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32歳、人生リセット、ただし異世界で  作者: トール
三章 魔法と錬金術の探求と「特別な力」の獲得

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東中級ダンジョン

ザックの指揮する第一大隊は、前回の東初級ダンジョンの戦いで、最終的には勝利を収めた。だが、重傷者2名、中程度の負傷者が7名、軽傷者が15名を出してしまった。重傷者については、左手首を失ったもの、左足を失ったものがそれぞれ1名。

 ザック大隊長の部屋に、一筋の光が差し込んだ。


 机の上には、積み上げられた報告書の山。そのどれもが、前回の東初級ダンジョン攻略戦の生々しい記録だった。勝利は手にした。しかし、その代償は小さくなかった。重傷者2名、中程度の負傷者が7名、軽傷者が15名。左手首と左足を失った2名の重傷者は、ザックの脳裏に焼き付いていた。彼らの顔が、笑顔が、そして苦痛に歪んだ表情が、何度もフラッシュバックする。勝利の美酒は、苦い後味を残していた。


「大隊長!」


 ノックもそこそこに、通信兵が飛び込んできた。珍しく興奮した面持ちだ。


「なんだ、騒々しいぞ」


 ザックは眉をひそめた。報告書に押すはずだった印鑑が、虚空を叩いた。


「朗報です!全員復帰しました!」


「全員?まさか…重傷者までか?」


「いえ、彼らを除く全員です。そして、欠員分の2名は衛生兵から補充できました!」


 ザックは深く息を吐き、椅子にもたれかかった。重い肩の荷が、少しだけ軽くなった気がした。だが、心の中には、まだあの2人の影が残っていた。


「そして…もう一つ、とてつもない朗報が」


 通信兵は声を潜め、語り始めた。


「あの2人…義手と義足の補填手術が成功したそうです!リハビリも順調で、本人たちも復帰を強く希望しているとのことです!」


 ザックは言葉を失った。目頭が熱くなるのを感じた。


 失われたものは、二度と元には戻らない。そう思っていた。だが、彼らは諦めていなかった。どんな苦痛に耐え、どんな絶望を乗り越えたのだろうか。義手や義足をつけた彼らが、以前のように剣を振るうことは難しいだろう。しかし、彼らのその不屈の精神は、何よりも雄弁に、大隊の兵士たちに勇気を与えるはずだ。


「よし!」


 ◆


 錬金術師が、特殊な金属や素材、魔法の力を使って、生体と一体化する義手や義足を作り出す。これにより、単なる補助具ではなく、神経や感覚を再現した義肢を得られる可能性がある。左足を欠損した兵には、生体部品と機械部品を融合させた「サイバネティックス」手法により、欠損した左足を補うこととなった。脳から送られる神経信号を読み取り、義肢を自然に動かすことが可能。指先の微細な動きや、物を掴んだ際の触覚フィードバックを再現する。また使用素材は、耐久性の高い金属や合成素材が使われており、魔法攻撃にも耐えるような堅牢さを持つ。


 一方、左手首を失った兵士については、義肢は、元の身体能力を上回るように調整されました。具体的には、遊撃魔道中隊長リアのもつ魔導銃と同等の機能を持つ銃身を左掌に埋め込んだもの。弾丸射出に使われる魔力は、使用者の魔力の代わりに専用のエネルギーパックは、背負ったバックパックに装着する。


 ◆


 新しいダンジョンが、前回踏破された東初級ダンジョンの奥地に発見された。


 御屋形さまは、再びザック隊に「東中級ダンジョン」への出動を指令する。


 第一大隊長ザックは、東中級ダンジョンの入り口に立っていた。巨大な樫の木々がそびえ立ち、その間から覗くのは、苔に覆われた古代の神殿だ。重厚な石扉には複雑な紋様が刻まれ、そこからは奇妙なほどの静寂が漂っていた。ザックの直感が、ただの遺跡ではないと告げていた。


