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32歳、人生リセット、ただし異世界で  作者: kkitarx78
二章 自治都市への基盤
13/90

東初級ダンジョン

投稿内容を間違えました。8/31全面修正。

 奴隷たちの情報収集により、森の奥深くに古代文明の遺跡や失われた魔法の知識が眠る場所が複数あることが判明した。俺は、魔法の才能を持つ者や元冒険者の奴隷で探索部隊を編成し、その場所へ向かわせた。


 部隊は第一大隊と第二大隊で構成されている。基本は、3人1組の小隊スリーマンセルを小隊長のもとで編成。3つの小隊に通信員1名を加えた計10名で、中隊長が率いる中隊を編成する。そして、3つの中隊、計30名が大隊長のもとで大隊を編成する。


 また、飛行魔導中隊を一中隊編成した。この中隊は、全員がスピーダーバイクを操る魔導士10名で構成されている。魔法使いは空を飛ぶのだ。



 東ダンジョンと西ダンジョン。それぞれに大隊を振り向け、ダンジョン入り口付近に部隊テントを設営し、中隊単位でダンジョン探索へと向かう。まずの目的はマッピングだ。


 第一大隊は、大隊長である元冒険者 ザックの指揮のもと、東ダンジョンの入り口に立っていた。東ダンジョンの入り口は切り立った崖にぽっかり空いた横穴。その奥にダンジョンが横たわっていた。


 ザックは、闇色の横穴を見上げた。


「これが東のダンジョンか……」


 彼は静かに呟いた。その声には、元冒険者としての経験からくる冷静さと、未知への挑戦を前にした高揚が混じり合っていた。


 ザックの背後には、第一大隊の面々が整列していた。彼らは皆、かつては奴隷として過酷な運命を強いられていた者たちだが、今その顔には、主から与えられた新たな使命への緊張と期待が浮かんでいた。探索部隊の編成は、奴隷の情報収集に基づき、魔法の才能を持つ者や元冒険者が選抜された精鋭だ。ザックは彼らを一瞥し、力強い声で指示を出した。


「第一中隊は入り口付近の安全を確保せよ。第二、第三中隊はテントを設営、ここを拠点とする。偵察は3人一組の小隊で、無理はするな。目的はマッピングだ。まずはダンジョンの構造を把握する。奥に進むのはその後だ」


 ザックはそう言い終えると、第一中隊の探索に同行するため、横穴へと一歩を踏み出した。ダンジョンの入り口はひんやりとした空気に満ちていた。


「この先、何が待ち受けているか……」


 ザックはカンデラの光を頼りに、一歩また一歩と慎重に進んでいく。通路は緩やかな下り坂で、やがて開けた広間へと続いた。広間の中心には、巨大な水晶が鈍い光を放っている。そしてその奥には、さらに深くへと続く道が何本も分かれていた。


「第二小隊、右の通路を。第三小隊、左の通路を調査。第一小隊は私とこの広間をマッピングする」


 すぐさま、第二、第三小隊が移動、探索を開始する。


 第一小隊が広間のマッピングを行ている最中、ザックが水晶に手をかざした。次の瞬間、ひんやりとした感触が彼の指先から全身に広がった。その時、耳元の魔導通信機コミュニケーターからノイズ混じりの声が聞こえてきた。


「ジジジッ……こちら第二小隊。ダンジョンの奥で、ゴブリンを発見! 戦闘に入ります!」


 ザックは思わず眉をひそめた。予定が狂った。偵察はマッピングが目的であり、戦闘は極力避けるように指示を出したはずだ。


「待て! 戦闘は避けて……」


 ザックが言いかけたとき、通信は途絶えた。第二小隊は彼の指示を聞かず、独断でゴブリンと戦闘を開始してしまったらしい。ザックは通信機を握りしめ、舌打ちした。


「くそっ! なぜ勝手な行動を!」


 このダンジョンがどういう場所かもまだ分かっていない。ゴブリンが一体だけとは限らないし、より危険な魔物が潜んでいる可能性もある。ザックは広間に残っていた第一小隊の通信員に振り返って指示を出した。


