Here is a state of Alice.
“不思議の国”。
この国に生まれた俺は、チェシャ猫でも帽子屋でも、ましてやアリスでもない。
なんの役割も与えられなかった、言うならば“落ちこぼれ”。
俺の名前――――“アレン”なんて、物語に一度も登場しない、脇役にも入らない、不思議の国の住人だ。
だから、なんの変哲もない人生を歩み、誰にも知られずにただ死んでいくのだと思っている。
別にそれで構わないし、そんな人生が嫌だと思っても変えられない。俺はこの御伽話の世界で、居ても居なくても変わらない存在だから。
「……難しそうな顔してっけど、まーたなんか考えてんの?」
そう尋ねてきたのは、明るい茶髪に長身の青年――――“チェシャ猫”だ。
俺とは違う、役割を貰った存在。そして、役割を貰った者としては珍しく、俺と交流のある存在。
もっとも“チェシャ猫”だから気まぐれで、俺との交流もいつ絶たれるかはわからない。
「別に。お前こそ、久しぶりだな。忙しかったのか?」
「いーや。俺は“チェシャ猫”だからさ。アリスの前でにやにや笑って、ちょっかい出してりゃいいんだ。猫なんて、気まぐれなもんだろ」
チェシャのそんな言葉に、俺はただ苦笑を返す。
役割を貰わなかった不思議の国の住人は、別にこれといったこともせず、一生をただだらだらと過ごす。生活的には、俺もチェシャも似たようなものなのだ。
「そうだ、アレン」
ふいに、チェシャが言った。
「お前、退屈してるだろ。おもしろい奴を連れてきてやろうか?」
「おもしろい奴?」
俺の問いに、にやっと笑うチェシャ。
そして、どこかへ行ってしまった。気まぐれなチェシャのことだ、俺にも飽きたんだろう。そう思っていた。でも、彼が連れてきたのは――――。
*
「こんにちは」
そう笑ったのは、ふさふさの金髪に、水色の瞳の少女。紛れもない、この不思議の国の主人公。
「アリスです。貴方は?」
この世界の中心である少女は、何でもない俺にも笑顔を向けてくれた。
その時、何故だろうか。この退屈で平坦な毎日が、変わると思ったんだ。
「アレン」
俺がそう名乗ると、アリスは手を出した。
おずおずと、その手を握る。
「よろしくね、アレン」
そう言ったアリスの笑顔は、太陽が輝いたように綺麗で、眩しかった。
きっとこの出逢いは、
新しい御伽話のハジマリ。
題名は良いのが全然思いつかなくて、とりあえずってカタチでつけてます。だから、ころころ変わるかも。
執筆原因は某アリス系漫画を読んでいて、なんかアリス物書きたいなーっと思って、無い頭を必死に振り絞って書いた短編。てか、長編オーラがぷんぷんする(笑)。
ちなみに主人公の名前の由来は、執筆中に某ジブリ映画のサントラを聞いていたから←適当。
ちなみにその次は、こんな話なのにきゃりーぱみゅぱみゅを聞いてました(笑)。