「いいか、皆。細心の注意を払え。このダンジョンは、前回のダンジョンとは規模も難易度も段違いな気配がする」


 ザックの言葉に、部隊員たちは固唾を呑んだ。


 ザックは彼らを一瞥し、力強い声で指示を出した。


「第一中隊は入り口付近の安全を確保せよ。第二、第三中隊はテントを設営、ここを拠点とする。偵察は三人一組の小隊で、無理はするな。目的はマッピングだ。まずはダンジョンの構造を把握する。奥に進むのはその後だ」


 東中級ダンジョンの入り口には、堅牢な石扉が閉じられていた。ザックは迷うことなく、前回踏破した東初級ダンジョンにて収集した古ぼけた鍵を使った。


 ギギギギッ。奇怪な音を立てて、ダンジョンがその扉を開けたのだった。


「第一中隊! 偵察を開始せよ。」「第二中隊、第三中隊は、現状待機だ。」


「ザック隊長、ダンジョン内部は複雑な構造をしています」

 先陣を切って偵察に出たオズワル中隊長が、無線でザックに報告を入れた。

「最初の広間から、複数の通路が分岐しています。どれも同じように見えますが、壁には異なる紋様が刻まれていました」


 ザックは地図を広げ、報告された内容を書き込んでいく。

「紋様か…それが手がかりになるかもしれんな。各通路の紋様を正確に記録しろ」


 彼は考え込んだ。

 初級ダンジョンでは一本道だったが、今回は違うようだ。

 各通路の紋様が何を意味するのか、その謎を解くことが攻略の鍵になるだろう。

「第二小隊! 各通路の壁の紋様をスケッチしてくるんだ! 第三小隊は、通路の奥に危険がないか、慎重に確認しつつ進んでくれ!」


 ザックの鋭い指示が飛ぶ。 それぞれの隊員が任務を遂行するため、散らばっていく。 ザックは拠点に残ったまま、無線から送られてくる情報を一つ一つ丁寧に分析していった。


 しばらくして、第一小隊から再び連絡が入る。

「ザック隊長! 南側の通路を進んでいたら、罠が作動しました! 床が崩落して、隊員の一人が行方不明です!」

「なにっ!?」

 ザックの顔色が変わる。

 東初級ダンジョンにはなかった、高度なトラップだ。

「第一小隊! 無理に進むな! 安全を確保しろ! 罠の場所と種類を正確に報告せよ! 第二小隊! 直ちに南側通路の捜索・救助に向かえ!」


 事態は、彼の予想をはるかに超えて、深刻な様相を呈し始めていた。


「罠の場所は、南部通路中央通り、種類は落とし穴です。落ちた隊員の姿は見つけられません。深い落とし穴です。声を掛けましたが、返事はありません。」


 ザックは無線機の向こうから聞こえてくる報告に、険しい表情で耳を傾けていた。


「深い落とし穴、か……」


 彼は静かに呟く。部下の一人が行方不明。しかし、東中級ダンジョンはまだ入口の調査段階だ。このまま安易に救助へ向かえば、さらなる犠牲者が出る可能性もある。彼は葛藤した。一刻も早く救出したいという焦り。しかし、隊の安全を最優先しなければならないという理性。


