目指せぼっち生活(5)
無骨な鉄の匂いが、「錬金施設」を満たしている。だが、それはただの鉄ではない。魔力を通すための血脈、それを造り出すための実験素材だ。
御屋形さまから「錬金施設」を任された錬金ゴーレムは、魔導工学と古の錬金術の融合に明け暮れていた。ここにいるのは人間よりも、機械の体を纏ったゴーレムがほとんどだ。彼らは文句一つ言わず、ただひたすらに御屋形さまの指示に従う。
「強度テストは問題なし」
錬金ゴーレムはモニターに映し出された数値を確認し、満足そうに呟いた。目の前にあるのは、奇妙な螺旋模様が刻まれた銀色のパイプだ。これは魔力パイプラインの試作品で、高密度な魔力を流しても崩壊しないよう、特殊な魔法と金属を組み合わせて造り出したものだ。
だが、このパイプの研究は、錬金ゴーレムの仕事のほんの一部に過ぎない。御屋形さまの本当の関心は、別の場所にあったからだ。
部屋の奥、煌々と光る研究炉の前に立つ。炉の中では、特殊な鉱石が溶け、どろりとした液体へと姿を変えていく。その液体は、蒼龍、飛龍、ダービーといった、御屋形さまの直属ゴーレムたちのための外骨格素材になる。
「……やはり、この素材は美しい……」
錬金ゴーレムは、溶けた鉱石の輝きに見惚れた。それはまるで、星々の光を閉じ込めたかのような、神秘的な光だった。
蒼龍の外骨格には、どんな攻撃も跳ね返す堅牢さと、重力さえも操るような重厚さが求められる。飛龍には、風を切り裂く軽量さと、雷を纏うほどの俊敏さが必要だ。そして、ダービー。その用途は誰にも知らされていない最高機密事項だが、きっと、他の二体とは異なる、より特殊な役割を担っているのだろう。
御屋形さまから直接、緊急の呼び出しが入ったという報せが届いた時、一つの予感がよぎった。
“あの研究”が、ついに動き出すのかもしれない。
錬金ゴーレムは、研究炉から目を離し、御屋形さまのいる場所へと足を踏み出した。その足取りは、これから始まるであろう、新たな実験への期待と、そして、かすかな恐怖で重かった。
◆
今日もまた、錬金ゴーレムはこの神話に満ちた鉱物たちと向き合っていた。御屋形さまの「あの研究」の指令が出てから、それは留まることをしらない。
「オリハルコン、アダマンタイト、ミスリル、そしてヒヒイロカネ……」
その名を口にするだけで、古の英雄たちの物語が脳裏に蘇る。しかし、これらは伝説の遺物ではない。ただの石ころでもない。これらは、錬金ゴーレムの知識と技術を試す、驚異に満ちた素材なのだ。
オリハルコンは、その眩い光沢から、しばしば装飾品に用いられる。だが、その真価は、膨大な魔力を何一つ零すことなく流す究極の導電性にあった。細く精製すれば、それは高密度の魔力を流すための「魔力パイプライン」となる。
アダマンタイトは、その比類なき硬度で知られる。物理的な衝撃をほぼ完全に無効化するその特性は、最強の防具や武器の素材として重宝される。だが、熱伝導率の低さから、熱を帯びた魔力を扱うのには不向きだ。
ミスリルは、アダマンタイトとは対照的に、驚くほど軽量でありながら、鋼鉄を凌駕する強度を持つ。その特殊な性質は、飛龍のような高速移動を目的としたゴーレムの外骨格に最適だ。
そして、ヒヒイロカネ。その存在は最も謎に包まれている。導電性、硬度、軽さ、いずれの特性も他を凌駕するわけではない。だが、この金属は、特定の魔力波を吸収し、それを自在に変換する特異な性質を持つ。この鉱物をうまく利用すれば、魔力を必要とせずに動く、夢のような機関が生まれるかもしれない。
