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32歳、人生リセット、ただし異世界で  作者: トール
一章 異世界へ

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殖産興業・富国強兵

 拠点の内外の整備が一区切りつき、俺は次の段階へと進むことを決意した。これまでのように単に資材を集めるだけではなく、このゴーレムたちを率いて、この世界の産業と軍事を確立する、いわゆる「殖産工業」と「富国強兵」を推し進めることとした。


 まずは工業化だ。土属性のゴーレムを率いて鉱脈を本格的に採掘させ、掘り出した鉱石を火属性のゴーレムに精錬させる。精錬に必要な冷却水は、水属性のゴーレムが供給し、炉の火力を上げるための風は風属性のゴーレムに任せる。雷属性のゴーレムは、精錬のプロセスを加速させるために、その強力な雷撃を放出する。ゴーレムたちの連携によって、ただの石ころだった鉱石が、光り輝く金属のインゴットへと姿を変えていった。


 次に、軍事力の強化だ。それぞれの属性を持つゴーレムを、より効率的に動くようにプログラムを組み直した。例えば、素早い動きを必要とする探索には風属性を、強固な防御を必要とする要塞の警備には土属性を、といった具合にだ。そして、火、水、風、土、雷の各属性のゴーレムが連携し、より強力な魔法を繰り出す連携攻撃を開発させた。小さなゴーレムたちが編み出す、まるで軍隊のような戦術は、この森のどの魔物をも圧倒するに十分な力だった。


 俺はゴーレムたちの力を借り、この世界での存在感を確固たるものとしていく。もはや、この森は俺たちの領地と化していた。


 また、一次産業の振興として、農地開拓に着手した。拠点からほど近い、川の上流に広がる上部台地は、見渡す限りの広大な草原だった。俺はゴーレムたちを率い、この地に新たな生命の糧を生み出すことを決意した。


 まず、開墾の第一歩として、雷属性のゴーレムに命じて、草原を焼き払わせた。轟音とともに放たれた雷撃は、瞬く間に大地を焦土へと変え、雑草の根までも焼き尽くしていく。焦げ付いた土は、それまでの硬さを失い、次の工程に備えるかのように静かに横たわっていた。


 次に、土属性のゴーレムたちが整然と並び、その巨体を使って土を掘り起こしていく。彼らはまるで精巧にプログラムされた重機のように、一定の深さで畝を作り、土地全体を柔らかく耕していった。その作業は、寸分の狂いもなく、広大な台地を完璧な農地へと変貌させていく。


 そして、最も重要な水の確保だ。水属性のゴーレムたちが、台地の下を流れる川から途切れることなく水を運び上げ、巨大な貯水池を築き上げた。貯水池から伸びる水路は、土属性のゴーレムたちが掘り進め、畑の隅々まで行き渡るよう設計されていた。さらに、雷属性のゴーレムは、ときおり空に雷を放ち、大気中の水分を凝結させて雨を降らせることで、水の供給を補完した。


 こうして完璧に整備された土地に、麦系の種が蒔かれた。やがて、種は芽を出し、太陽の光を浴びてすくすくと育っていく。黄金色に輝く麦穂が風に揺れる光景は、俺たちの基盤が単なる軍事力や工業力だけでなく、生命そのものによって支えられていることを物語っていた。


 そして、収穫された麦は、食料としてだけでなく、新たな産業の礎となるべく、拡張された仮拠点へと運び込まれた。そこでは、火属性と水属性のゴーレムたちが連携し、ウィスキー醸造のためのポットスチルの設置が急ピッチで進められていた。


 収穫を終えた麦は、工業化された仮拠点へと運び込まれ、新たな産業の礎となった。俺は、ウィスキー醸造のプロセスをゴーレムたちに委ねることにした。まず、醸造に必要な巨大なポットスチルを、火属性と水属性のゴーレムに作らせる。


 火属性のゴーレムは、精錬した金属板を高温で熱し、精密な形状へと加工する。彼らが扱う炎は、単なる熱源ではなく、金属の分子構造を意のままに操る魔法の力だ。一方、水属性のゴーレムは、熱された金属板を最適なタイミングで冷却し、歪み一つない理想的な曲線を作り上げていく。彼らの連携によって、複雑な形状のポットスチルが次々と組み上げられていった。


