目指せぼっち生活(3)
「飛龍、わかっているわよね」
「仰せのままに」
先日来、雷属性魔法を習得してきた。トレーニングゴーレムの指標として、習得した魔法は次のような位置づけらしい。
初級魔法
サンダー(雷撃)
中級魔法
サンダーボール(雷球)、サンダーアロー(雷矢)、サンダーウォール(雷壁)、サンダーランス(雷槍)
特殊な魔法
スパーク(感電)
先日、サンダーウォール(雷壁)、サンダーランス(雷槍)をマスターして以降、蒼龍、飛龍とともに、この2つの魔法の習熟訓練を続けていたが、この日俺は、再び新たな雷魔法の習得に挑戦する。
「御屋形さま、朝のトレーニングのお時間です」
トレーナーゴーレムが、いつものように俺を迎えに来た。その声は、俺のハイスペックな生活様式に、また一つ新しい要素が加わることを告げているようだ。
トレーニングルームへと足を踏み入れると、トレーナーゴーレムがすでに待機していた。俺の雷魔法に耐えるために施された、特殊な魔法耐性コーティングが光を反射している。
「今日のトレーニングは、新しい雷魔法の習得に重点を置きます」
俺が今日マスターするのは、サンダーストーム(雷雨) と サンダーエリア(雷陣) の二つ。
サンダーストーム(雷雨): 広範囲にわたって雷を降らせる攻撃魔法。
サンダーエリア(雷陣): 周囲を雷のフィールドに変え、その場にいる敵に継続的にダメージを与える。
御屋形さま、本日の魔法習得、心より楽しみにしておりました。
これらの魔法は、これまでの単一目標への攻撃や防御とは異なり、広範囲の敵に影響を及ぼす広域殲滅魔法に分類されます。
サンダーストーム(雷雨)は、空中に魔力を散布し、それを雷へと変える高度な技術が必要です。単に雷を降らせるだけでなく、敵の位置を正確に把握し、効率的にダメージを与えるための戦略的な思考が求められます。
サンダーエリア(雷陣)、自身の周囲に強力な雷のフィールドを形成します。これは、敵の接近を許さず、継続的にダメージを与えることで、あなたを無敵の要塞へと変えるでしょう。魔力を広範囲に展開し、その状態を維持する魔力持続力が鍵となります。
本日のトレーニングは、まずサンダーストームで、練習室全体を雷雨で満たす練習から始めます。その後、サンダーエリアで、自身の周囲に雷のフィールドを展開し、維持する練習に移ります。
御屋形さまの卓越した才能をもってすれば、これらの魔法もすぐに習得できるでしょう。
準備はよろしいでしょうか?
俺は未知の魔法習得にワクワクした。
「よし、始めよう」
俺はトレーナーゴーレムにそう告げ、まずサンダーストームの習得に取り掛かった。
これまでの魔法は、すべて自分自身から魔力を放ち、対象へと向かわせるものだった。だが、サンダーストームは違う。練習室の天井に魔力を散布し、広範囲にわたって雷を発生させる必要がある。
俺はゆっくりと手を天井に向け、魔力を霧のように広げていく。魔力は、練習室全体に広がり、やがて空気中の微粒子と融合していく。
数分後、練習室の天井から微かに「バチバチ」という音が聞こえ始めた。それは、俺の魔力が雷へと変わり始めた証拠だ。そして、俺が指を鳴らすと同時に、天井から無数の雷が降り注いだ。
雷は、俺の周囲を避け、正確にトレーナーゴーレムを囲むように落ちていく。
「御屋形さま、素晴らしい!広域殲滅魔法の習得、おめでとうございます!」
トレーナーゴーレムが感嘆の声を上げた。
サンダーストームの習得を終えた俺は、すぐに次の魔法、サンダーエリアの習得へと移った。
サンダーエリアは、自身の周囲に雷のフィールドを形成し、敵の接近を許さない魔法だ。俺は自身の足元に魔力を集中させ、それを広げていく。
やがて、俺の周囲数メートルが、青白い雷の光で満たされた。床には、複雑な魔法陣が浮かび上がり、その魔法陣から雷が絶え間なく発生している。この雷のフィールドに足を踏み入れれば、どんな強敵も継続的なダメージを受け続けるだろう。
「御屋形さま、サンダーエリアの習得、おめでとうございます!」
トレーナーゴーレムの声が、練習室に響く。
たった一日で、また二つの新しい魔法をマスターした。これで、俺の雷魔法は、単体攻撃、広域殲滅、防御、そして領域支配と、あらゆる局面に対応できるようになった。
次は、どんな魔法を習得しようか。
俺のハイスペックな生活様式は、今日も進化を続ける。
◆
その日の午後、アリアの護衛に従事している蒼龍、飛龍に声を掛ける。
「飛龍、これから俺の屋外トレーニングに付き合え」
俺の言葉に、アリアの背後に控えていた飛龍が、静かに一歩前に出た。