そして最近錬金ゴーレムが研究を重ねている雷晶石。雷属性の魔力を持つ鉱石で、雷を貯蔵したり、放電する魔導具の材料として使われる。これらの鉱物が持つ特性を一つひとつ分析し、どうすればその力を最大限に引き出せるか、日夜研究を重ねている。これらの鉱物が秘める可能性は無限だろう。そして、この研究こそが、御屋形さまの夢を叶える鍵、“あの研究”の答えだと信じている。
◆
俺は、蒼龍、飛龍とともに、激しい乱取り稽古を通じて、雷魔法の習熟訓練を続けていた。そして、気が付けばレベルが100に到達していた。
名前:トール
種族:異世界人
年齢:十一歳
職業:引きこもり
レベル:100
【HP 1,990/1,990】
【MP 2,980/2,980】
【STR 9,811】
【VIT 9,811】
【INT 9,811】
【RES 9,811】
【AGI 9,811】
【DEX 9,811】
《スキル》
マジックバッグ Lv.max
錬金術Lv.max
《魔法》
雷魔法 Lv.max
《加護》
雷神の加護
雷神の加護は、身に覚えがない。きっと俺をこの異世界に飛ばした神様がこっそりと付与下さったのだろう。事前説明はなかったからそれの埋め合わせか。
そのご加護のおかげで、俺は常に最高の状態で、雷魔法を使うことができる。
紫電一閃は、その後の習熟訓練により俺の手の内に入れることができた。
また、俺の雷魔法は、新たな段階へと進化を遂げた。
ヘル・ライトニング(冥雷)
黒棒を媒体とすることにより、俺の魔力と黒棒の雷属性が相乗効果を生み出し、漆黒の雷を放つ。この黒い雷は、通常の雷魔法よりもはるかに強力な攻撃を可能とした。
麒麟
雷をまとった魔獣を召喚し、広範囲攻撃や圧倒的な力を振るう。召喚された麒麟との共闘により俺の戦術の幅は大いに広がった。
レールガン
高硬度弾丸を高速度射出する。俺の研究は、このレールガンを撃ち出すためにあるといっても過言ではない。
俺はレールガンを撃つ際、黒棒をターゲットに向けて差し出し、狙いをつける。「レールガン」と念じ魔力を集中していく。
すると、俺の手の中にある黒棒が、まるで生きているかのように震え始めた。
その表面を覆う漆黒の装甲が、まるで液体のようになめらかに流れ、分離していく。一本の棒だったものが、中心線に沿って二つに分かれ、左右へと広がる。それはまるで生きているかのように滑らかで、驚くほど静かに、完璧な平行を保った二本のレールへと変形していく。
レールの内側には、俺の魔力を吸収し、増幅するための複雑な魔法陣が浮かび上がる。そこには、俺がこれまで習得してきた雷魔法のすべてが凝縮されているようだ。
二本のレールの間に、俺の魔力で生成された高硬度弾丸が静かに配置される。その弾丸は、まるで俺の意志を宿したかのように、青白い光を放ち始めた。一瞬の閃光とともに、高硬度弾丸が超音速で放たれた。
弾丸は、空気抵抗をものともせず、ターゲットへと一直線に突き進む。そして、ターゲットに命中した瞬間、巨大な爆発音と、閃光が周囲に響き渡った。
俺は静かに黒棒を元の姿に戻し、その威力に満足げに頷いた。
俺のぼっち生活は、この異世界で、完成の域へと進化していた。
俺は、蒼龍、飛龍とともに、激しい乱取り稽古を通じて、雷魔法の習熟訓練を続けていた。それは雷魔法の習熟訓練だけではなく、レベルアップを通じて、俺の能力全般の向上へと繋がっていた。近頃は、それにダービーも加わり、2組の乱取り稽古の様子が見られるようになっていた。
あとは、錬金ゴーレムが高硬度弾丸の材質研究の結果を出すだけだ。




