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32歳、人生リセット、ただし異世界で  作者: トール
三章 魔法と錬金術の探求と「特別な力」の獲得

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東中級ダンジョン(2)

 第一大隊長ザックの力強い後押しを受けて、第一中隊は再度、第一階層へと潜っていく。


 ザックは、第一中隊の背中を見送ると、通信端末の前に陣取った。


「第一階層の地図は、すでに情報分析ゴーレムが完成させている。第一中隊には、罠の解除と道標の設置を優先させている。偵察の準備は完了しているだろう?」


 ザックの鋭い問いかけに、第二中隊は、緊張した面持ちで頷いた。


「隊長! いつでも出撃できます!」


 ザックは、第二中隊の士気の高さに満足げに頷くと、号令を発した。


「よし、第二中隊! 第一階層へと突入する! 第一中隊が作った安全なルートを通り、第二階層への入り口を目指せ! 行方不明の隊員は、必ず生きて帰る! 皆、心してかかれ!」


 ザックの力強い言葉に、第二中隊の隊員たちの表情が引き締まる。


「第一中隊! 第二中隊! 第二階層で合流する!」


 ザックは、無線で第一中隊に通信を入れると、第二中隊は、東中級ダンジョンの深淵へと足を踏み入れた。


 彼らの行く手には、未知の危険と、未だ見ぬ真実が待ち受けていた。しかし、彼らの胸には、仲間を救い出し、このダンジョンを攻略するという、揺るぎない決意が燃え盛っていた。


 カイン中隊長に率いられた第二中隊は、情報分析ゴーレムが示した安全なルートをたどり、無事に第一階層を突破した。そして、第二階層への下り階段を降りたところで、先に到着していた第一中隊と合流を果たした。


「第一中隊長、お疲れさま。第二階層の様子はどうだ?」


 カインの問いに、第一中隊長オズワルは厳しい表情で答えた。


「何か、様子がおかしい。第二階層の入り口には、罠もなければ、紋様もない。ただ、広大な空間が広がっているだけだ。しかし……」


 第一中隊長は言葉を区切ると、周囲を警戒しながら続けた。


「魔物の気配が、ない。不気味なほど、静寂に包まれている。それに、空気も重く、濃い……」


 カインは、第一中隊長の言葉に耳を傾けながら、第二階層の空間を見渡した。巨大な洞窟のような空間が、無限に続いているように見える。そして、第一中隊長が言う通り、魔物の気配が一切ない。


「まるで、生き物が存在しない空間のようだ……」


 カインは、直感が警告を発しているのを感じた。この静寂は、何かが潜んでいる証拠だ。


「よし、第二中隊は第二階層の偵察を開始する。第一中隊は、引き続き第一階層の整備を頼む。そして、行方不明の隊員の捜索も続ける」


 ザックは、慎重な姿勢を崩さず、通信端末を通じて改めて指示を出した。彼らの行く手には、新たな試練が待ち受けていることを、ザックは予感していた。


 ザックの指示を受けた第二中隊は、慎重に偵察を開始した。しかし、彼らが数歩進んだところで、異変が起きた。


 周囲の空気が一変し、濃密な魔力が空間を満たし始めた。


「隊長! 魔物の気配です! とてつもない数の、魔物の群れが!」


 第二中隊の隊員が、叫び声を上げた。


 そして、闇の中から、無数の魔物の影が蠢き始めた。それは、第一階層で遭遇した魔物とは比べ物にならないほど、強大で、おぞましい姿をしていた。


「くそっ、これが第二階層の罠か……!」


 カインは、思わず舌打ちした。情報分析ゴーレムの分析も、この状況までは予測できなかった。


 彼らの目の前に立ちはだかるのは、強大な魔物の群れ。第一大隊の、本当の戦いは、ここから始まるのだった。


 ザックは、すかさず、通信端末を通じて改めて指示を出した。


「速やかに魔物の正体を見極めろ。慎重にな。場合によっては撤退も許可する。」


 ザックは、闇の中から現れた魔物の群れを前に、冷静に状況を分析していた。


 ザックの指示は、第二中隊全体に緊張感をもたらした。彼らの任務は、第二階層の偵察であり、この数の魔物と正面から衝突することではない。


「中隊長、あの魔物、動きが鈍いようです!」


 偵察に当たっていた隊員が、息を荒げながら報告した。


「それに、体から魔力が漏れ出ています。まるで、不完全な存在のようです!」


 カインは、その報告に耳を傾け、魔物の群れを注意深く観察した。確かに、見た目は強大だが、動きには不自然なぎこちなさがある。そして、彼らの体から、かすかに魔力が漏れ出しているのが見て取れた。