飛龍は、蒼龍と同じく、技術担当ゴーレムが最高級の素材と技術を惜しみなく注ぎ込んで造り上げた、護衛用の人型ゴーレムだ。蒼龍とは異なり、その全身は、鳥の羽を模した軽量の装甲に覆われ、魔力炉には風属性のマナ結晶が組み込まれている。
「御屋形さま、承知いたしました」
その声は、深みのある女性の声で、感情は読み取れないが、確かな忠誠が込められている。
「今回は鹿【ウィスパーディア】を追いかけよう。アリア、索敵ゴーレムから情報を入手してくれ」
俺はそう告げ、スピーダーバイクに飛び乗る。アリアの返答を待つ間もなく、エンジンをふかし、黒棒を構えた。午前の訓練でマスターしたサンダーストーム(雷雨) を、実戦形式で試す絶好の機会だ。
スピーダーバイクは滑るように空を駆け上がり、草原の上を低空飛行する。風が顔に叩きつける。
「御屋形さま、北東12km地点、開けた草原にウィスパーディアの群れを捕捉しました。数は3体。逃走経路は北へ向かうと予測されます」
ヘルメットの通信機から、アリアの冷静な声が響く。完璧な情報だ。
俺はスピーダーバイクの速度を上げ、一気に距離を詰める。視界の先に、鹿の群れが風のように駆け抜けていくのが見えた。ウィスパーディアは、その名の通り、風のように速く、気配を消すのが得意な魔物だ。だが、俺の索敵網からは逃れられない。
俺はスピーダーバイクをホバリングさせ、黒棒を空に向かって掲げる。
「サンダーストーム」
魔力を空中に放出し、一気に広げる。瞬く間に、晴れ渡っていた空に雷雲が形成され、不気味な光を放ち始めた。
ウィスパーディアたちは、空の異変に気づき、動きを止めた。その一瞬の隙を見逃すはずがない。
俺が指を鳴らすと、雷雲から無数の雷が降り注いだ。雷は、ウィスパーディアの周囲を囲むように落ち、逃げ場を塞ぐ。そして、正確に3体の鹿へと吸い込まれるように命中した。
訓練とは違う、生きた獲物への命中。広範囲に渡る魔法だが、一点に集中させることで、その威力は単体の攻撃魔法にも引けを取らない。
ウィスパーディアは苦悶の鳴き声を上げ、その場に崩れ落ちた。俺は静かに黒棒を納める。
別のウィスパーディアの群れが、茂みから現れる。5体だ。飛龍がこちらに追い込んでくれていた。
「よし、サンダーストーム第二波」
俺は再び黒棒を掲げ、空に魔力を放つ。
再び、空に雷雲が形成され、不気味な光を放つ。今度の魔力は、先ほどよりもさらに広範囲に、そしてより精密に制御されている。
飛龍は、俺の魔力を感じ取り、ウィスパーディアの群れから離れ、安全な場所へと移動した。
雷雲から、無数の雷が降り注ぐ。それは、ウィスパーディアの群れを正確に捉え、瞬く間に5体の鹿を殲滅した。
このサンダーストームの第二波は、先ほどよりもはるかに効率的で、無駄がなかった。これも、日々のトレーニングと実戦経験の賜物だ。
俺は静かに黒棒を納め、スピーダーバイクを地上に降ろす。
「御屋形さま、流石でございます」
茂みから現れた飛龍が、俺にそう告げた。彼女の声には、賞賛と尊敬の念が込められている。
「ありがとう、飛龍。お前も、良い働きだった」
俺は飛龍にそう告げ、ウィスパーディアの群れから魔石を回収する。この魔石は、俺のハイスペックな生活様式をさらに向上させるための貴重な資源だ。
飛龍は無言で反転すると、次を探しに出かけたようだ。俺はスピーダーバイクを再び加速させ、飛龍の完璧な連携に身を委ねる。
やがて、飛龍は俺の前に、新たな獲物を追い立ててきた。
狼【シャドウウルフ】、そして猪【レッサーボア】。
シャドウウルフは、その名の通り影のように素早く動き、レッサーボアは硬い皮膚と角で攻撃を弾く。どちらも厄介な魔物だが、今の俺の敵ではない。
俺はスピーダーバイクをホバリングさせ、黒棒を構える。
「よし、サンダーエリアを試すには丁度いい」
俺は地面に魔力を流し込み、広範囲に雷のフィールドを形成する。シャドウウルフとレッサーボアは、雷のフィールドに足を踏み入れた瞬間、激しい感電に襲われ、動きを止めた。
雷のフィールドは、彼らの抵抗を許さない。もがき苦しむ魔物たちを、俺は冷静に見下ろす。そして、魔力の流れを調整し、雷の出力を上げた。
「御屋形さま、素晴らしい!」
飛龍が、俺の完璧な魔法行使に感嘆の声を上げた。
たった数分のうちに、シャドウウルフとレッサーボアは、その場に力なく倒れた。
今日のトレーニングは、これまでのどの訓練よりも実りがあった。サンダーストームとサンダーエリア、二つの広域殲滅魔法を完璧に使いこなし、そして、飛龍との連携も深めることができた。
俺のハイスペックな生活様式は、この異世界で、俺を無敵の存在へと進化させている。