 完成したポットスチルは、ゴーレムたちによって自動化された醸造ラインに組み込まれた。


 まず、土属性のゴーレムが、収穫された麦を巨大な石臼に投入し、粉砕する。次に、水属性のゴーレムが温かい水を加え、麦芽を糖化させる。このマッシュと呼ばれる工程では、正確な温度管理が重要であり、火属性と水属性のゴーレムが連携して、絶妙な温度を保ち続けた。


 そして、最も重要な発酵の工程だ。風属性のゴーレムが送る清潔な空気と、雷属性のゴーレムが放つ微弱な電流が、発酵を促進する。この特殊な環境によって、麦汁は力強いアルコールへと変化していった。


 発酵を終えた液体は、完成したポットスチルで蒸留される。火属性のゴーレムがポットスチルの底部を熱し、蒸気となったアルコールを水属性のゴーレムが冷却して液体に戻す。この蒸留工程を複数回繰り返すことで、アルコールはより純度の高い、芳醇な香りを放つスピリッツへと姿を変えていった。


 最後に、完成した原酒は木製の樽に詰められ、土属性のゴーレムが掘り上げた地下貯蔵庫へと運ばれる。この静かな暗闇の中で、ゴーレムたちが厳重に管理する温度と湿度の中、ウィスキーはゆっくりと熟成されていく。更に、俺の錬金術によりゆっくりと熟成されながらも時間短縮により、10年ものの熟成ウィスキーが出来上がっていった。


 こうして、俺はゴーレムたちの力を借り、この世界に新たな文化と産業を生み出していった。このウィスキーが、やがて来るべき時代を支える、新たな経済の柱となる日を夢見ながら。


 ウィスキーの成功に気をよくした俺は、続いて、大麦、ライ麦、ホップトウモロコシ、サツマイモ、ジャガイモ、サトウキビ、ブドウ、リンゴの栽培に着手、さらなるウィスキー、ビール、バーボン、焼酎、ウォッカ、ラム酒といった醸造を進めていく。


 ウィスキーを初めて蒸留した夜のことは、今でも鮮明に覚えている。琥珀色の液体が瓶に注がれるのを見た瞬間、全身に電流が走った。俺は成功したのだ。この手で、麦と時間から、魔法のような酒を生み出した。


 だが、安堵はつかの間だった。一つの成功は、次なる野望の火を灯す。ウィスキーだけでは、この世界に生まれた喜びをすべて表現できない。俺はもっと多くの作物から、様々な酒を創り出したくなった。


 次の日、俺は広大な農地に立った。手には、大麦、ライ麦、そしてホップの種。これらから生まれるのは、あの黄金色の液体、ビールだ。穀物の香ばしさが、喉を潤す爽快な泡に変わる。ウィスキーとは全く違う、日常に寄り添う酒だ。


 さらに俺は、トウモロコシの種を深く土に埋めた。この土地の恵みを最大限に引き出すためだ。いつか、この畑が育む黄金の粒が、独特の甘みと風味を持つバーボンに変わるだろう。


 日本の焼酎も欠かせない。サツマイモ、ジャガイモ、そして大麦。蒸留器を覗き込むたびに、それぞれの素材が持つ個性が、香りとなって立ち上る。透明でありながら、奥深い味わいを持つ焼酎は、東洋の神秘だ。


 ウォッカの挑戦は、最も純粋な酒を追い求める旅だ。ジャガイモやトウモロコシから作られるこの酒は、無味無臭、そして限りなく透明に近い。しかし、そのクリアさの中にこそ、素材の魂が宿っていると俺は信じていた。


 そして、甘い誘惑。サトウキビの畑に足を踏み入れる。カリブ海の風を感じるラム酒、そして奄美の風土が育む黒糖焼酎。蒸留器から滴り落ちる一滴一滴に、太陽の光と大地の甘みが凝縮されていく。


 最後に、俺はブドウとリンゴの木を植えた。ウィスキー作りの成功が俺を蒸留酒の世界へと誘ったが、この二つの果実は、俺に醸造の原点に戻ることを求めていた。ブドウからは芳醇な香りのワインと、それを凝縮したブランデーが生まれる。リンゴからは爽やかなシードルと、力強いカルヴァドスが生まれるだろう。


 ウィスキーの成功は、始まりに過ぎなかった。俺は、世界中の酒をこの手で創り出し、そのすべてをこの地に集める。今、この小さな蒸留所から、新たな酒の歴史が静かに幕を開けようとしていた。




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