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つづきのおわり

 この小説の世界観がわかります。

 この世界にはすでに、人間以外の種族がおり。認められています。それを踏まえて、今までの項目を読み返してみるとよりわかると思います。

 

 ヨナスは、ミアを腕に抱きながら逃げることなく巨漢に向かう。

 なぜなら逃げ切ることはできないからだ。

 さっき巨漢が言っていたことは真実、どうしようもない現実なのだ。ミアをつれて他の土地に行けば、その土地を縄張りとしてるモノたちに殺されてしまう。


 これは、経験済みだった。


 ミアの正体がばれていないときは平気なのだが、分かる者にはわかるらしく、多種族、それも、戦闘種族の血を引いているとわかれば、容赦なく敵対行動をとってくる。

 たとえ、ほとんど人と同じ力しかない少女であろうとも。彼らは容赦することがない。


 ミアは、人とリザードマンの血を引いている。

 リザードマンは戦闘種族として、東欧では有名だ。各地の戦場を渡り歩き、武力だけで国を興したこともある。武闘派の種族だ。

 それゆえ、多種族をたびたび侵略していた。


 そういった歴史もあり、あまりヨーロッパでは歓迎されない一族なのだ。そのため、見かけることがあればよくて追い出され、悪くて殺されることになる。

 ミアのような少女でも殺そうとするのだ。これが男だったらまずもって命はないだろう。


 この世界には、悪魔がいる。

 この世界には、怪物がいる。

 この世界には、魔物がいる。


 これは、人も共通して認識している事実。

 ヨナスがミアの種族を知っていてかくまっているのは、こうした人との営みが基盤に築かれているからだ。

 しかし、その土地に住む種族のことに詳しいというわけではない。ミアの例は稀ではあるが、多種族が縄張りとしている土地で生きていくためには、金銭を貢ぐというやり方は昔から変わっていない。

 棲み分けがはっきりとしている分、こういったルールは変わらず不変に続いているのだ。


 だから、ヨナスもミアも逃げることができない。

 巨漢の怒りから、逃げることはできない。それが、いかに理不尽なものであるとしても。


 一直線にヨナスとミアの目の前に迫る巨漢の前に、滑り込むようにアックスが入りこんできた。


 それは自然に。当たり前だという顔をして。


「おいおい。何、変な勘違いをしているんだい?そんなこと、わざわざ聞くまでもなくわかりきってることじゃないか。だから、この二人はまったく何も悪くない」


 そういって、平然と眼前の巨漢とにらみ合う。

 まるで圧迫感など感じていないかのように。

 頭部に生えている牛の角を見てもまるで驚かないことから、彼もまた、人ではないのだろう。


「どこの者だ」


 アックスの眼前に口を寄せて重低音で問いただす。その姿はまるで、頭部から生えた牛の角でアックスを刺し殺そうとしているようにも映る。

 しかし、アックスは怯むことも、臆することもなく―――


「吸血鬼」


 軽い自己紹介をするように答えた。

 その種族名に、その場にいた3人の体が固まる。


 よりによって、吸血鬼!


「はっ!そうか。わざわざご苦労だ。」


 巨漢も近づけた顔を離す。その体から敵意が消えた。

 頭部の角も引き込める。

 体を一歩後ろに引いて、腕を組んだ姿勢でアックスに臨む。


 吸血鬼。


 一般的にも広く知られている一族。

 無名、有名に限らず多くの作品に登場する種族だ。

 なにより、その伝説は他のどの種族よりも多く、また、現代でも(・・・・)伝説を作り出し続けている一族でもある。


 そんな一族に、多くのものは敬意を払っている。

 巨漢も例に漏れることなく、アックスの種族に敬意を払って態度を少しだけ改めた。しかし、ここは巨漢の種族の縄張り。力が強いのは、その土地に住んでいる者たちなのだ。


「そうか。しかし、ここは我らの土地だ。お前に非難されるようなことは何もしていない」


 少しだけ、改まった言葉で巨漢はアックスと相対する。


「それはそうだろう。別に何も責めていないよ。俺は彼らのスイーツが気に入ってね。少しばかり、恩返しがしたと思ったまでだ。八つ当たりのようになってしまって申し訳ない。気分を害したのなら謝る。すまなかった」


 アックスは、申し合訳なさそうに謝罪した。

 その態度がかえって、巨漢を困惑させる。

 敵意がないにしても、アックスの態度は思いもよらないものだったからだ。


「・・・何故かばう?お前は客だろ?」


 アックスの態度の理由がわからないとばかりに、巨漢は問いかける。


「それはスイーツが美味しかったからだよ。だから、彼らには少しでも長く営業してもらいたいと思ってね。それに、昨日も来てたでしょ。そう何日も日を開けずに集金(・・)にくることないと思うんだけど」


「ふん。ソレはリザードマンの血を引いている。油断ならない一族だ。金をもらいにい来るのではない。監視しに来ているだけにすぎん」


「・・・監視、ね」


「ああ。それよりも、貴様らもここに住む、などといわないだろうな?」


「安心していい。家は別にある。ここには観光できているだけ。まぁ、なるほどね。リザードマンの血を引いているから監視か。ふ~ん。それだけじゃ、ないよね?」


「だったらどうする、よそ者」


「・・・別にどうすることもない、かな。まぁ、二人が望めば、手ぐらい貸すけれど」

 

 夜の暗闇の中にあって、アックスは堂々と言い放った。




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