第12話 俺に覚悟が出来たら
今日の龍哉くんはすーぱー甘やかしモード!
なんと、晩御飯は僕の好きなもの100%!
しかもなんかいつもより手が込んでないかな……。
このミニハンバーグ、ちっちゃいのに中のチーズが肉汁ときれいに収まってる。
かむととろじゅわって!芸術品かな?
ポテサラも、細かく炒ったベーコンとか、なんかいっぱいでもうこれがメインディッシュでもいいまである!
コーンスープもなんかもう、飲むっていうか食べるって感じ?
濃厚なのに舌触りも最高なのどういうことなんだろう。うーん職人技。
こんなの、無限に食べれそうだよ、気持ちだけは!
……うぅ、食の細さが恨めしい。
せめて、せめてミニハンバーグをあと半分は食べたかった。
でも、おいしいごはんでお腹がぽんぽこりんなので僕は満足。
何より、龍哉くんが笑顔で胸までいっぱい大満足です。
今日はかたづけを最低限にしてくれた龍哉くん。
すぐに僕が座るソファにやってきてくれたので、僕はよじよじ龍哉くんの膝上にお邪魔します。
「あらためて、ごちそうさまだよ龍哉くん! すっっっごい、おいしかった!」
どれがどんなにどんな感じで美味しかったかをひとつひとつ語っていく。
僕が一生懸命、身振り手振りで表現すると、それを目で追いながら龍哉くんが頷いてくれる。
ちょっと興奮しすぎて疲れちゃったけど、思う存分語りつくせたからよし!
そんな僕に苦笑を浮かべた龍哉くんが、じんわりにじんだ僕の汗を拭きとってくれる。
「沙穂」
「なーに?」
ちょっぴり、硬い声。
だから僕も、ちょっぴり硬めに向き直る。
「俺は、ずっと異世界のことを忘れようとしてた」
朝のような不安さを感じない、いつもの龍哉くん。
真面目な話をしようとするときの、ちょいかた龍哉くんだ。
「そういう長い夢を見ていたって、そう思い込んでた」
今日吐き出してくれたあれが、龍哉くんが抱えてる全部じゃないのは気づいてる。
きっと、そんな短い話じゃない。
「ただ、300年は過ごしたから、思い込むのも無理でな」
「はいちょっとまってぇ!?」
思ったよりはるかに長いんだけどもぉ!?
「え、30年とかじゃなくて?桁の打ち間違いとかじゃなく?」
打ち間違いってなんだ僕。パソコンじゃないんだぞ。
「あぁ、それぐらいのはずだ。途中から、色々と時間感覚も麻痺してたが、間違いない」
「え、なんか異世界に行くと寿命のびるとかなの?さすがに健康に気を付けても無理な奴だよね?」
「それは、まぁ……色々とな」
お、これは今度のやつだね。
ちゃんとスルーしてあげる。
心のメモ帳に書くだけにしてあげよう。
「話を戻していいか?」
「どうぞどうぞ」
手をどうぞにして先を促す。
「で、今日沙穂のおかげで、救われた。でも、全部じゃない」
隠さずに、まだつらいことがあると打ち明けてくれたことに、僕の顔がへにゃる。
龍哉くんも、まっすぐにこちらを見つめながら頷く。
「でも、まだ決心がつかない」
あれと同じかそれ以上につらいのなら当然だと思う。
「だから、少しずつ、沙穂に聞いてもらって整理していきたい」
「うん、しっかり聞くね」
僕が聞くことで、龍哉くんが前に進めるなら喜んで。
「そうして、整理が終わって……俺に覚悟が出来たら、聞いてほしい」
静かに、少し震える手を、震えごと握りしめて。
まだ揺れてるけど、それでもまっすぐな瞳で。
必死に乗り越えようとしてるんだ。
だったら、僕にできることは単純だ。
「何があっても、僕の居場所はここだから」
龍哉くんのそばにいる。
「何があっても、だよ?」
へっぽこよわよわな僕だけど。
それだけは、誰にも負けない自信がある。
へにゃりと笑った僕を、龍哉くんは瞳を揺らしながらぎゅっと抱きしめてくれた。
「あれ、ということは龍哉くん今何歳なの?」
「……多少のブレを入れると、大体310歳ぐらいか?」
大先輩じゃん!!
「龍哉、先輩?」
「……今まで通りで頼む」
あ、ちょっと高鳴り反応あり。ちょっときゅんとしてくれた?
意外と龍哉くん、そういうところ普通なんだよね。
「中身はそんな老いちゃいないから安心してくれ」
本当におじいちゃんだったら、このぐらいできゅんとしてくれないもんね。
「あと、あれだ」
なぜか目線をそらす龍哉くん。
「沙穂には、同い年であってほしい」
は、は、反則ぅうううう!!
照れながらそんなこと言うなんて、ダメ、可愛すぎるんですけども!!
まさかの反撃に僕は完全にノックアウトされてしまいましたとさ。




