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32歳、人生リセット、ただし異世界で  作者: トール
三章 魔法と錬金術の探求と「特別な力」の獲得

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第二大隊の困惑

ライアスの指揮する第二大隊は、前回の西初級ダンジョンの戦いで、最終的には勝利を収めた。だが、第二中隊がヒュージスライムの奇襲を受け、死亡者7名、中程度の負傷者が2名と壊滅してしまった。第二中隊を欠いた状態で、どう立て直すのか?

 ライアスの指揮する第二大隊がダンジョンから帰投して数日が経った。

 戦いの勝利を祝う声は、第二中隊の壊滅という代償の重さに掻き消され、彼らの心には深い傷が残されていた。

 特にライアスは、自らの指揮ミスが招いた悲劇として、その責任を重く受け止めていた。


 短期間の休養を終え、彼らは再び日常の訓練へと戻っていた。

 しかし、その訓練は以前とは少し違っていた。

 御屋形さまから、新型の重装甲ゴーレムが配備されたのだ。


 訓練場に並んだゴーレムは、これまでのずんぐりとした旧式とは一線を画していた。

 ずっしりとした金属の塊ではなく、無駄を削ぎ落とした流線型のフォルム。

 そして、全身を覆う黒光りする装甲は、まるで巨大な甲虫のようにも見える。

 その姿は、敗北と喪失の記憶に沈んでいた第二大隊員たちの目に、希望の光を灯した。


「うおっ、すげえ!」


 一人の隊員が感嘆の声を漏らした。

 その声に続き、次々と驚きの声が上がる。

 彼らが目の当たりにしたのは、単なる新しい兵器ではなかった。

 それは、再び立ち上がり、前に進むための、新しい一歩だった。


「皆、よく聞け!」

 ライアスの声が訓練場に響き渡る。

「この新型ゴーレムは、これまでのものとは違う。出力も段違いで、細かな連携も要求される。慎重に慣らし運転を行え!」

 その表情は、いつもの冷静さを保ちつつも、再起への強い決意に満ちていた。

 ライアスは知っていた。

 この新型ゴーレムが、失われた仲間たちの穴を埋めるだけでなく、第二大隊を新たな次元へと引き上げてくれることを。


 第二大隊員は、配備された新型の重装甲ゴーレムのエージング(慣らし運転)を始めた。

 重厚なエンジン音が響き渡り、ゴーレムたちは滑らかな動きで訓練場を駆け回る。

 彼らは、ヒュージスライムとの戦いでの失敗を忘れていなかった。

 その教訓を胸に、一歩ずつ、しかし確実に、次の出撃への備えを進めていく。


「必ず、仇をとるぞ」

 誰かが呟いた。

 その言葉は、訓練に励むすべての隊員たちの心に深く刻まれていた。

 この新型ゴーレムと共に、彼らは再び戦場へと向かう。


 ◆


「大隊長、お別れのご挨拶に参りました」


 その声に振り返ると、そこに立っていたのはジョンだった。以前は第二中隊を率いる頼もしい存在だったが、今はどこか疲れた表情を浮かべている。


 ライアスは何も言わず、ただ静かに頷いた。ジョンが遊撃魔道部隊への異動辞令を受けたことは知っていた。ヒュージスライムとの戦いで第二中隊を壊滅させてしまった責任を、彼は一人で背負い込んでいる。


「この度は、私の指揮ミスで…」


 言葉を詰まらせるジョンに、ライアスは静かに語りかけた。


「君だけの責任ではない。君の報告を軽視し、適切な援護を送れなかった私にも責任がある」


 ライアスは、ジョンの肩にそっと手を置いた。


「君は第二中隊の誇りだ。君が新たな場所で活躍することを、心から願っている」


 ジョンの目に光が戻る。彼は一礼し、訓練場を後にした。


 ライアスは、遠ざかるジョンの背中を見つめていた。その姿は、失われた多くの命の重さを背負いながら、それでも前に進もうとする第二大隊の姿と重なって見えた。


 ◆


 再編成への道筋が見えず、もどかしい日々を送るライアス。しかし、ある日、訓練場に目をやると、これまで見慣れなかった顔ぶれがすこしずつ増えていることに気づいた。彼らはまだ訓練もままならない新兵で、その動きはぎこちないものもいれば、ある程度仕上がっている中堅の姿もあるようだ。


 ライアスの思考が巡る。この新兵たちは、第二中隊の壊滅による戦力ダウンを補うために、本部が急遽配属させたのだろうか。しかし、彼らはまだまだ経験不足で、連携も取れないだろう。即戦力にはなりえない。


「これは…」


 ライアスは、この状況をただの戦力補充と考えるのではなく、より大きな可能性として捉えた。経験豊富な兵士を失った第二大隊にとって、新兵の存在は大きな意味を持つ。彼らを育てることは、第二大隊の未来を形作ることと同義だ。


 これらの新兵を核として、新しい第二中隊を設立する。熟練した古参兵を新中隊の教官として配置し、彼らを一から鍛え上げる。時間はかかるが、第二大隊の戦術や理念を深く理解した、真の意味での「第二大隊員」を育てることが可能となるはずだ。


 ライアスは、早速御屋形様の意図を確認しようと、通信端末を開く。


「御屋形様、お願いがございます。」


 だが、すぐに返ってきたのは、聞き慣れた、しかし予想していなかった声だった。


「どんなお願いですか」


 モニターに映し出されたのは、御屋形様ではなく、なぜか首席補佐官らしく振る舞うアリアだった。


「…アリア?」


 ライアスは、思わず端末を落としそうになった。御屋形様への直通回線に、なぜ首席補佐官のアリアがいるのか。そして、なぜ彼女が御屋形様の代理として話をしているのか。


 画面の中のアリアは、いつもと変わらない冷静な表情でライアスを見つめていた。しかし、その瞳の奥には、どこか複雑な感情が揺れているように見えた。


「御屋形様は、ご多忙につき、現在、私、アリアが皆様からのご意見を承っております」


 アリアの言葉は、事務的でよどみない。ライアスは戸惑いを隠せないまま、言葉を続けた。


「第二大隊の再編成についてです。先日、多数の新兵が訓練場に遣わされた。その意図を…」


 ライアスは、新兵の配属が、第二中隊の再建に向けた御屋形様からのメッセージではないかと期待していた。だが、アリアの口から出た言葉は、ライアスの期待とは全く違うものだった。


「その件でしたら、御屋形様のご意向ではございません。わたくしの判断によるものです」


 その言葉は、ライアスの胸に重く響いた。希望の光だと思っていた新兵たちは、ただの補充要員だったのか。ライアスは、自身の考えが安易すぎたことを悟った。


「そう、ですか…」


 ライアスが落胆した様子を見せると、アリアは少しだけ表情を和らげた。


「しかし、ご心配なさらずとも、この新兵たちがいずれ第二大隊の未来を担うことは間違いありません。彼らは、貴方が思っている以上に、可能性を秘めています」


 アリアの言葉には、ライアスへの信頼と、新兵たちへの期待が込められていた。


「第二中隊の再建は、あなたにしかできないことです。御屋形様も、そうおっしゃっていました。あの新兵たちは今はまだその時期ではありませんが、いずれあなたの部隊の大きな戦力となるまで育てておきます。」


 ライアスは、その言葉に、再び立ち上がる力を得た。


「アリア、ありがとう。よくわかりました」


 ライアスは通信を終え、深く息を吐いた。御屋形様が、直接は関与せずとも、アリアを通じて自分を試している。そのメッセージを、彼は確かに受け取った。



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