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32歳、人生リセット、ただし異世界で  作者: トール
五章 欠けたピース

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マナクリスタル・デバイス・プラス

マナクリスタル・デバイス・プラス(MDプラス)

5メートル級のアンドロイドをベースとした、汎用型ゴーレム。頭部、胴体部、上肢、下肢、バックパックの部位からなる様々なパーツ、ジェネレータを組み合わせることにより、様々なミッションを可能にする。更には携行武装やパーツにより高度なミッション遂行も可能。


開発目的は、ジェネレータおよび搭載マナクリスタルの大型化、並びに作戦継続時間、エリアの拡大である。


なお、頭部、胴体部の合体特殊パーツを装着することで、蒼龍、飛龍、ダービーが直接機乗、操縦可能となる。


第二の開発目的は、ダービーの単騎作戦行動のエリア拡大である。


 第一大隊が、東上級ダンジョンにて、新型の重装甲ゴーレムが大森林地帯を焼き畑しているころ……。


 北の大山脈のふもと、ノースミッドタワーの地下深く。金属と溶剤の匂いが充満する実験室で、技術担当のゴーレムたちが騒がしく議論を交わしていた。


 マナクリスタル・デバイス・プラス――5メートル級のアンドロイドをベースとした、次世代汎用型ゴーレムの設計会議だ。


「開発目的は、ジェネレータおよび搭載マナクリスタルの大型化。作戦継続時間とエリアの拡大です」


 黒い装甲のゴーレムが、モニターに投影された設計図を指し示す。


「加えて、頭部と胴体を一体化させる特殊な合体パーツを装着することで、蒼龍、飛龍、そしてダービーが直接操縦できるようにする。これが、ダービーの単騎作戦行動エリアの拡大という第二の開発目的です」


 会議は進み、次々と課題が提案されていく。


「単騎での深侵攻となりますと、ジェネレータの大型化とマナクリスタルの増強が不可欠です。必然的に筐体部分のサイズアップが必要となります」


 青いゴーレムが、カタカタと腕のパーツを震わせながら言う。


「同時に脚部駆動部分の強化、自重増大に伴う大型化が必須です」


 赤いゴーレムが、頭部をわずかに傾けて続けた。


「最大速度を勘案すると、新型ブースターの開発が必須です」


 緑のゴーレムが、手を叩くようにして意見を付け加える。


 技術担当ゴーレムたちは、まるで玩具の組み立てを話し合っているかのように、あーだこーだと騒がしい。しかし、その声は、この世界に革命をもたらすような、恐るべき計画の一部だった。


「テストパイロットとして、ダービーを推薦します」


 一人のゴーレムが、無感情な声で提案する。


「異議なし」


 全員が声を揃えて賛同した。まるで最初から決まっていたかのように。


「ダービーをどうやって誘導する?」「特殊な合体パーツを装着するのか?」「彼の生体反応はどうなる?」


 ゴーレムたちは、再び姦しく議論を始めた。


 その日の夜、ノースミッドタワーの地下深くで、新たなプロジェクトが始動した。それは、人類の歴史を塗り替えることになる、恐るべき計画だった。


 ◆


 北の大山脈の地下深く、ノースミッドタワーの地下実験室。金属の匂いと、機械の駆動音がこだまするこの場所は、現在、熱気あふれる議論の渦中にあった。マナクリスタル・デバイスとして前線に供給されている重装甲ゴーレムたちの、膨大な戦闘データが解析され、次の改良モデルの方向性が話し合われているのだ。


 部屋の中央に置かれた巨大なホログラムには、様々な戦場のデータが映し出されている。火炎が燃え盛る大森林、巨大な魔物が跋扈する荒野、そして薄暗い古墳型のダンジョン。


「現在作戦中の大森林では、火炎放射器の大型化が必須と判断されます。データによると、5メートル級のサイズがもっとも有効です」


 赤い装甲のゴーレムが、モニターを指し示しながら、興奮気味に腕をカタカタと鳴らす。


「大型の魔物と対峙するには、5メートルクラスの筐体が不可欠です。現在の主力ゴーレムでは、力不足が明らかになっています」


 青い装甲のゴーレムが、重々しく同意を示す。


「逆に、狭い古墳型ダンジョンでは、1メートル級の特化型が必須と想定されます。通路の狭さや、敵の隠密性を考慮すると、大型モデルは不利です」


 緑の装甲のゴーレムが、腕を組んで反論する。


「空中型、水中型、耐熱型、耐寒型等のパーツ構成、運用の実績データが不足しています。これらのデータ収集のため、まずは試作機を開発し、実戦投入すべきでしょう」


 黄色の装甲のゴーレムが、冷静な声で提案する。


 ゴーレムたちの議論は白熱し、まるで子供がおもちゃの設計図を話し合っているかのようだ。しかし、その声は、この世界を根本から変えるような、恐るべき兵器の未来を語っていた。


「では、火炎放射器の大型化モデルと、小型特化型モデル、どちらを優先して開発しますか?」


 リーダー格の黒いゴーレムが問いかける。すると、一斉にゴーレムたちが手を挙げ、自分の意見を主張し始めた。その様子は、まるで子供たちが新しい遊びを提案し合っているかのようで、どこか滑稽でもあった。


