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第24話 閑話:少しだけ変わった、変わらない日常

龍哉くんの怪我も治って、いつもの日常が戻ってきた。


一緒に起きて、学校に行って、帰ってくる日常に。


ただ、ちょっとだけ変わったことがあるんだよね。




夕方は晩御飯の後、いつものように僕は龍哉くんと隣り合って座っていた。


テレビで適当な動画を流しながら、他愛のないおしゃべりをするだけの、幸せな時間。


でも、龍哉くんが隣にいるのに、キッチンからは水音がしていた。


片手で僕を撫でながら、時々もう片方の手を振っている。


龍哉くんが手を振るたびに、宙に浮く半透明の海月さんが触手で食器を棚に戻しているのが見えた。


厄災さんにずんばらりんされた触手さんはまだお休みらしい。


今頑張っているのは、僕も持ち上げられないぐらいに非力な失敗作らしい。


でも、普段なら人を持ち上げる力はいらないと思うよ?


って僕が言ったら、目からうろこな龍哉くんだった。


基準が異世界だから時々抜けてる龍哉くんは可愛いと思う。




なので、今まで僕が役立たずで二人分の家事をしていた龍哉くんが、雑事から解放されて。


今まで以上に甘やかしてくれるようになりました。


ちょっとお家の中がファンタジーだけど、僕がうれしいからよし!


前より体温調節はできるけど、龍哉くんの体温を感じるのが好きだからぴとってくっつくのです。


僕がもっとくっつこうと擦り寄ると、気づいた龍哉くんがそっと抱き寄せてくれる。


隣に座ってるのに、背が違い過ぎて遠い龍哉くんの顔を見上げると、目が合った。


もう苦しそうな瞳をしなくなった龍哉くんは、今まで格好つけて隠していた熱を隠さなくなった。


その瞳に見つめられるだけで、胸の奥が熱くなってくる。


こういう時、龍哉くんは何も言わないけど。


言葉に出さないんじゃなくて、出せないんじゃないかなって。


言葉では言い表せないぐらい、目が口以上に語ってる気がする。


無意識に僕は手を伸ばしていて。


龍哉くんが、そっと指を絡めてくれる。




前の、何も知らなかった僕じゃなくて。


今の、何を乗り越えてくれたのか知っている僕は。


龍哉くんの今が、全部僕のためにあるって、知ってしまった僕は。


僕を離さないために大きくなった、ごつごつした手も。


僕を支えるためだけに鍛え上げた、その身体も。


僕だけを見てくれる、燃えるような瞳も。


前と同じようには見れなくなっちゃった。




ずっと、好きだった。


世界で一番大好きで、僕は龍哉くんのためならなんだってするって思ってた。


でも。


たぶん、それは家族の延長線だったんだと思う。


よくて、子供の恋心だったんだと思う。


だから。


今僕が感じてるこの気持ちは、きっと。


恋で、いいんだと思う。


こればっかりは、龍哉くんには聞けないけど。


何も返せない、へっぽこでへなちょこな僕だけど。


龍哉くんを好きなことだけは、誰にも負けないから。


僕の瞳の熱が、龍哉くんに伝わっていたらいいなって。


でも、ちょっと恥ずかしいから。


言葉にするのは、もうちょっと待ってね。


きっと、全部お見通しだと思うけど。


今はまだ、言葉のいらない関係のままで、いたいなって。


そんな僕のわがままを許してほしい。


今は、君のぬくもりを感じれるだけで、十分に幸せだから。

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