吸血鬼の集会
この世界に住んでいる吸血鬼の始祖を紹介しています。
彼らとの関係はこれからはじまるストーリに絡んでくる、、、、はず!
アメリカ、ラスベガス。
夢の都市。総合娯楽の大都市。夜景が美しい都市。
多くの名を冠し、世界をリードする国。
そこに、5人の吸血鬼がそろっていた。
一人は赤髪に赤目。
胸元が大きく開いている真っ赤なシャツに、真紅のエナメル製の靴。特徴的なほど特徴がある鋭い目つき。椅子に深々と座り王者の風格を醸し出している。
しかし彼はまだ500年しか生きていない年若い吸血鬼。ただ、アメリカを今の経済大国へと押し上げた一番の功労者であるといえるだろう。
“経済大国アメリカ”
叶わぬ夢はないといわれたほどの国。
そこに住むのは、炎と勝利を支配する吸血鬼の始祖。
「ファイガってほんとアメリカ好きだよね」
「好きだから住んでいるんでしょ」
「好きでないと住めない国ですからね」
双子の吸血鬼が同時に喋る。まるで、かぶるように重ねるように言葉を発する。片方は女性、片方は男性。瓜二つの顔をもち、同時に話す姿を見てもどちらがどの言葉を言っているか聞き取れない。
見事なブロンドの髪、サファイヤのような瞳。彼女・サイネの髪は腰まで伸びている見事なロール。彼・サロネは短髪に右側だけ伸ばしている前髪の先に瞳と同じサファイヤの宝石をつけている。
彼と彼女は、魔術と知識を際限なく吸収する。
イギリスに住む、稀にして稀有な双子の吸血鬼の始祖。
「私はあまり好ましく思わない国です」
凛とした涼しげな声が響く。5人の中で一番年を取った外見をしている彼女。
彼女は歴史と未来を操る吸血鬼。
その姿は妙齢の女性。
年を取ることのない吸血鬼の中で、100年単位で死んでいき、3年越しに生れ出る。
その姿は見事な白髪に、少女のような白を基調とした肌を露出させないドレス姿。太陽の国として栄えたスペインに住む、希少にして貴重な年を経る吸血鬼の始祖。
ラスベガス一高いホテルの最上階。そこで、彼らは会談していた。
50年に一度、始祖は集まる。
それは習性ではない。古い昔から行われている慣習だ。まだ、吸血鬼の始祖が繁栄し、国を築いていた時代から続く慣習だ。『伝統』といってもいいだろう。
「うるせーよ。てか、住み心地がいい国に俺は住んでるだけだ」
赤を纏うファイガはアックスに向かって悪態をつく。その姿はどう見ても友好的ではない。
同じ吸血鬼であるが、血族以外の吸血鬼とは基本的接点を持たないのが「吸血鬼」と呼ばれる種族の特徴だ。同種族故の連帯感はあるが、接触する機会は少ない。それは、己の領土を出ない吸血鬼が基本であり、相互に理由があるときは争うこともあるからだ。
決して「同種であるから」と、戦わない種族ではない。
しかし、決定的に数が少なく血族を増やす機会も少ない彼らは、互いに争うことなく、干渉しあうことなく暮らしていけるよう、接触を最低限にしている。
「お前はどうなんだ?あっちこっち転々としやがって」
ファイガはねめつけるように、隣に座るアックスを見る。
友好的ではない声と態度。しかし小ぶりの円卓に座り、思い思いの飲み物を目の前に置いて、彼らは談笑とはいえない談笑をしている。
50年に一度とはいっても、大昔とは違いお互いに伝えるべき情報はすでにネット上で公開しあっている。だから、この会談は久しぶりの旧友同士の飲み会といった意味合いほどしか価値がない。
「俺は気分で住みたい場所を変えるほうが好きなんだ」
「変わってんな」
「かわってますね」「かわってるね」
「変わっていませんね」
それぞれが、それぞれ思うことを話す。
会談でもなければ、談笑でもない。
ただ親しい友達同士の他愛のない会話。それは、学校で喫茶店で路地で行われる会話と違いはない。
これが彼ら彼女らの会話。
それが彼ら彼女らの姿。
ここは、アメリカ。
夢が叶う都市。そして、夢が潰える都市。
そこに、始祖が5人、集っていた。
久しぶりの投稿で、そんなに長くはなかったと思いますが、力関係や協力関係の図をイメージしてもらう程度で。。。