「不完全な魔物、か……」


 カインは、思考を巡らせた。この第二階層全体に満ちる濃密な魔力が、不完全な魔物を生み出しているのだろうか。


「待てよ…」


 彼の脳裏に、一つの可能性が閃いた。もし、この魔物たちが不完全な存在だとしたら、弱点があるはずだ。


「第二中隊! 撤退は待て! 攻撃を仕掛けろ! ただし、あくまでも、相手の弱点を探るための攻撃だ! 一斉にではなく、散開し、連携して攻撃しろ!」


 カインの決断に、隊員たちは一瞬戸惑ったが、すぐに指示に従った。彼らは、中隊長の判断を信じていた。


「この魔物の群れを倒せば、第二階層の謎が解けるかもしれない……」


 カインは、第二階層に満ちる濃密な魔力を利用して生み出されたであろう、不完全な魔物たちの群れを前に、決断を下した。


「全隊、散開! 連携して攻撃を仕掛けろ! ただし、あくまでも相手の弱点を探るための攻撃だ! 決して深追いはするな!」


 カインの指示が飛ぶと、第二中隊の隊員たちは、一斉に散らばり、魔物たちに攻撃を仕掛けた。


 剣士たちは、魔物の体の各所を切りつけ、魔法使いは、様々な魔法を試した。しかし、魔物たちは、傷を負ってもすぐに再生し、魔法も効果がないように見えた。


「くそっ、これじゃあ、きりがないぞ!」


 隊員の一人が叫んだ。


 その時、カインは、あることに気づいた。魔物たちは、体を損傷しても再生するが、その際に、体から魔力が漏れ出す量が、わずかに増えている。


「なるほど……。この魔物の弱点は、再生能力を上回る攻撃ではなく、魔力そのものへの干渉か!」


 カインは、素早く思考を巡らせると、隊員たちに指示を出した。


「第二中隊! 攻撃目標を変更! 敵の急所を狙うな! 体を切断し、魔力の流出を誘発しろ!」


 カインの指示に、隊員たちは戸惑いながらも、その通りに攻撃を仕掛ける。


 剣士たちは、魔物の四肢を切り落とし、魔法使いは、魔物の体から魔力を抜き取る魔法を放った。すると、魔物たちは、再生できなくなり、徐々にその姿を霧散させていった。


「よしっ! やったぞ!」


 隊員たちの歓声が、第二階層に響き渡る。カインは、安堵の息を漏らすと、周囲を見渡した。魔物の群れは、跡形もなく消え去っていた。


「これが、第二階層の罠か……。単なる力任せの攻撃では、突破できない……」


 カインは、改めてこのダンジョンの奥深さを感じた。


「第二中隊! 第二階層の偵察を続行する! 行方不明の隊員を救い出し、このダンジョンの謎を解き明かすぞ!」


 ザックは、カインからの報告に耳を傾けながら、その場に立ち尽くしていた。不完全な魔物、そしてその弱点が「魔力そのものへの干渉」であるという報告は、ザックの脳裏に、このダンジョンが持つ根本的な性質についての仮説を導き出した。


「よし、第二中隊は、第二階層のマッピングを継続せよ」


 ザックは、静かに、そして力強く指示を出した。彼の声には、確信がこもっていた。


「そして、第三中隊! 全隊員に魔法陣を構築する準備をさせろ。このダンジョン全体に満ちる魔力を一時的に中和する、広域魔力中和魔法陣だ」


 第三中隊の隊員たちは、ザックの指示に一瞬戸惑った。そのような大規模な魔法陣を構築するには、膨大な魔力と時間が必要だ。


 しかし、ザックは彼らの戸惑いをよそに、続けた。


「魔力中和魔法陣が完成すれば、この第二階層に満ちる濃密な魔力は一時的に消滅する。不完全な魔物たちも、力を失い、霧散するだろう。それだけではない……」


 ザックは、地図に目を落とし、さらに考えを巡らせる。


「このダンジョン全体が、魔力によって管理されているのかもしれない。罠も、魔物も、すべてが魔力に依存している。もしそうならば、この魔力中和魔法陣は、第二階層だけでなく、ダンジョン全体の機能を停止させる可能性がある」