「第一中隊長に連絡! 第二小隊がゴブリンと戦闘を開始した。他の小隊は第二小隊の援護に向かわせろ! 無理はするな、目標は第二小隊の救出だ!」


 通信員は即座に中隊長へと連絡を取り始めた。ザックはカンデラの光を頼りに、ゴブリンが発見されたという右の通路へと一歩を踏み出した。彼の心には、怒りと焦りが渦巻いていた。


「まったく……。勝手に手柄を立てようとするんじゃない……」


 元奴隷という身分から解放され、手柄を立てて新たな人生を歩みたいという彼らの気持ちは痛いほど分かる。しかし、それは危険を顧みない無謀な行動につながる。ザックは、部下たちの命を守るため、そしてこの任務を成功させるために、自ら戦場の最前線に立つことを決意した。


 ザックがゴブリンたちの奇声と剣戟の音を頼りに通路を急いでいると、耳元の通信機から再び声が聞こえてきた。


「大隊長、こちら第一中隊長です。ゴブリンとの戦闘は終了しました。被害は軽微。隊員に負傷者はいません」


 ザックは安堵の息をついた。だが、安堵とともに、怒りがこみ上げてくる。


「何をやっているんだ、君たちは! 私の命令を聞かず、なぜ勝手に戦闘を開始した!」


 ザックが通信機越しに怒鳴ると、第一中隊長の声が少し萎縮したように聞こえた。


「申し訳ありません、大隊長。第二小隊が、ゴブリンは弱者と判断し、手柄を焦ってしまったようです。今後は二度と勝手な行動はさせません」


 ザックは通信を切ると、ため息をついた。元奴隷の彼らが、自らの力で手柄を立て、この新しい人生を確固たるものにしたいという気持ちは、痛いほど理解できる。しかし、それは大きな危険を伴う。今回の相手はゴブリンで済んだが、もしも未知の強力な魔物だったとしたら、全滅していたかもしれない。


 ザックは広間に戻ると、第一中隊長に改めて指示を出した。


「全中隊に徹底させろ。マッピング業務を最優先とし、戦闘は避ける。もし敵と遭遇した場合は、通信で私に報告し、私の指示を待て。勝手な行動は一切許さない」


 ザックは冷たい口調で言い放った。彼の言葉には、単なる命令以上の重みが込められていた。それは、部下たちの命を守るという、大隊長としての強い決意だった。第一中隊長は、その言葉を真剣な表情で受け止めた。


「承知いたしました、大隊長。全隊員に徹底させます」


 ザックが第一中隊の通信機を切り、広間へと戻る。彼らの独断専行には苛立ちを覚えたものの、結果として被害はなかった。このダンジョンが、彼らの元冒険者としての経験が通用する程度のものだと、隊員たちが慢心するのも無理はない。ザックは、その慢心がいつか大きな代償を払わせるのではないかと懸念していた。


 その後、各小隊はゴブリンとの小競り合いを繰り返しながらも、第一階層のマッピングを順調に進めていった。壁に刻まれた古代文字や壁画、そして複雑に入り組んだ通路の形状が、すべて地図として正確に記録されていく。罠や隠し部屋らしきものは見つからず、この層には存在しないのだろうと結論付けられた。


 ついに、第二階層へと続く下り階段が発見された。第一中隊は、当初の目的であるマッピングを完了させたのだ。


 ザックは通信機を手に取り、第一中隊に帰還命令を出した。


「よし! 第一中隊は、これにて帰還。第一階層の地図作成を優先せよ。特に、会敵した箇所は念入りに報告書にまとめるように」


 彼の声は、命令を下す大隊長としての厳格さを帯びていた。


「第二階層の探索は、一度テントへ戻ってから、作戦を練り直す。勝手な行動は二度と許さない。分かったな」


「了解!」


 各小隊から返事が返ってくる。彼らは、ザックの言葉が、自分たちの命を思っての発言だと理解していた。第一中隊は、第一階層の踏破を誇りに思いながらも、ザックの言葉を胸に、静かにダンジョンの入り口へと引き返していくのだった。


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