


「リアお姉さん、一週間の間、暇なときだけでいいので、もっと教えてもらえませんか?」

「いいわよ。午前中だけでよければ、毎日教えてあげる」

「いいんですか!?」

「もちろん。大事なお客様だもの。それに一週間しかいないんだから、サービスしちゃうわ。なんでも言って」


 飛び上がって喜ぶ私に、リアお姉さんはウインクをして優しい笑顔を浮かべる。

 えー、そんなこと言っちゃっていいんですかー?


「本当ですか? じゃあ、その、厚かましいことお願いしちゃってもいいですか?」

「いいわよ。なに?」

「その……お土産にお米をわけていただきたいな、なーんて」

「……いいけど、もう帰るときの話をしなくても」


 うっ。ごめんなさい。それもこれもお米が美味しすぎるのが悪いんです。


「まぁ、安心して。御婆様も最初からそのつもりでお米を用意してるから」

「リアお姉さん大好きです!」

「はいはい」











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