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第7話 君と過ごす、奇跡な日常

龍哉くんが、僕の頭をなでている感触で、僕は目が覚めた。


体温が作り出せない僕は、目が覚めても動けない。


だから、瞼が動いたのを確認した龍哉くんが、ぎゅっと抱きしめて熱を分けてくれる。


龍哉くんの手が、僕の背中と頭を優しくなでてくれて。


胸元に抱えられた僕の顔には、とくんとくんと龍哉くんの鼓動と熱が伝わってくる。


「……たつや、くん」


「おはよう、沙穂」


頭が動き出した僕はようやく名前を呼べて。


それを確認した龍哉くんが本当にうれしそうに、少し無邪気な顔をする。


朝一にしかみれない、ほんの少し子供っぽい、レアな表情で。


それがうれしくて、僕はへにゃりと笑い返した。




10分ぐらいぎゅっとしてもらって少し動けるようになったら、お風呂にも入れてもらう。


そうすると、ようやく全身に熱が回って意識もはっきりしてくる。


「あらためて、おはよう龍哉くん!」


「あぁ、おはよう」


無駄にポーズをとろうと思ったぐらいにはエンジン全開!


そのエンジンはぽんこつへなちょこなんだけどね!


なので自重して元気なあいさつにとどめておきます。


僕が風邪をひかないようにタオルとドライヤーを駆使して髪を整えてくれる龍哉くん。


美容師さんかな?ってぐらい手慣れてる。


何年も毎日してくれてるからなのか、龍哉くんがすごいからなのか。


……どっちなんだろ?


……。


うん、答えが出ない疑問と気づいたのでぺいっと投げ捨てよう。


僕の髪を整え終わった龍哉くんが、今度は僕の足を確認してくれる。


ちなみに龍哉くんは髪が短いのですぐ乾くらしい。清潔感合っていいと思います!


「少し触る。痛かったら言ってくれ」


「はーい」


丁寧に触れながら、昨日赤くなっていた場所に触れる。


龍哉くんの温かい手は感じれるけど、痛みは全くなかった。


「全然痛くないよ」


「……なら、大丈夫そうだな」


少しほっとした声の龍哉くんが、手慣れた手つきで義足を装着してくれる。


装着の終わった具合を確認するために、龍哉くんに抱えられると、そっと立たされる。


「よっ、ほっ……はい!」


少しぐらついたけど、ぴたっと止まって立てた。


心配そうに眉が強張っていた龍哉くんが、ふぅと息をついた。


「まぁ、ギリギリ合格か」


「ふぁーい」


ギリギリなのは自分でもよくわかっているけど、悔しいは悔しいので返事が膨れるのは許してほしい。




「いってきまーす!」


「いってきます」


学校行くのに元気は大事!


行きたくなくても元気は大事!


と、今日も今日とで龍哉くんの腕の中からお送りしております。


僕はちびっこいけど、毎日こうして運ばれてるから。


目線の基準が龍哉くんの高さで慣れてたりする。


だから、正直ちょっと優越感あるよね。


「沙穂ちゃんおはよー!」


「おはよー!」


時折クラスの子からあいさつされる。


「お、また夫婦で登校か!」


「いいでしょー!」


いつもからかってくる男子にも笑顔で返す。


どうしても僕たちは目立つ。


だって、いっつも抱っこされてるなんて、ふつうは赤ちゃんぐらいだからね。


それに、龍哉くんはそれはもうめっちゃくちゃ最高に格好いいからね。


中学校に入るころには、もうこんな感じだった龍哉くん。


裏で初恋スレイヤーとか呼ばれててもおかしくない。


そんなスパダリな龍哉くんが大事にしてるのが、僕!


へなちょこぽんこつちんちくりんだ。


そりゃ、いい気分はしないよね。


僕の気分はよかったけどね!


だけど、それを全部龍哉くんは黙らせた。


暴力?


龍哉くんがそんなことしてるの見たことない。


説得?


言葉を尽くして説明なんかで、そんな子たちが止まるはずない。


だから。


龍哉くんは、それはもう行動と態度でねじ伏せた。


幼い男子の恋人弄りを「そうだ」と、僕を目の前で全力で甘やかすことで黙らせた(僕は死んだ)


僕に意地悪しようとした女の子は「沙穂しか見えないんだ」と惚気て黙らせた(僕は死んだ)


僕が足手まといというやつには、バスケットボールで僕を抱えたまま一人で全抜きして黙らせた(特等席で見れた僕は死んだ)


最終的には、僕を補助し甘やかしながらも周りの手助けを完璧にこなして。


なんか一人で十人分ぐらい動いて黙らせてた(当然死んだ)


……あれ、これ僕が一番被害者なのでは??



かんわきゅーだい。



そんなわけで、圧倒的スパダリで「沙穂と俺の二人未満なら黙れ」と言わんばかりの行動で無双したのでした。


それからは、みんなも理解してくれて、楽しい学校生活を送れてる。


たまに?


「最終兵器龍哉を如何に活用するか」とか。


「私たちも沙穂ちゃんに餌付けし隊」とか。


なんか変なのが定期的に沸くけどね!


ちなみに餌付けは大歓迎だけど、晩御飯食べられなくなるので龍哉くんに精査してもらってください。


僕はおかしの誘惑には勝てないので、直接の餌付けは禁止されております。




なんて、いろいろ考えていたら気付いたらもう学校で。


昔のような好奇の視線はなくなったけど。


なんか、ものすっごい優しい目で見られるようになっちゃって。


正直、こっちのほうが僕にはむず痒かったりするんだよね!


あとそこ拝まない!


後利益あるのは僕じゃなくてこっち!龍哉くんなの!


まったくもう。


そんな風に僕が百面相をしていたら、ずっと僕を見ていた龍哉くんと目が合った。


へにゃりと、顔が緩む。


龍哉くんの頬も少しだけ緩んだ。


今日も、龍哉くんとの日常が始まる。


龍哉くんがいなかったら、僕には絶対に味わえない。


普通の、日常が。




ちょっとそこ、だから拝むなら僕じゃなくてたーつーやーくーんー!!

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