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エピローグ 僕と龍哉くんとの『日常』へ

あの後、僕たちはまっすぐ家に戻って、疲れ切ってそのまま寝ちゃって。


あの子と一つになった初めての朝を迎えております。


そこで僕は、洗面台の鏡の前で自分の顔を見てた。


鏡には、いつも通りのしまりのない僕の顔が映っていて。


元々僕は、淡い青っぽい目をしてたんだけど。


あの子と一つになったあと、左目があの子みたいな淡い赤色になっちゃった。


こう、オッドアイって格好いいよね!


ビシッと鏡の前で格好いいポーズをとってみる。


……うーん、僕のしまりのない顔だと全然格好良くならないなぁ。


「……何してるんだ、沙穂?」


「うひゃぁっ!」


なかなか戻ってこない僕を心配して、龍哉くんが開きっぱなしだったドアから覗き込んでくる。


ポーズを見られた恥ずかしさと、朝特有のラフな格好の龍哉くんの二つでびっくりして変な声出ちゃった。


うぅ、思ったより深刻だ。


このままじゃクラスの女の子のこと笑えないよ。


何百年も龍哉くんなしで生きてきたあの子の記憶が、ばっちり一緒になってる今の僕。


だから、龍哉くんの何もかもが新鮮で、何年もかけて育ててきた免疫は完全にお亡くなりになりました。


うぅ、龍哉くんこんなに格好良かったかな……格好良かったね、うん。


だいぶ元気になったけど、心臓も丈夫になってるといいなぁ。


「ううん、こう見ると色々変わったなって思って」


「確かに、オッドアイは……格好いいよな」


「だよね!」


意外と男の子な感性の龍哉が格好いいと言ってくれたので格好いいことにします!


まぁ、僕に格好いい属性がかけらも無いから、僕は格好良くなれそうにないけどね。




今までと比べ物にならないぐらい、あの子が譲ってくれた義足は歩きやすい。


というか、軽いし、違和感ないし、正直僕の右足よりずっと立派!


ただ、うん。


僕本人がへっぽこなのは変わらないので、猫さんに小判な感じがすっごい。


多少歩けても、そもそも体力が持たないと思うんだよね。


あの子みたいに使いこなせる日はくるのだろうか……?


あと、金の義足は流石に目立ちすぎるので、龍哉くん達が一晩で前の義足色のカバーをつけてくれました。


凄そうな金の義足が、パールホワイトの樹脂っぽくなってるのすごいよね?


でも、前より立派だし、ちょっと自慢しちゃおうかな。


こう、実は超すごい魔法の義足って秘密を抱えてるの、特別感あるし。




身支度を整えて、龍哉くんの用意してくれた朝ごはんを食べるために席に着く。


前は、この身支度でさえ龍哉くんの介護がないとできなかったのを考えると、僕すごい成長してる!


ありがとう僕!


日常生活を自分でするっていう夢がかなう日が来るとは思わなかったよ!


そして。


僕を世話する手間がなくなった龍哉くんは、ですね。


うん。


……朝ごはんのグレードがさらにあがってるっ!?


今までも十二分に美味しい朝ごはんだったのに、細かいところにまで細工が!?


りんごのうさぎさんに朝からこんな飾り包丁いるかな!?


ただのハムエッグのはずなのに、なんかお手製ソースがおしゃれにかかってるんですけど!


ちらりと、龍哉くんを見ると、すっと視線をそらされた。


うん、自覚はあるみたい。


たぶん、いつも通り僕のお世話をするつもりだったのが、時間が余って手持無沙汰になったから暴走したっぽい。


まぁ、僕としては舌で美味しく目で楽しいから大歓迎だけどね!


シンプルながら、型で食べやすく焼き上げた目玉焼きと一緒になったハムを、龍哉くんお手製ソースでいただきまーす。


っ!?


「ん~っ!!」


あー、これは駄目かも!


ただでさえ美味しい龍哉くんのごはんが、龍哉くんの手料理補正と龍哉くんに飢えてたあの子補正で美味し過ぎる!


砂漠で遭難した人の飲むお水ってこんな感じなのかなってぐらい!


……日常生活大丈夫かな?


逆にちょっと不安が増してきたよ。


しかも龍哉くんは昼から夜にかけて凝るんだよなぁ。


僕、料理漫画みたいなリアクションにならない?大丈夫?





想像以上に喜んでる僕に、龍哉くんもすごくうれしそうで。


最近よく見るようになったけど、昔はレアだった笑顔を。


険しさのかけらも無い、ほどけた奇麗な笑顔を浮かべてる。


それが、すごく素敵で。


胸がどきどきして痛いぐらいに高鳴ってる。


うん。


ずっと、大好きだった龍哉くん。


最初は幼い恋心で。


次に家族として。


最近、ようやく本当の恋をして。


今、あの子の奥に積み重なった想いが足されて、もう言葉にできないすごい気持ちになっちゃった。


倍じゃ全然足りない。


二乗とかかな?


無限大でもいいや。


そんな、言葉にできないぐらいの大好きが、僕の中にある。


……二倍だって思ってたら、足りないかもよ、龍哉くん?




食べれる量はあんまり変わってなかった僕だけど、丁度いい量で作ってくれたから大満足。


りんごのうさぎさんも飾り切りだけじゃなかったよね。


どうしたらあんなに美味しくできるというのか!


説明してくれたけど、僕にはちょっと高度過ぎてわからなかったや。


朝ごはんも身支度も終わったから、あとは学校に行くだけ。


リュックを背負って、靴を履いて、準備万端!


小学生以来、初めてかも。


自分でリュックを背負って登校するの。


背負っても龍哉くんに抱っこされてたからね。


振り返ると、いつものように抱きかかえるつもりだった龍哉くんと目が合う。


「最初だから、無理しなくてもいいんだぞ?」


「ううん。最初だから、無理したいんだ」


だって、これは僕の夢。


僕たちの、夢だから。


僕は、ぎゅっと龍哉くんの腕に抱き着いて。


「龍哉くんの、君の隣を歩くのが僕の、僕たちの夢だったんだよ」


当たり前が何もできない僕が。


当たり前を失ってしまった僕が。


ずっと、夢見ていたこと。


君の隣で、君と一緒に歩くのが。


──僕たちの、夢だったんだ。


「ねぇ、龍哉くん」


「……なんだ?」


僕の夢を聞いて、感極まって泣きそうになってる龍哉くん。


「ちゃんと、言ったことなかったから。伝えるね?」


「……おう」


今までは、僕を守るために、そういう風に言ってくれたんだってわかってる。


だから、今度は、本当の。


「大好きな龍哉くん……あらためて、僕を彼女にしてください」


本当の恋人に、してください。


そう言った僕の顔は、へにゃりと笑っていた。


「……っ、俺で、いいなら」


ぎゅっと、抱きしめてくれた、大きな龍哉くん。


強くて、格好良くて。


でも、弱くて、強がって格好つけてる。


普通の男の子。


世界で一番格好いい、僕のヒーロー。


そんな彼が、僕を彼女にしてくれた。


それが、僕の自慢できる唯一のものだから。







もう、厄災は天に還って。


死神は二度と現れない。


だから、あとは。


辛い過去も、悲しい想いもない。


──僕と龍哉くんとの日常へ。

これにて、『物語』は完結となります。

異世界の因縁からくる必然は、すべて終わりました。

二人だけで乗り越えるべき試練はもうないからです。

これから先は、友人を作り、ありふれた『日常』を、二人は歩んでいきます。

ちょっと不思議な力を持ったまま。


そんな後日譚の『沙穂と龍哉の日常』はカクヨムにて。

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