 彼の言葉に、第三中隊の隊員たちの表情が、驚きと興奮で彩られていく。


「第三中隊、任務は重いが、これはこのダンジョン攻略の鍵となる。成功すれば、行方不明の隊員の生存率も高まるだろう。我々の命運は、君たちの手にかかっている」


 ザックの言葉に、第三中隊は、固く決意を固めた。彼らの使命は、第二階層に広がる脅威を排除し、このダンジョンの謎を解き明かすこと。


「第二中隊、第一中隊、そして第三中隊。我々は、このダンジョンを、必ず攻略する!」


 ザック大隊長の叫びが、東中級ダンジョンの入り口に響き渡る。新たな戦術が、彼らの未来を切り開くのだった。


 第三中隊長レイブンは、魔道ゴーレムに集合を掛けた。


「第三中隊は、第二階層突入後広域魔力中和魔法陣の構築準備だ。」


 レイブン中隊長は、ザック大隊長の指示を受け、広域魔力中和魔法陣の構築を命じた。彼の呼びかけに応じ、第三中隊に配属された数体の魔道ゴーレムが、重い足音を立てて集結した。


「全機、起動! 第一陣形、広域魔力中和魔法陣構築準備!」


 レイブンの命令に、魔道ゴーレムたちの目が赤く輝き、その体が微かに震え始めた。彼らの胸部にあるコアが光を放ち、周囲の空気が振動する。


「このダンジョンの魔力は、非常に濃密だ。通常の魔法陣では、魔力中和の効果は一瞬でかき消されてしまうだろう。しかし、我々が持てる全ての魔力を注ぎ込めば、一時的にこの空間を無力化できるはずだ」


 レイブンは、魔道ゴーレムたちに語りかけるように、構築の注意点を説明する。


「広域魔力中和魔法陣は、一か所に集中して構築するのではなく、分散して複数箇所に構築し、連携させる。これにより、広範囲の魔力を中和できる。第一小隊、君たちは北通路に。第二小隊は南通路、第三小隊は西通路だ。それぞれの場所で、魔法陣のコアを起動させろ。魔法陣が完成次第、私に報告せよ!」


 レイブンの指示に、魔道ゴーレムたちは一斉に動き出した。彼らは、それぞれ担当する通路へと向かい、魔法陣の構築を開始した。


「ザック大隊長、広域魔力中和魔法陣の構築を開始しました」


 レイブンは、通信端末を通じてザックに報告を入れた。


「成功すれば、このダンジョンの攻略は一気に進む。しかし、失敗すれば、我々の命運は……」


 レイブンは、魔道ゴーレムたちが構築する魔法陣を、静かに見守っていた。彼らの行く手には、新たな希望と、そして、危険が待ち受けていた。


 ザック大隊長は、第三中隊からの準備完了の報告を受け、すぐさま指令を出す。


「よし、全員集中しろ! レイブン! 広域魔力中和魔法陣を発動しろ!!」


「ザック大隊長、広域魔力中和魔法陣、発動します!」


 レイブン中隊長の叫び声が無線機を通じて響き渡る。第三中隊の魔道ゴーレムたちが、それぞれの場所で一斉に魔法陣のコアを起動させた。


 ダンジョン全体に、重く、鈍い音が響き渡る。まるで、巨大な歯車がゆっくりと動き出すような音だ。


 そして、次の瞬間、周囲の空気が一変した。


 それまで濃密に満ちていた魔力が、まるで空気中の酸素が消え去ったかのように、急速に薄れていく。不気味なほどの静寂が、第二階層を支配した。


「成功か…」


 カイン中隊長が、思わず呟く。


 周囲を見渡すと、不完全な魔物たちが、まるで砂のように崩れ落ちていくのが見えた。彼らは、魔力が存在しなければ、その姿を保つことすらできないのだ。


「よし!」

 中央指令テント中の通信兵が叫ぶ。



 ザックは、この光景の報告に満足げに頷くと、改めて指令を出した。


「第二中隊! 魔物が消滅した今がチャンスだ! 速やかに第二階層の偵察を再開しろ! 行方不明の隊員の捜索と、第二階層の構造把握を優先しろ!」


「第一中隊! 第三中隊! 引き続き、第一階層と第二階層の安全を確保せよ!」


 ザックの指示は、このダンジョンの謎を解き明かし、そして行方不明の隊員を救い出すための、確実な一歩だった。


 広域魔力中和魔法陣が、彼らの未来を切り開いたのだった。



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