「落ち着け、ザック。焦るな」


 自分に言い聞かせるように、彼は目を閉じて深く呼吸をした。


 ザックの脳裏に、いくつもの選択肢が浮かび上がる。


 ・救助隊の編成: 第二小隊に加えて、さらに応援を送り、行方不明の隊員を捜索・救助する。


 利点: 隊員の命を救える可能性がある。隊の士気を保てる。


 欠点: 救助活動中に、さらなる犠牲者が出るかもしれない。


 ・偵察の一時中断: 全員に撤退を指示し、一旦ダンジョンから出る。対策を練り直す。


 利点: 隊の安全を確保できる。より慎重な計画を立てられる。


 欠点: 行方不明の隊員の生存率が下がる。御屋形さまへの報告が遅れる。


 ・偵察を続行し、情報収集を優先: 救助活動は一旦保留し、残りの通路の調査を続ける。


 利点: ダンジョン全体の構造を把握できる。落とし穴の先に何があるか判明するかもしれない。


 欠点: 行方不明の隊員を見捨てることになるかもしれない。隊員の士気が著しく低下する。


 彼は再び目を開けた。そこには、迷いはなかった。


「第二小隊、救助は一旦保留だ。他の通路の偵察を続行せよ。第三小隊、南側通路の落とし穴付近を徹底的に調査しろ。罠の仕組みと、落とし穴の深さ、そこから先の状況をできる限り詳しく報告せよ。第二小隊と第三小隊は、連絡を密に取るように」


 ザックは冷静な声で指示を出した。がそれは、部下を見捨てるわけではない。


「必ず、生きて帰ってこい。俺が、必ずお前を助け出す」


 彼は静かに、心の中で誓った。東中級ダンジョン攻略の糸口は、この危機の中に隠されている。


 他の通路の偵察を続行していた第二小隊から通信が入る。

「北側通路にも、落とし穴を発見。罠は解除した。繰り返す、罠は解除した。」


 ザックは無線からの一報に、わずかに眉をひそめた。


「北側にも、やはり罠があったか……」


 彼は地図に新しい情報を書き加える。北側通路の入り口にも、南側通路と同じような紋様が刻まれていたことを思い出す。


「紋様…やはり、これが手がかりになるのか?」


 彼の頭の中で、ダンジョンの構造に関する仮説が組み立てられていく。


「第二小隊! その紋様をもう一度確認しろ! そして、その先の通路に何か手がかりがないか、慎重に調べろ!」


 ザックは無線で指示を飛ばす。


 もし、紋様が罠の有無や種類を示しているのだとしたら、それは東中級ダンジョンを攻略するための重要な鍵となる。


「偵察を続行せよ。ただし、くれぐれも無理はするな。そして、他の通路も、紋様と罠の関係性を徹底的に調査しろ。…これは、ただのダンジョンではない。我々の知恵が試されているのだ。」


 彼は、東中級ダンジョンの入り口をじっと見つめながら、今後の作戦を練り直す。

 行方不明の隊員を救い出し、そしてこのダンジョンの謎を解き明かすために。


「第一階層のマッピングが終了しました。第一中隊これより帰還いたします。」


 ザックは無線でその報告を受けると、安堵の息を漏らした。


「全隊、拠点に帰還せよ。負傷者の手当てと情報の整理。偵察の記録をすべて提出しろ」


 彼は、広げた地図を前に、腕を組んで考え込んだ。各通路の紋様と、それに連動する罠の位置が、かなり正確に把握できた。


 太陽の紋様: 何も仕掛けられていない通路。

 月の紋様: 落とし穴が仕掛けられている通路。

 星の紋様: 罠は解除されている通路。


 星の紋様には、何らかの意図が隠されている。罠は壊れてしまったのか? それとも、別の仕掛けがあるのか?


 ザックは、手書きの地図に目を落とす。各通路の先には、次の広間へと続く道が広がっている。そして、その広間の中心には、大きな石碑が立っているらしい。


「よし、全員集合」


 ザックは中隊長たちに呼びかけた。


「第一階層の調査、ご苦労だった。偵察の結果、このダンジョンは、ただ力任せに進むだけでは攻略できないことがわかった。ここからは、この紋様の謎を解き明かしながら進んでいく。第一中隊は、後続の部隊のために、罠の解除と道標の設置を頼む。第二中隊は、偵察を継続。奥の石碑を調べ、その意味を解読する。必ず、生き残りの隊員を助け出す。そして、このダンジョンを攻略する」


