第13話 美味しくなかったおかげで美味しい
「なぜ、こんなにも龍哉くんが入れてくれたお茶はおいしいのか」
三時のおやつに、龍哉くんの用意してくれた水出し紅茶を一口。
すっきりとした味わいで、無駄に敏感な僕の舌でも苦くない!
お茶請けのクッキーもぱくり。
さすがにこれは市販だと思うけど、なんか高級な味がする。
めっちゃおいしい。
「いいのを用意してくたね龍哉くん!」
「あぁ、だいぶ素材には拘った」
え、手作りなの?
……なんか高級そうな形してるけど?
僕の言葉にまんざらでもなさそうなので、実は気づいていたふりで押し通そう。
すまし顔でさくさく。
うーん、すましてられない!ほほが緩む味がするぅ。
バター多めのサクサククッキーと、すっきり紅茶が完璧すぎる。
「そういえばさ」
「……なんだ?」
気になってた異世界の話を振ってみよう。
給仕に徹してくれていた──是非とも執事服を着てほしいぐらいに決まってた──龍哉くんに座ってもらう。
「異世界の話なんだけど」
「……あぁ」
ほんの少し、龍哉くんの目に力が入り。
「あっちで、おいしいものって何かあった!?」
一瞬で力が抜けた。
いや、だって気になるし。
「あー、どうだろうな。こっちにはない食材は多かったな」
見たこともない形の果物や、見たことのない生き物のお肉。
夢のある話じゃないかな!
「でも、問題はそっちじゃなくてな……」
「そっちじゃない?」
どっち?
「まともな調味料が、塩しかなかったんだ」
「塩おんりー!?」
それじゃあラーメン塩味しか食べれないよ!
塩ラーメンおいしいけど!
「だから、なんだ。こっちに戻ってきてからは、楽しくてな」
「あー」
日本って世界的に見ても調味料天国らしいねー。
そういえば、退院後のお家の調味料見て震えてたけど、あれ感動してたんだね……。
ようやく長年の謎が一つ解けたよ!
「それで、料理にはまった」
「結果的にありがとう塩だけの異世界!」
おかげで毎日おいしいごはんでいっぱいです!
異世界がおいしい話、じゃなくて僕がおいしい話だったねこれ。
「でも、300年もいたなら、おいしいものとかはなかったの?」
「最初のころは舌が慣れてなかったから辛かったな」
日本人のつらいところだよね、ごはんがおいしすぎて。
「果物とかも悪くなかったが、味は品種改良済みのこっちと比べたらちょっとな」
圧倒的食への探求心が異世界に勝っていらっしゃる!
「途中からはそんな余裕なかったし、最後のほうは料理どころじゃなかった」
「え、料理どころじゃないって、どゆこと?」
全部外食とか?
もしかして丸かじり?
想像が及ばない僕が首をひねっていると。
「あー、途中で人間側が負けてな。人類全滅した」
「うえぇえええええ!?」
ものすごくさらっと爆弾発言してる!?
しかも龍哉くんあんまり気にしてないね??
「で、そのころにはもう普通じゃなかった俺は、生のままがぶり、だな」
想像以上の丸かじりだった!!
そもそもがぶり、っていうあたりどう普通じゃなかったのかが気になっちゃう。
「って、そういえば異世界で何してたの?」
チュートリアルレベルの話をすっかり忘れてた。
異世界に呼ばれて、僕が魔物に襲われて、ぐらいしか聞いてないや。
「……そうだったな」
どう説明するか、と悩んでる龍哉くん。
なので、ここは助け船をだすとしよう!難しいと僕の頭には入らないかもだし!
「簡単でいいよ?」
「……なら、そうだな。俺たちは神に召喚されて、魔王を倒せと言われ、魔王を追っていた」
わーい簡単だー!
「って、神様って本当にいるんだね!?」
あと魔王も!
「そう見える何か、って可能性はあるが……神でおおむね間違いないな」
神っていうときちょっと複雑そうだけど、トータル嫌ってない感じかな?
龍哉くんの言葉の感じからちょっと読み取れた。
「ということは、もしかして龍哉くんが帰ってこれたのって──」
「……神様のおかげだ」
神様ってすごい!
「じゃあ、いっぱい拝んでおかないとね!」
「……沙穂が拝むのか?」
そりゃそうだよ。
「だって、龍哉くんを帰してくれたんだから!ありがとうございます、って拝まないと!」
僕のその言葉に、少しだけ驚いた顔をして。
「そうだな、拝んでやらないとな」
ふわりと微笑んでくれた。




