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業務執行中

 シャーバ視点で進んでいきます。背景の描写が曖昧なので、御好きにご想像下さい。ちなみに、シャーバは「おわりのおわり」に登場した成年です。

 隅々まで掃除を。

 ああ、あまり、磨きすぎないように、痛みますからね。

 そこ、あまり張り切りすぎないよう。身体を怖いしてはいけませんからね。


 先日の処理は済みましたか?

 重要書類はこちらに回してください。末端は貴方達にまかせます。

 実践訓練?第4部隊に提出して下さい。もれなく紛争地域に連れてってくれますよ。


 今月の売上、下がっていますね。イタリア支部に連絡を。

 シーランに対する情報開示は控えてください。彼ら先月分の情報料を払っていませんからね。

 おや。この間のミノタウルスの連中から手紙ですか?・・・捨てておいてください。・・・やはりください。


 はぁー。まったく、いくつ指示を出しましたっけ?

「ああ。そうだ。来月のシネーシャ音楽団の講演会があるんでしたね。報告しなくては」

 それから、そう。各地域に伝令をいれて、いつでも戦闘態勢が取れるように。連絡網の構築を新たにするよう、通達もしなくては。

「ヨハネスどものがいなければ、少しは楽ができるんですが・・・」

 ・・・・・・私としたことが、考えても無意味な事に思考を割くとは。

 無駄な時間は一秒でも減らすべきだと、言っている私がなんたることだ。しかし、

「あなた、どうしてまともに仕事ができないのです?」

「すっ、すみせません!!」

 グレースーツを無難に着こなすロインズに、苦笑いを湛えながら(目は笑っていませんよ)注意する。

 彼は200年ほど前に吸血鬼、我らの血統に列なった年若い吸血鬼。もっとも、吸血鬼で200年も生きれば長寿であるといわれていますが。大概は、500年ほどでその寿命を終ってしまう。

 しかし、彼は100年前と変わらず100年を過ごしている。まったく、成長の片鱗が無いわけではないが、どうしても仕事の効率は悪い。もっとも、彼の同輩と比べて見てしまっているためだと分かってはいるのですが。


「シャーバ。先日の処理終了しました。ミノタウルスの件ですが、こちらで処理しましたので。あちらから、何らかの行為を受けることはありません。音楽団には、連絡を入れておきました。緊急事態ということでもないので、このまま各地を回ってもらう予定ですが、主様への報告は負担になるからよいとのことでした」


 仕事が素晴らしくできる同輩、アルティナと比べてしまいたくもなる。

「分かりました」

 大概の事は彼女に任せてしまえば済んでしまうので、私としても重宝するのですが。如何せん、先走ってしまうこともあるので、使い道を誤ると危うい事態を巻き起こすことになる。

 その点、仕事の効率は悪いがしっかりと実績を積み重ねるロインズは居てくれると助かることもある。


 即断即決のアルティナ。

 優柔不断のロインズ。


 まったく正反対の性質を持つ彼、彼女ではありますが、いざというとき私以上の働きをしてもらわないといけないですからね。

 しかし、私自身の仕事を全て委ねるにはまだまだ実践経験が足らない部分があることは事実。その点を踏まえて、どこまで付きあわせるべきか。

 吸血鬼としての実力は、板についてきましたし。

 私たちの血統では、1000年を超えるものが居るのは普通のことなので、実力的にはやはり最下位。しかし、いつまでも実務だけではいけません。

 やはり、今回のヨハネス・ハイネスの件に絡んでもらいましょう。


「二人とも、昼食後は午後の業務はいいので私の部屋に来て下さい」

 フランスでの暮らしは基本ホテルですが、30階あるホテルの中ほどから上は全て我らのものなので好きに使えるのは利点です。世間では仕事場と寝食する場所が同じというのは、普通ではないらしいですが。私としては通勤の必要性がない事の方が喜ばしい。

 まぁ、通勤なんてしたこと無いですが。


 最上階は主様の執務室なので、私は28階にある己の部屋に向かいながら、この件をどこまで託すか思考にふける。

 28階はすべて私の仕事スペースであり生活の場なので、エレベータから近い部屋に入る。

 各部屋には備えつけのコーヒーと紅茶を設置しているので、どこでも好きに仕事ができる環境が整っているのは最高ですね。

 部屋に入ってさっそくコーヒーを入れる。

 頭を冴えさせるにはうってつけの飲み物だ。思考労働は苦ではないが、やはり疲れているときには欠かせない。

 まぁ、こういった仕事場はレイドなどは信じられないらしい。この環境のどこに圧迫感があるのか、いまだにわかりませんが。


 一息つきながら、全ての部屋にある書類棚に目を向ける。生活品が整えているのはキッチンだけ。備えついていたテーブルも取り払い、仕事がしやすいようデスクを運び入れ、中央に据えている。

「さて」

 来客用の椅子などないので書類に埋まっているソファーの上を整理する。たまに、此処で寝ることもあるので設置しているだけなので座り心地がいいものではありませんが、無いよりはましでしょう。

 もう何年も変えていないので、綿はつぶれて固いのですが、クッションもないのでこのまま座ってもらいましょう。長話にならないでしょうし。

 

 散らかっていいる部屋を整理している時、控え目なノックの音が響いた。

「入ってください」

「失礼します」「失礼します」

 はじめにロインズが入り、アルティナが続く。

 私の寝室兼仕事場に足を踏み入れたことは数え切れないほどあるので、この部屋の惨状を見ても前ほどうるさく言ってこなくなったのはここ最近のことですかね。

 なんて、どうでもいい事を考えながら二人にソファーを進める。

 私は中央のデスクに座ることなく、二人の正面になるよう机に腰掛ける形で向かい合う。

「飲み物は自由に注いでください」

「あ、大丈夫です」「私も平気です。それで、御用件はなんでしょう?」

 ロインズもアルティナも背筋を伸ばして座っているのですが、ロインズは緊張から、アルティナは何時も通りピンとしている。

 なんだって、同じような姿勢なのにこうも違うのでしょうか。

 ああ、いけない。余計な事に思考が流れていっています。


「二人はヨハネス・ハイネスについてどれほどの知識がありますか?」

「ヨハネス・ハイネス・・・・ですか」

「主様が毛嫌いしている組織ですね」

「それだけですか?」


 二人はお互いを横目で窺かがい合う。

 どうやら、私が何を聞いているから察しはついているようですね。


「“裏切りと友愛の組織”」

「他の組織を内部から崩壊させ、取り込む組織だと、認識しています」


 二人の解答に私は満足して、頷いた。




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