 ザックの指示を受け、隊員たちは再編成を開始した。


「よし、第二中隊! 石碑の調査だ! くれぐれも、無理はするな!」


 ザックは、新たな任務を第二中隊に言い渡した。石碑の調査は危険な任務だが、彼らの報告が、このダンジョン攻略の鍵を握っている。


「第一中隊、道標の設置を急げ!」


 ザックの指示が飛ぶ。第一中隊は、安全なルートを確保するため、慎重に作業を進めていた。


「ザック隊長、石碑に、何かが刻まれています!」


 第二中隊から、興奮した声が届く。ついに、東中級ダンジョンの謎が解き明かされようとしていた。


「よし、石碑の紋様を確保。持ち帰ってくれ」


 ザックは無線でその報告を受けると、安堵の息を漏らした。第三小隊が持ち帰った石碑は、複雑な紋様が刻まれた重厚な石板だった。


「これを解析すれば、このダンジョンの謎が解けるかもしれない」


 ザックは、広げた地図と石板を交互に見比べながら、慎重に分析を始めた。


「隊長、この石板の紋様は、最初の広間の壁に刻まれていた紋様と一致します」


「やはりそうか…」


 ザックの脳裏に、一つの仮説が閃いた。


「もし、このダンジョンが、石碑の謎を解くための、巨大なパズルだとしたら?」


「第一中隊! 全通路の紋様を再度確認しろ。第二中隊は、石碑の紋様と壁の紋様の関連性を徹底的に調べろ」


 ザックの鋭い指示が飛ぶ。彼は、このダンジョンは、力任せに進むだけでは攻略できないことを確信していた。


 ザックは、石碑の謎を解き明かすために、新たな作戦を立てた。


 作戦:石碑の謎を解け

 紋様の解析: 石碑に刻まれた紋様と、各通路の紋様を照らし合わせる。

 法則性の発見: 紋様と、通路に仕掛けられた罠の種類との間に、何らかの法則性があるはずだ。

 安全なルートの特定: 法則性を解き明かし、罠のない安全なルートを特定する。

 行方不明隊員の救助: 安全なルートを確保し、行方不明の隊員を救出する。


 ザックは、このダンジョンは、彼らの知恵と勇気が試される場所だと感じていた。


「皆、ここからが本当の戦いだ。このパズルを解き明かし、必ず全員で生還するぞ!」


 ザックの言葉に、隊員たちは静かに頷いた。彼らの目には、新たな希望と、決意の光が宿っていた。


「よし、ここからは情報分析ゴーレムの仕事だ。石碑の謎を解き、このパズルを解き明かせ!」


 ザックは、最後の切り札である「情報分析ゴーレム」を呼び出した。それは、御屋形さまがザック隊に与えた、最新鋭の魔導兵器だ。知性を持たないゴーレムだが、その内部には膨大な情報処理能力が秘められていた。


「ゴーレム、この石碑の紋様と、ダンジョン内部の通路の紋様を照合しろ。法則性を見つけ出し、安全なルートを特定するんだ」


 ザックが指示を出すと、ゴーレムは動き出した。その目が青い光を放ち、石碑と地図をスキャンし始める。


 ギィィィィィ…


 ゴーレムの内部から、歯車が噛み合うような音が響く。その処理速度は人間の比ではなかった。あっという間に膨大な情報が解析されていく。


「隊長、ゴーレムが何か表示しています!」


 隊員の一人が、ゴーレムの胸部にあるディスプレイを指さした。そこには、複雑な数式と、地図上に描かれた一本の線が表示されていた。


「分析完了。法則性を発見。安全なルートを特定しました」


 ゴーレムは、合成音声で淡々と報告した。


「よしっ! 見事にやってくれた!」


 ザックは興奮を隠せない。情報分析ゴーレムが導き出した安全なルートは、太陽の紋様が刻まれた通路と、星の紋様が刻まれた通路を繋ぐ、一本の道だった。


「よし、全員聞け! ゴーレムが安全なルートを特定した! 第一中隊、偵察を再開せよ! 今度は、奥にある石碑と、行方不明の隊員を救出する!」


 ザックの力強い声が響く。情報分析ゴーレムの助けを借りて、ザック隊は、再度東中級ダンジョン攻略への第一歩を踏み出したのだった。


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