 ◆


「まずは、プロトタイプを作ってみよう」


 俺は、リーダー格の黒いゴーレムの、ツルリとした丸い頭を手のひらで転がしながら、そう提案した。ゴーレムは首を失った胴体から、ピピッと奇妙な電子音を立てていた。


「テストパイロットは俺が務めるよ。まずは、汎用型で地上歩行タイプを頼む」


 そう言うと、俺はもうワクワクが止まらなかった。


 だって、これって、5メートル級の巨大ロボットだろ?子どもの頃に夢見た、あの巨大な鋼のヒーロー。俺がそのコックピットに乗り込んで、操縦桿を握り、巨体を動かすんだ。想像するだけで、全身の回路がショートしそうなくらいに痺れる。


「御屋形さま、そのように興奮なされると、生体臓器への負荷が……」


 黒いゴーレムが、首のない胴体から心配そうな電子音を出す。


「ふふふっ、それだけ魅力的ということだよ」


 俺は、転がしていたゴーレムの頭を胴体に戻すと、設計図を広げた。


「なあ、これに剣を持たせることはできるか?あと、空を飛ぶ翼は?」


「そのような特殊装備は、今後の検討課題とさせていただきます」


 ゴーレムたちは、俺の無茶な要望にも、淡々と答えていく。


「ふむっ、最初はそんなものか……」


 俺は不満げに口を尖らせたが、すぐに興奮が勝った。


「まあいい。まずは地上を歩くだけでも、最高にクールだ!」


 俺は、完成したプロトタイプを想像して、一人ニヤニヤと笑い続けた。


 マナクリスタル・デバイス(MD)の基本技術を土台にしたからだろうか。完成したMDプラスのプロトタイプは、初号機とは思えぬ完成度を誇っていた。


 強度を優先したため、各パーツを組み合わせる方式ではなく、一体型の無骨なロボットとして制作された。その姿は、まるで神話の巨人が目の前に現れたかのようだった。


「御屋形さま、この機体はプロトタイプです。装甲が薄いので無理はなさらないでください」


 技術担当ゴーレムの心配そうな声が、俺の耳に届く。


「わかった」


 俺は短く答え、胸部に設けられたコックピットに乗り込んだ。シートに体を沈め、その座り心地を確かめる。まるで、自分の体の一部になったかのようだ。


「メインスイッチ、オン!」


 その声に呼応するように、MDプラスの全身が震えた。


 キュィィィィィィィィィン! ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!


 腹に響く重低音。それは命の鼓動だ。フロントパネルのインジケーターが光を放ち、目の前の世界が鮮やかに色づいていく。


「カミ〇ユ、ゼ〇タいきまーす!」


 思わず口から出た言葉は、どこかの物語のセリフだったかもしれない。だが、そんなことはどうでもいい。俺は今、巨人の操縦席にいるのだ。


 起動テストは、一歩、また一歩と、慎重に進められた。


 みーぎ。ひだーり。


 巨大な鋼の足が、ゆっくりと、しかし確実に大地を踏みしめる。その一歩一歩が、まるで歴史を刻むかのように、重々しい音を立てていた。


 ノースミッドタワーの広大なテストフィールド。俺は、MDプラスのプロトタイプのコックピットの中で、ただひたすらに集中していた。外界との繋がりは、目の前のモニターに映し出される、MDプラスの視界だけだ。


「……機体基本性能試験、開始」


 俺の耳に、無機質なゴーレムの声が響く。まるで、神からの命令のように。


「歩行、走行、旋回……」


 俺は、操縦桿を握り、ゆっくりとMDプラスを動かす。一歩、また一歩。巨大な鋼の足が、大地をしっかりと踏みしめる。滑らかに動く関節、そして俺の意思に完璧に追従するその動作に、俺は興奮を抑えられなかった。


「ダッシュの安定性、最高速度、加速性能」


 加速ペダルを踏み込むと、MDプラスの全身が震え、一気に速度を上げていく。風が唸り、景色が歪む。


「不整地(瓦礫、段差、傾斜地など)での走破性」


 瓦礫の山を駆け上がり、段差を飛び越え、傾斜地を駆け抜ける。そのたびに、コックピットが大きく揺れる。だが、俺の神経は研ぎ澄まされ、機体と一体となっていた。


「降着姿勢、緊急脱出シークエンスの確認」


 俺は、指示通りに降着姿勢をとる。そして、緊急脱出ボタンに手を伸ばす。もし、この機体が暴走したら、俺の命はない。だが、躊躇はなかった。


「姿勢制御、安定性の試験」


 空中での姿勢制御。まるで、鋼鉄の巨人が空を舞っているかのようだった。その姿は、かつてワイバーンを撃ち落とした天使の姿と重なる。


「コックピット内の操縦桿、ペダル、レバーなどの操作に対するMDプラスの追従性」


 操縦桿をわずかに傾けるだけで、機体は俺の意思を読み取ったかのように、滑らかに動く。まるで、自分の手足のように操れる。


「コックピットと機体の動作の同期性」


 俺の動き、呼吸、そして鼓動。すべてが、MDプラスと同期していく。俺は、もはやコックピットにいるのではない。俺自身がMDプラスなのだ。


「スコープ(カメラアイ)の視界、解像度、ズーム性能」


 スコープを覗き込むと、世界が鮮明に映し出される。遠くの山の稜線、木々の葉の一枚一枚まで、はっきりと見えた。


「各種レーダー、ソナーなどの探査能力」


 レーダーが、周囲の情報を正確に捉えていく。俺は、この巨大な鋼の体を動かすことに、ただひたすらに集中していた。他の業務、他の人間、すべてを忘れ、俺はプロトタイプに命を吹き込んでいた。





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